とうとう6月は1回も更新できなかった本コーナーですが、DB Onlineの読者のみなさまはいかがお過ごしでしょうか。気づけばもう7月も半ば、2013年もとっくに半分を過ぎてしまったわけですが、今年の前半は年始からずっと海外出張続きで、季節の変わり目をロクに感じることなく、冬の寒さからいきなり真夏に放り込まれたような感覚を汗だくになりながらかみしめております。きっとこのままあっという間に年の瀬を迎えてしまうんだろうなあ…。その海外出張ですが、ワタクシの場合、大きなITベンダが主催する年次カンファレンスにプレスとしてご招待いただくケースがほとんどです。が、今回の出張はちょっと違います。ムダに忙しいスケジュールになんとか都合をつけ、いままでの出張で溜まったマイレージを使って行ってきたのが「GigaOM」という米国のエンタープライズ系メディアが主催する「Structure 2013(6/19 - 6/20)」でした。本コーナーでは、日本ではあまり知られていないこの知る人ぞ知るこのイベントについて、撮りためた写真をメインに紹介していこうと思います。
GigaOM Structureとは
はじめにGigaOMというメディアについてごく簡単に説明しておきます。GigaOMは2006年、「Forbes」や「Red Herrings」のシニアライターを務めていたオム・マリク(Om Malik)さんがひとりで始められたブログがもとになった媒体です。現在では月間のユニークユーザ数が550万を超えており、とくにクラウドコンピューティングやデータセンタービジネス、モバイルなどを扱った記事への信頼性は非常に高く、ローンチからわずか6年で米国を代表するエンタープライズメディアのひとつに数えられています。
そのGigaOMが年に1回、IT業界から名だたる著名人を集めて開催するカンファレンスがStructureで、今回で第6回目となります。クラウドビジネスやアーキテクチャの話題を中心に、2日間に渡ってITインフラストラクチャの現在および近未来についてのディスカッションが展開、スピーカーにはAWSのヴァーナー・ボーガスCTOやVMwareのパット・ゲルシンガーCEOといった大物のほかに、Goolge、Facebook、LinkedIn、Rackspaceといった、クラウドビジネスにおける重要なロールプレーヤーのSVPやフェローの名前が並びます。大手ベンダだけではなく、注目スタートアップやユーザ企業、投資家によるプレゼンも行われ、文字通り、ITインフラを構成するまざまなファクタにフォーカスを当てた"Structure"なイベントだといえるでしょう。セッションのほかにもスタートアップの展示やコンペティション、スポンサー企業によるワークショップ、さらに来場者どうしのネットワーキングなども盛んで、さして広くない会場は期間中ずっと心地よい熱気に包まれています。
Structureの特徴は、各スピーカーの持ち時間が最大20分と非常に短いことです。これはボーガス博士やゲルシンガーCEOでも変わりません。持ち時間を1分でも超過することは決して許されず、そのためほとんどのセッションにはタイムキーパーを兼ねたGigaOMのエディターやリサーチャーがモデレータとして登場します。20分という短い時間の中でいかに中身のある話を引き出すか - ここがスピーカーとモデレータの腕の見せどころとなります。GigaOMの参加費は2日間通しで通常1500ドル、日本円で15万円超です。スタートアップ企業の参加者には若干の割引もありますが、それでもゆうに1000ドルはします。つまりそれだけの価値ある内容を提示しなくては参加者も納得しないというわけです。ちなみに筆者はありがたいことにプレスとして登録できたので全額無料で参加できました(マイレージでも燃料サーチャージは5万円取られましたが……)。無料のカンファレンスが多い日本とはこのあたりの文化が大きく異なりますね。
というわけで、長々とした前置きはこれくらいにして、カンファレンスのもようを紹介していきます。まずは初日、7月19日から。
Structure 2013の会場となったサンフランシスコにあるミッションベイカンファレンスセンター。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の施設。
解放的でオープンな雰囲気のキャンパスは気持ちがいい。
ダウンタウンからはBARTに乗って16th Street駅で降り、そこからシャトルバスを使うのが一般的。
ただ発着所のあたりがあやしい空気たっぷりであまり長くいたくない雰囲気。
大手ITベンダはたいていダウンタウンのどまんなかにあるモスコーニでイベントをやるので、
遠くに行くのに慣れていない…▼
開催の挨拶を行うGigaOMのファウンダーでシニアライターのオム・マリク氏。
右側の女性は同じくGigaOMシニアライターのステイシー・ヒギンボサム(Stacey Higginbotham)さん。
どちらもGigaOMを代表するトップジャーナリスト▼
2日間に渡ってStructure 2013全体の司会(MC)を務めた、
Telxのクラウドサービス&ストラテジ部門SVP ジョー・ワインマン(Joe Weinman)氏。
アメリカ人らしからぬ(?)ダウナーな雰囲気の司会がかえって新鮮だった。
各セッションの持ち時間が迫ると、舞台袖からワインマン氏がぬっと現れて無言のプレッシャーをかけるので、
スピーカーはイヤでも20分以内に終わらせざるを得ない。
Telxはニューヨークに本拠を置く急成長中のデータセンター事業者。IPOも期待されている▼
初日のトップバッターはサンフランシスコに本拠を置く中堅クラウドベンダのJoyent CTOの
ジェイソン・ホフマン(Jason Hoffman)氏。
「データ、コンピュート、ネットワーク - 最も重要なこの3つの要素はコンバージェンス(収束)に向かっている。
インターネットやデバイスの進化はネットワークとコンピュートが(一緒に)収束した結果。
では増え続けるデータとそれを扱うコンピュートはどう収束していくのか。
Hadoopはそのひとつの答えだが、それだけでは不十分。
このデータとコンピュートが収束する方向が今後30年のITビジネスを決定づけるものとなる。
個人的には2015年がターニングポイント、今後の方向性が具体的に見えてくる年になると見ている」▼