新規事業開発、起業の科学的アプローチ手法「顧客開発モデル」を、書籍『アントレプレナーの教科書』、『スタートアップ・マニュアル』の訳者でベンチャー・キャピタリストの堤孝志氏、飯野将人を基調講演の講師に迎え解説。
パネルディスカッションのモデレータには、リーン・スタートアップ・ジャパン代表の和波俊久氏を迎え、成功するビジネススタートアップの秘訣をディスカッション致します。
■会期:11月20日(火)18:00-21:00 (17:30-開場)
■場所:デジタルハリウッド東京本校1Fホール(東京・御茶ノ水)
■参加費:無料(事前申込・抽選制) ■定員:150名
■詳細・お申込は、こちら!
「顧客開発モデル」を既存企業での活用する際のポイントと注意点
堤氏:経済が成熟し閉塞感が漂う日本国内では、大企業も成長が期待できない既存事業を補う新しい事業に取り組まなければと躍起になっています。新規事業は、主体がベンチャーでも大企業でも、ゼロから新しいビジネスを立ち上げるということでは基本的には同じです。よってその役に立つ「顧客開発モデル」は、ベンチャーのみならず大企業でも、以前にも増して求められるようになってきています。
— そのうえで、既存企業で「顧客開発モデル」を導入するにあたって、ベンチャー企業と比較して難しい部分、気をつけなければならない部分などはございますか?
堤氏:「顧客開発モデル」に取り組む際の注意点は、ベンチャーと大企業の組織・企業文化などの違いを考えると分かりやすいかも知れません。
まず挙げられることとしては、大企業は、既存のビジネスを展開するうえで、組織や企業文化・政治、人間関係、役職などが、「確立されたビジネスモデルをどのように効率的に進めるか」という基準のもとに最適化されて蓄積されているということがあります。
しかし、既存事業ではビジネスモデルが確立されている大企業であっても、新規事業をゼロから立ち上げるときは、誰が本当に買うのか、想定した金額で本当に買ってもらえるのかなど、新規事業のビジネスモデルが機能するかどうか分からないものです。だから「顧客開発モデル」は、新規事業では最初に考えているビジネスモデルに間違いがあるのは当然という前提に立ち、仮説検証を繰り返し、間違いをいかに早く安く見つけて修正し、機能するビジネスモデルを探すかに力点を置いているわけです。
ところが、ビジネスモデルを確立するうえでの七転八倒をとうの昔に終え、その後は長きに渡って「いかに今年の予算を達成するか」「オペレーションをどう効率化するか」ばかり考えてきた大企業の常識では、「(考えていたビジネスモデルが)間違っていた=失敗」と見られてしまうのです。結果、仮説検証の中で修正すべき部分が見つかり、直して再度仮説検証を繰り返せるリソースがあるのにも関わらず、「間違い」を正直に認められず、そこは目をつぶって当初の仮説のままで進めてしまうことが珍しくありません。
“仮説が崩れる探索型プロセスであること”の合意形成をする
堤氏:そのような状況を回避するために、顧客開発モデルでは「ステップ0」というものがあります。ステップ0は、「顧客開発モデル」は失敗を繰り返して、正しいビジネスモデルを見つけていくという探索的プロセスであることについて関係当事者全員が完全に合意することです。当初の仮説は崩れるものであり、仮説が崩れることは失敗ではないということを、組織内に共通の理解として浸透させる地ならし的な作業が必要なのです。オリエンテーション、事業部長や役員との握りなど、規模や状況によって色んな呼ばれ方があるかと思いますが、当初の想定の間違い=失敗と考えがちな大企業ではそのような地ならしのフェーズが非常に重要です。