素晴らしいビジネスモデルや戦略も、指針がなければ意味がない
「ルールその①…絶対に損をしないこと、ルールその②…1つ目のルールを忘れないこと」
(投資家:ウォーレン・バフェット)
ビジネス計画の論理的構造を表現するモチベーションモデルの最後の要素は、手段としての「指針(Directive)」です。指針には、「ビジネスポリシー(方針)」と「ビジネスルール(規則)」の2つがあります。まずは、手段の内部構造と指針の位置付けを見ていきましょう(図1)。
図のとおり、指針は行動方針(戦略や戦術)を統治し、成果(ゴールや目標)の達成を支援するという関係にあります。さらに、指針としてのビジネスルールはビジネスポリシーを基礎にするという関係にあります。
もう少し分かりやすくするために、成果を「目的地」に、行動方針を「道路」に例えてみましょう。行動方針とは、成果の達成に向けて取り組む手段であったことを覚えていますでしょうか。指針とは、標識や信号、ガードレールや中央分離帯のようなものであることをまずはイメージしていただければと思います(図2)。
指針は、戦略や戦術といった行動方針に比べ、地味なイメージをもたれるかもしれませんが、日々のビジネス・オペレーションにとって不可欠なビジネス要素です。今世紀初頭に破たんしたエンロン社を覚えていますでしょうか? 同社は、素晴らしいビジネスモデルや事業戦略をもっていると世間から絶賛されていました。ところが、同社は遵守しなければならないビジネスルールを守らなかったのです(ルールがなかったのではありません)。これを「戦略の暴走」と呼ぶことができるかもしれません。指針は、このような戦略の暴走を阻止する働きをもちます。
ビジネスモデルのイノベーションを実現するために、従来の慣習やルールを疑うことは必要です。しなしながら、企業をゴーイングコンサーンとして考えた場合、遵守しなければならないルールもあることは疑いの余地がありません。