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“次の流れ”を読むための『イノベーションの最終解』

(第20回)イノベーションに効く翻訳書11:『イノベーションの最終解』 

競争優位性は「強さ」だけにあらず

 イノベーションを試みる企業が業界に参入すると、競争が起きます。その競争にはどちらか勝つのでしょうか?「強い方が勝つ」と考えてしまいそうですが、「強くて、戦い方が適していて、ヤル気が強い方が勝つ」のです。クリステンセンはこれを「RPV理論」と呼びます。

  • Resource 資源があるか?動員できるか?
  • Process 業務プロセスは効果的・効率的か?
  • Value 価値観が目的に向いているか?

 RPVの中でも、Rは否応なく目に入ってくるので、PとVに注目しましょう。大手企業が資源の量で圧倒しながらベンチャーに負けるのは、プロセスが冗長であると同時に、未熟で小さな市場に価値を感じず、大切にしないからです。一台15万円のテレビが売れるなら、2000円のテレビを開発しようとは思わないものです。決して開発できないのではなく、価値を感じず、ヤル気が生まれないのです。RPVが有利な企業は勝ち、不利な企業は敗北します。

 LCCのサウスウェスト航空のように、リソースの劣る立場で大手航空会社に戦いを挑むなら、大手が軽視しがちな地方路線から始めることが重要です。

創発的な戦略を実行しているか

 新規参入企業がイノベーションを成功させようと戦略を立てますが、どんな戦略が正しいのでしょうか。破壊的イノベーションを成功させるための創発戦略が紹介されています。そもそも、競争変数が変わる業界の中で成功するのは、一つの競争変数を目標にした意図的で固定的な戦略ではなく、いわば「走りながら考える」創発戦略です。その創発戦略を理解することで、新規参入がそのまま勝利するのか、既存企業がそのチャレンジを潰すのかを予測できるようになります。

 以下に、新規参入企業、既存企業それぞれがどのような場合に勝つことが出来るのかをまとめてみました。

  • 人材が不確実性に慣れていないと、そもそも創発戦略はとれない
  • 戦略策定プロセスは創発的で、仮説検証型になっていないと、市場を形成できない
  • 投資家の価値観と新規参入企業の価値観がズレていると、創発戦略を取りたくてもとれない
  • 既存企業の商流や取引業者に類似しすぎると、既存企業が取りこみやすい
  • 既存企業がインテルやP&Gのようにイノベーション体質になっていると、破壊的イノベーションに自ら追従し、リソースで勝利する

次のページ
クリステンセンが予測した「勝ち馬」とは?

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この記事の著者

津田 真吾(ツダ シンゴ)

日本アイ・ビー・エム、日立グローバルストレージテクノロジーズ、iTiDコンサルティングを経て、イノベーションコンサルティングおよびハンズオン事業開発支援に特化したINDEE Japanを設立。HDDの開発エンジニア時代に「イノベーションのジレンマ」に触れ、イノベーションの道を歩み続けることを決意する。その著...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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