「動きが遅い」と思われがちな日本の大企業が、モバイルやビッグデータ、クラウドなどを活用し、「いかにして動き出したのか?」「いかにして組織の壁を超えたのか?」をテーマに、日本企業の「リアル」に迫った『ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦』。同書を先月7月に上梓したばかりのITビジネスアナリストの大元隆志氏に、第四章(「新たな価値」を生み出すために必要な組織)の内容の一部を特別に寄稿(前後編)いただきました。トヨタ、ソフトバンク、日テレ、凸版、良品計画、CCC、Yahoo!といった業界を代表する日本企業の取材を通して見えてきた、「新たな価値」を生み出すために必要なIT基盤のあり方とは?
「融合する世界」の誕生
「クラウド」、「モバイル」、「ソーシャル」、「ビッグデータ」。EnterpriseZineの読者の方なら個々のキーワードは聞き覚えがあるでしょう。2006年前後から、これらキーワードの原形や概念が現れ、個別に進化を遂げてきました。
今振り返ってみれば2007年が大きな転換点だったように思います。アップルから初代iPhoneが発売され、グーグルはAndroidが発表し、アマゾンは初代キンドルを発売しました。Facebookがプラットフォームのオープン化で先行するMySpaceを急速に追い上げだしたのも2007年でした。
これらの技術の登場前と後で世の中がどれほど変わったかを象徴する印象的な写真を紹介します。インターネットで一時話題になった写真ですが、2005年と2013年のバチカン選挙の法王選出時の様子を並べたものです。2005年の写真からわずか数年で「自分の目で見る」行為から「スマートフォンを通して物事を見、撮影し、ネットにシェアする」行為へと、行動や価値観まで変えています。

これら個々の技術が個別に発展した結果、大きな渦となって絡み合い、現代社会に巨大なプラットフォームを作り上げようとしています。
2011年にIDCが「第3のプラットフォーム」という名称を用いて"新しい技術を土台に組み込んだIT基盤が企業ビジネスの変革をうながす"と唱えました。2012年にはガートナーが「力の結節(Nexus of Forces)」という名称で、これらの力が融合し社会全体の変革を促していると唱えました。
私は、IDC、ガートナーの見解に5つ目の力を加わると考えています。それは「IoT(Internet of Things)」と呼ばれるものです。
IoT(モノのインターネット)とは簡単に言うとセンサーを中心としたネットワークです。この技術の重要な点は人に代わって機械が情報を送信し、情報が定期的に蓄積されることです。これにより、ネットを利用していない人であっても、ネットの恩恵を利用することが可能になる点にあります。
IoTによって、無数のセンサーや機械が人々の状態をクラウドに送信するようになります。例えば、車が走行距離や車の状態をクラウドに送信することで、エンジンやブレーキの劣化を判断し、部品の劣化の予兆が見られれば検査することをドライバーに薦め、事故を未然に防ぐ研究がなされています。
「4+1の力」と「融合する世界」
私は、日々の取材活動においてソーシャルメディア、モバイル、IoTが新たな情報発生源となり、クラウドに情報が保管され、膨大なデータを分析する、そんな世界が誕生しつつあると感じています。私はこの5つの潮流がアナログな世界とデジタルな世界を融合しつつあることから、「融合する世界」と呼んでいます。

そして、現在すでに主流となった四つの技術、「クラウド」、「モバイル」、「ソーシャル」、「ビッグデータ」と「IoT」を加えて「4+1の力」と呼んでいます。
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大元 隆志(おおもと たかし)
ITビジネスアナリスト/顧客視点アドバイザー 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、 技術者、経営層、顧客の3つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。講談社 現代ビジネス、翔泳社EnterpriseZine、ITmediaマーケティング等IT系メディアで多くの記事を執筆。所有資格:米国PMI認定 PMP、MCPC認定シニアモバイルシステムコンサル...
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