デジタルビジネスとビッグデータの関係
ガートナーによる2015年3月の調査で、日本においてビッグデータで大きな成果を収めた企業は、わずか1.9%だった。それが、2016年2月の調査によれば、3.1%に急増した。鈴木雅喜氏は「急増というと聞こえは良いですが、その程度? と思った人も多いと思います。これが事実です」と述べる。
ただ、日本においてビッグデータに向けた活動を進めている企業という観点で数字を見ると、去年の34%から40.4%に上昇している。
実際にビッグデータの活用に取り組み、具体的な成果を上げることは時間もかかり容易なことではない。ただ、「やらなくていけない」と考えている企業の数が増えているということだ。
また、デジタルビジネスにおいて、ビッグデータに根ざした活動というのが非常に重要であり欠かせない。たとえば、アルゴリズムビジネス、AI、IoTはデータの分析抜きには語れなくなっている。
そもそもデジタルビジネスとは何か。デジタルの世界とアナログである現実の世界の二つを融合させ、ビジネスを革新することを意味している。デジタルテクノロジーがビジネスの世界にどんどん浸透していき、大きく変わるというトレンドだ。
デジタルビジネスには二つのパターンがある。一つは、既存のビジネスにテクノロジーを入れ込んでいって、革新するというもの。もう一つは、何も無いところから全く新しいサービスを投入し、そこからビジネスを広げるというパターンだ。タクシー配車サービスUber、民泊のAirbnb、Googleによる自動運転車。Googleは自動車メーカーではないが、デジタル企業が新たに市場へ参入していくというパターンだ。
では、日本企業ではビッグデータの活用をどのように考え、取り組んでいるのか。ガートナーが2016年2月に、従業員500人以上の日本企業に行った調査で、「ビッグデータを活用する上で最も大きなビジネス成果が得られると期待されるのはどの項目でしょうか」という質問に回答した515社の結果がある。
その結果を見ると、「過去~現在のデータを見るより、これからは将来予測だ。そして、判断の自動化という方向にだんだん価値が動いていく」と考えている人が非常に多いという。
ただ実際、そうした段階に日本の企業がいるのかというと、鈴木氏は「こうなりたい」という希望レベルだという。しかし、ビッグデータの活用方法において、アルゴリズムビジネスに対する日本企業の期待値が高い。知見から予測、判断自動化、ビジネス自動化へと動いていくという。
デジタルビジネスを理解するとき、絶対に分かっていなければならないことがある。それは、IT部門にとって、テクノロジーの活用が非常に重要だが、”ビジネス成果を得るということがゴール”ということだ。将来へのビジョンと方向性を維持し、迷走を防がなくてはならない。
テクノロジーの知識を蓄積し、スキルを開発することは非常に重要だが、それ以上にビジネス系の人たちとどうやっていくかが重要だ。そこでポイントとなるのが、技術的にはあまり珍しいことではないが、ビジネス価値は非常にあるというものが出てくる可能性だ。「ビッグデータだからといって、スピードを速くした先進的なものだけでなくて、今まで、やりたくてもできていなかったところにぜひ目を向けてもらいたいと思います」(鈴木氏)。
また鈴木氏は「ビッグデータ活用のステップの中で、成果につながるスモールデータにも注目する必要があります」と語る。実際、ユーザー調査をしてみると、「注目する余地あり」と応えた人が6割もいたという。「もしかしたら皆さんが気づいていないデータが、ビジネスの中に存在している可能性が非常に高いのです」(鈴木氏)。