「用途に合わせ、複数のクラウドを使い分けたいというマルチクラウドのニーズが出てます」―こう語るのは、IIJ代表取締役社長の勝 栄二郎氏。
プライベートクラウド、オンプレミス、パブリッククラウドを組み合わせて利用するマルチクラウドの環境がエンタープライズ領域では今後スタンダードになるという。
「IIJとしてはMicrosoft Azureとオンプレミスを補完的に組み合わせることで、顧客にとって最適なクラウドをワンストップで提供します。今後3年間で200社へのサービス提供を目指します」(勝氏)
一方、日本マイクロソフト代表執行役の樋口泰行氏は次のように語る。
「マイクロソフトにはクラウドOSというコンセプトがあり単にパブリッククラウドの会社ではなく、オンプレミスからパブリッククラウドまでをシームレスに連携できるコンセプトがあります」。
マイクロソフトにとってIIJは、これまでも新しい技術を早期に評価し取り入れてもらえる重要なパートナーだった。
企業がパブリッククラウドを利用するに当たっては、クラウドサービスそのもの信頼性や可用性よりも、セキュリティ対応力の高さやネットワークの安定性を重視しているという調査結果がある。こういった背景を踏まえて登場したのが、今回のExpressRouteのサービスだ。ExpressRouteは、Microsoft Azureに接続する際にパブリックなインターネット回線を経由せず、顧客のWANと直接接続することになる。VPNなども必要なくベストエフォートでもなくなるので、安定したパフォーマンスと高いセキュリティ、高スループットさらにはそれを低コストで確保できることになる。
これまでのクラウド利用の世界では、オンプレミスのシステムをクラウドに持っていくという話しがほとんどだった。これだとクラウドに載せられるものしかクラウドに持って行けない。今回のExpressRouteを使ったマルチクラウド環境であれば、たとえば負荷が変動するWebサーバーはパブリッククラウドに、重要なデータを管理するデータベースはプライベートクラウドで、独自に開発したアプリケーションはオンプレミスでといった構成をシームレスかつ安全に連携し活用できる。
顧客がIIJのネットワークを利用していれば、IIJのネットワークの中だけでプライベートクラウドもオンプレミスもMicrosoft Azureも使える。IIJのアクセスポイントは東京と大阪で2カ所ずつ合計4カ所用意されており、接続回線はほとんどの主要キャリアに対応している。このマルチクラウド環境では、専用リソースの活用やライセンスの持ち込みなどにも柔軟に対応できる。
IIJとしては、3年間で200社のExpressRouteの導入を目標にする。技術面だけでなく両社は共同でマーケティング、営業活動も行う。他のパブリックラウドとの連携については「いまのところはそういう段階にはない」(勝氏)という。一方マイクロソフトとしてはグローバルでのExpressRouteのパートナーとしてエクイニクスの名前が挙がっており今後日本でもサービスを開始する可能性はあるが、それ以外のところとはExpressRouteの提供を予定しているパートナーはないとのこと。会見では、両社の間には強固なパートナーシップがあることが強調された。