手を変え品を変え、わずかなスキをも逃さずに、狙ったターゲットに攻撃を畳み掛けてくるハッカーたち。彼らの魔の手からビジネスを守るには、ファイアウォールなどの製品を導入する前に、まず脅威の現状を把握し、セキュリティへの意識を高める必要がある。本稿では8月6日~7日にオーストラリア・シドニーで開催された米Check Point Software Technologiesのプライベートカンファレンス「CPX 2013」の初日キーノートから、現在の世界を取り巻く脅威の実情を紹介する。
全世界の組織の63%がボット感染の経験あり―急増するボットによるマルウェア感染
8月6日のオープニングキーノートに登壇したのは、米Check Pointのプレジデントを務めるアムノン・バーレブ氏。「Do You Know What's Hiding in Your Networks(ネットワークの背後にある脅威に気づいていますか)」と題したプレゼンテーションにおいて、増大する一方のハッキングの脅威を訴えた。

バーレブ氏がまず取り上げたのは、ボットによるマルウェア感染がここにきて急激に増え続けている点だ。「全世界の組織の63%がボットに感染したことがあり、ボットがC&Cサーバに送信する頻度は21分に一度に上る」とバーレブ氏。

オンラインバンキングをハックし、3万もの銀行口座から4700億ドルを盗み出したZeusや、ユーザの端末に忍び込んでコマンドシェルを実行し、ファイルを検索して必要な情報を抜き取るJuasekなど、よく知られているボット(Known Knowns)による被害はもちろんのこと、いわゆる"Unkonwn Knowns(まだ知られていない既知のボットの亜種、未知の未知)"や"Unknown Unknowns(存在も攻撃手法も知られていない未知のボット)"による被害も拡大中だという。
すでに存在が知られているものから"未知の未知"に至るまで、日々誕生と増殖を繰り返すボットやウイルスから組織を守るには、ボットに感染したマシンを検出し、ダメージを最小限に抑えるアンチボットや、マルウェアのダウンロードを防ぐアンチウイルスによるブロックが欠かせないが、バーレブ氏はさらに一段階進んだ対策として「Unknown Unknownsによる攻撃を防ぐため、あやしげなファイルをサンドボックス上で擬似的に実行できるエミュレータの導入」を推奨している。
こうしたエミュレーション環境を備えた製品はそれほど多くないが、Check Pointは同社のアプライアンス上で動作する「Threat Emulator」というソフトウェアを提供している。また、Unknown(未知)をKnown(既知)に変えるために、あやしげな振る舞いのボットを検知したのち、すぐさまクラウド上に情報をアップロードしてChack Pointユーザ間で共有する基盤「ThreatCloud」を構築している。
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五味明子(ゴミ アキコ)
IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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