大路成夫(おおじ・なりお) 入社5年目の新米チームリーダーにして、 この連載の主人公。 テスト周辺の知識がちょっと怪しい。 |
|
江尾伝子(えび・でんこ) 成夫くんの後輩。 若手ながらなかなかの切れ者で、 テストについても成夫くんより詳しい。 |
|
先生(せんせい) この連載のガイド役。 ソフトウェアテストに長年携わってきた経験を活かし、 成夫くんに助言を与える。 |
舞台の紹介
ここはとあるソフトウェア開発組織。いつも大小多くの開発プロジェクトが走り、フロア全体が毎日忙しく動き回っています。
その中のひとつ、比較的小規模の8人編成のプロジェクトに、このお話の主人公・大路成夫(おおじ・なりお)君がいます。入社5年目、二つあるチームのひとつのリーダーを任されています。チームリーダーは初めての経験、後輩も下についているのでよくも悪くも緊張気味。
今、プロジェクトは実装フェーズの終盤に差しかかり、そろそろモジュールの統合を始めようかというところです。大路君のBチームは下位のレイヤーの担当で、事前にコンポーネントテストを済ませて、順次Aチームにリリースすることになっています。
テストに関する用語はISTQBの用語集(日本語訳)に準拠しています。コンポーネントテストは組織・企業によって「単体テスト」「ユニットテスト」などとも言われます。
成夫君は後輩の面倒を見ながらテストを進め、最初のリリースを終えたばかりです。次のリリースの段取りを考えていると、Aチームにいる後輩の江尾伝子(えび・でんこ)さんがやってきました。彼女は、若いけれどなかなかの切れ者と評判の女性です。
さて、どんな用事なんでしょう――。
ホントにテストやったの?
大路センパイ、納期どおりのリリースありがとうございました。リーダーからお礼を言ってこいって。
いやいや、Aチームに迷惑をかけるわけにいかないからね~。そこはちゃんと考えてるよ。
(眉を曇らせて)えーと、それで相談があるんです。うちの動作確認がトラブルばかりで全然進まないんです。
スタブに切り替えると問題はなさげですし、コードレビューもみっちりやったけどおかしなところは見当たらなかったんですね。それで、センパイの方でどんなテストをしたのか聞いてこいってリーダーに言われて。
どんなテストって言われても、普通にテストしたけど?
テストケースとテスト結果を見せてもらえませんか。
いいよ。
(PCを操作しながら)今回リリースしたのはモジュール4つ。これがそのテストプログラムのソースで、公開インターフェイスを呼び出して戻り値を確認してる。ファイルI/OやDBアクセスはダミーを使った。こっちがその結果のログ。
…ごめんなさい、テストコードとログだけ見せられても私には判りません。テストケースをまとめた文書はありませんか。
え、、、テストケース? 文書? いや、そういうのはないけど?
テスト手順とか、テストデータのセットアップ内容とかは?
そういうのも特に文書化してないな。
そうですか…、ちょっとマウスをお借りできますか?
ああ、十分みてもらっていいよ。
これがテストプログラムで、こっちが結果ログですね。……ふんふん。
このモジュールはAチームがあちこちで使うから入念に叩いたんだよ。
確かに公開メソッドを何度もテストしてますね。……なるほど、わかりました。
たくさんテストをされたのは判りました。でも、センパイに言いにくいんですけど、今回のリリースはちょっとよくないと思います…。
…え?どうして?
はっきり言って、テストになっていません。私、今呆然としています。
え?ええ?? だから、どうして?
指摘すべき点は山ほどありますけど、今回のテーマに合うところだけ言いますね。
こ、今回? テーマ?
伝子さんは、成夫くんの実施したテストについて相当不満があるようです。成夫くんは一体何をしたのでしょうか? みなさんもちょっとだけで良いので一緒に考えてみてください。……はい、それでは、次のページをクリック!