2020年の日本に向けて
シャープの苦悩、パナソニックの大幅赤字など相次ぐ国内製造業の経営危機。日本の産業の深刻さを唱えるニュースを聞かない日は無いぐらいだ。かつて語られた日本の技術の優位性、品質、ものづくりへの自信と誇りに満ちた言葉は、今や一転して悲観論に置きかえられている。
そんな中で、「2020年に向けた製造業復活戦略」を唱える研究者がいる。東京大学大学院経済研究科ものづくり経営研究センターの小川紘一氏だ。小川氏が唱えるのは決して楽観的な官僚作文型の日本再生ビジョンでも、概念的な「イノベーション待望論」でもない。長期にわたる知財と技術戦略の実証的研究によるものである。
小川氏の研究成果をつぎ込んだ集中講義は、3回に渡って下記の構成で行われる。
序章 *再生した2020年の日本の姿(ビション)、*現在の日本、何が課題なのか
第一章 日本は「製造業の敗戦」に直面している
第二章 グローバル市場の産業構造が変わった
第三章 欧米企業が完成させた“伸びゆく手”の経営イノベーション
第四章 アジア企業が完成させたトータル・ビジネスコストの経営イノベーション
第五章 日本の製造業が途上国市場で完成させた経営イノベーション
-21世紀の日本の勝ちパターンがアジア市場にあったー
第六章 2020年 日本製造業の復活に向けて
日本の製造業敗戦論、失敗分析論から入る論調が多い中、小川氏はあえて2020年の明るい未来を具体的に描き出すことから始めるという。
製造業の復活シナリオとは
「製造業の復活とは、技術イノベーションや製品イノベーション、そしてモノづくりなどと呼ばれる従来型のハードパワーを、日本の雇用と経済成長に結びつけ仕組みとしてのビジネスモデル再構築のことであり、この仕組みをグローバル市場で安定化させる知財マネジメント再構築。こうしたソフトパワーを育成するには経営側のイノベーションが必須となる。ハードパワーには巨額の投資が必要だが、ソフトパワー育成には大きな投資が不要。GDPの22%を占める製造業にソフトパワーを吹き込み、日本経済を成長軌道に乗せよう。」(小川氏)
「知財」と聞くと特許戦略や、近年語られる「オープンイノベーション」による知財戦略が思い浮かぶ。しかし小川氏が掘り下げるのは、知財のマネジメントとオープン&クローズ型の戦略であり、背景にあるグローバル市場の構造変化だ。「市場と企業の境界設計」(自社の立ち位置の事前設計)という考え方で紐解き、アップルなどの複合的なレイヤーモデルについて検証する。
こうした小川氏の問題意識は、本セミナーの発起人的存在の妹尾堅一郎氏と共通のものだ。実際、妹尾氏のベストセラーになった『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』(ダイヤモンド社2009)には、小川氏の実証データが引用されている。妹尾氏のインタビュー記事も参照されたい。
妹尾氏は本セミナーでは司会をおこなうが、モデレータ的立場でのコメントも期待できるだろう。
小川氏が講義をおこない妹尾氏が司会をするという強力な二人による集中セミナーは、めったにない機会でもある。緊急開催となるが、ぜひ3回連続の参加をお薦めする。
・日時
第1講:2012年11月13日(火)18:30~21:30
第2講:2012年11月20日(火)18:30~21:30
第3講:2012年11月28日(水)18:30~21:30 ← これだけは水曜です。
・場所:
「アゴラ東日本橋」 東京都中央区東日本橋3-4-10アクロポリス21ビル4F
・受講料: 一般 2500円/回 学生 1000円/回 (学生証を提示)
・主催:NPO法人 産学連携推進機構
共催:日本知財学会人財育成研究分科会
協力:翔泳社
・参加申し込み:http://nposangaku.org/seminar201211_app.html
・公式サイト:こちら