省資源に貢献するIT
ITが叫ばれ始めた1990年代からこれまでに、ビジネススタイルはもとより社会生活まで一変した。当時、ITの意味について盛んに討議されたが、社会様式の革命と成り得たことは事実として受け止められている。
ITは農業革命、産業革命とならび、情報革命としてしての位置付けと考えられる。つまり、石器や土器と言った道具(技術)による農業革命、ワットの蒸気機関に端を発する機械という道具(技術)による産業革命、そして文字通り、ITという道具(技術)による情報革命である。具体的には情報を生産・加工するコンピューター技術、そしてその生産加工された情報を運ぶネットワーク技術によって実現している。
この情報革命を含めてそれぞれの社会様式の革命の目的は物質的な豊かさであり、さらに精神的な豊かさでもある。言わば時間と空間を超越することを究極の目標に置いている。情報革命は本来、この時間と空間を対する陽な取り組みであり、ITとは「もの」の本質を情報ととらえた場合、その情報自体、あるいはそれを媒介に時間と空間を越えようとする技術である。
ITの1つの切り口が「アナログからデジタルへ」という「ものの見方」の変革である。それまでアナログ、つまり連続量で扱っていたデータ(情報)をデジタルという離散量で扱うことによって、飛躍的にその取扱い方法が発展した。デジタルの本質は、曖昧さを除き、その利用にとって必要十分な部分だけを取り扱うことである。デジタル、そしてITという考え方自体が無駄を省くことによって発展した技術なのである。
その根本的な考え方と同様、ITの眼前の目的は社会活動の効率化であった。特に産業革命以来の物質の生産性の拡大に伴う、その生産の効率化や輸送の効率化を目的とされた。それぞれの無駄を省くための技術(道具)として利用されるだけでなく、元来、「もの」として扱われていた生産物や輸送の本質が情報である場合を精査し、「もの」ではなく情報として扱うことによって顕著な成果を得ている。
たとえば、音楽産業におけるレコード、CDである。レコードからCDというデジタル化だけでなく、レコードやCDは本質ではなく、それに内包されている音に関する情報が本質であり、その情報自体のやり取りに特化することによって効率化を進めている。つまりネットワークを利用した音楽配信である。ITによって、生産物である「もの」を無駄なく利用できるのである。
70年代に都市部の過剰な自動車台数、それに交通事故、さらに石油危機の問題もあって、郊外の団地や住宅地等では、自動車を共有し、必要な時だけ利用する、いわゆるカーシェアリングの適用が考えられた。しかしながら、広く実現には至らなかった。その理由は、シェアリングする自動車に関する情報の共有手段が貧弱であったことによる。「いつでも、どこでも、誰(何)とでも」情報を共有するというユビキタス環境が構築できなかったのである。
現在ではGPS技術も相まって、この「何とでも」の何を自動車に置き換えることも可能になり、実際、カーシェアリングが徐々にではあるが、広まりつつある。また、CRMやSCMに代表されるように経営の効率化にはIT技術は必須であり、そこに利用されるソフトウェアやシステムに至っても、SOAという考え方が主流となり、システム構築の効率化が図られている。
これらのようにIT自体がすべての社会活動の効率化、すなわち、利用する資源を必要最小限、かつ最大に利用するための道具であり、考え方なのである。