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ビジネスモデルと「新たな競争優位の戦略論」の関係性を理解する‐デルタモデルという戦略論(後編)

(第27回) 


 前回は、デルタモデルという戦略フレームワークをご紹介しました。今回は、戦略を戦術に落し込むためのツール、戦術のタイプについて考えてみることにします。

デルタモデルにおける戦略を戦術に落としこむための3つのツール

 「試合の流れを読むことだ。試合中にずっと横パスをつないでもダメだし、ずっと縦パスを放り込んでもダメ。試合の流れを見て、状況に応じた戦術を使い分けるようにしたい」(アルベルト・ザッケローニ 『ザッケローニの言葉』より)

 前回はデルタモデルというフレームワークを使って、ビジネスモデルと事業戦略の関係について考察しました。「事業戦略(またはビジネスモデルのイノベーション)」とは、ビジネスモデルの3つの柱であるプロダクト革新、顧客インターフェース、オペレーション基盤のうちの1つに焦点を当てることからスタートします。一方で、「戦術」とは事業戦略に基づいて事業ビジネスモデルの9つの要素(ビルディングブロック)に割当てられる具体的な施策と考えてよいかと思います。復習をかねて、手段の内部関係から見ていきましょう(図1)。

手段の内部関係
図1:手段の内部関係

 デルタモデルにおける3つの大きな戦略のタイプごとに、戦術を策定するための代表的な分析ツールをご紹介していきましょう。

1:アトリビュート分析

 ビジネスモデルの中央に位置する「プロダクト革新」の柱に焦点を当てる戦略では、アトリビュート分析が有用なツールの1つとなります(図2)。これは、プロダクトやサービスの特性をターゲット顧客の立場から分析し、自社および競合他社のオファーがなぜ売れているのか、顧客はどの特性に魅力を感じているのか(あるいは感じていないのか)を把握するためのツールです。各々のセルに対して、増やす、加える、減らす、無くす(ブルーオーシャン戦略ではERRCグリットと呼ばれる)という4つの視点でメリハリをつけることが重要です。もう少しひねりを加えるのであれば、SCAMPER(代用する、組合せる、適応させる、修正する、他の目的に使う、取り除く、並べ替える/逆転させる)でアイディアを練るのも良いでしょう。

アトリビュート分析
図2:アトリビュート分析

2:カスタマージャーニーマップ

 ビジネスモデルの右側に位置する「顧客インターフェース」の柱に焦点を当てる戦略では、ターゲット顧客を理解することが重要となります。この理解を深めるためには、カスタマージャーニーマップ、サプライチェーンと呼ばれるツールが役立ちます(図3)。これは、プロダクトやサービスに関連する利用経験を視覚的に表現するものです。各々のステップにおける顧客行動、思考、感情などを捉え、的確なチャネル(正確に言うとタッチポイント)を通じた顧客リレーションシップ戦術によって顧客のロイヤルティを高めようとするものです。

カスタマージャーニーマップ
図3:カスタマージャーニーマップ

3:バリューウェブ

 ビジネスモデルの左に位置する「オペレーション基盤」の柱に焦点を当てる戦略では、協働ネットワーク(サプライヤー、パートナー、補完事業者など)と協力して価値提案を高めて行くことが現代においては重要性が増しています。バリューウェブは、自社をハブとして協働ネットワークやターゲット顧客との間において、交換される経済価値を可視化するための有用なツールです(図4)。

バリューウェブ
図4:バリューウェブ

次のページ
具体的な戦術にはどのようなものがあるのか?

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この記事の著者

白井 和康(シライ カズヤス)

 ITコンサルティング会社所属。IT業界において20年以上にわたり、営業、事業企画、マーケティング、コンサルティングと幅広い役割に従事。2年前のある日、「日本のビジネスに光を!」という天からの啓示を受けて以来、ビジネス構造の究明と可視化に没頭中。好きな言葉は、「人生とは、別の計画を作るのに忙しいときに起こる出来事である。」(ジョン・レノン)Facebookページ「ビジネスアーキテクチャー研究ラボ」を運営中。

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