リーンスタートアップでAIができることとは?
AI(人工知能)の登場と影響は「産業革命との比較で考えると分かりやすい」と QUANTUM Inc. Startup Studio事業責任者 井上裕太氏は言う。産業革命では内燃機関の登場、電気工学の発展などがあり、人間の肉体労働や手作業が置き換わっていったと言える。
一方、AIがもたらしうる革命とは、コンピュータの計算能力向上と情報科学の発展とデータ量増加が組み合わさり、人間の情報収集や情報処理作業が置き換わると考えられている。井上氏はAIのコアとして「地頭の良さにスキル(効率)とデータ(経験)が加わったもの」と説明する。
なおAIの登場で「人間(の仕事)が不要になるのでは」という懸念がたびたび生じる。そもそもAIには「Generalized AI」と「Specialized AI」がある。前者は人間の活動を全般的にこなすもので、後者はコンピュータ囲碁プログラムAlphaGOなど何かの活動に特化したものだ。前者を実現するには課題が多くあり、実現化はまだ当分先である。しかし後者は現実的になりつつあるので、人間の活動をどのようにサポートして付加価値を創出するかを考えるのが良さそうだ。
そうしたなか「AIは新規事業開発でパワフルなサポーターになりえます」と井上氏は指摘する。事業開発をサーフィンに例えると、成功するには大きな波を見つけて、それを乗りこなす必要がある。大きなモーメンタムを的確なタイミングで見いだすために、情報収集にAIを活用すればいいというのが井上氏の考えだ。これまでマーケット分析にはSNSや各種文献を読みこなす必要があったが、AIなら大量のデータを素早く読み、分析できるからだ。
波を見つけたらバックキャスティングが重要になるという。過去のデータや実績から考えるのがフォアキャスティングで、現在から過去を振り返り何をすべきだったのか考えるのがバックキャスティングでそれを使って新規事業を発想していく。井上氏は「馬車をどんなに改善しても鉄道は生まれない」と述べる。新しいビジネスを生み出すためにはバックキャスティングができるかどうかが鍵となる。
例えばUber。最初は「なぜタクシーが捕まらないのか」という移動に関する課題から、リムジンが空いていることに目を付けてリムジンのレンタルサービスをスタートした。フォアキャスティングだけならレンタルサービスだけで終わっていたかもしれない。Uberは何をすべきかを考えるというバックキャスティングのアプローチと改善を繰り返して事業を成功させてきた。
発想のポイントとして井上氏は「10年後、世界は○○○時代になっているべき」というビジョンが必要だと説く。Uberであれば空欄にあてはまるのは「全ての交通がオンデマンドになる」だ。それを実現するためにどうするかを考えていく。
ビジネスの芽が出たら、育てていく時もAIは活用できる。ビジネス成長には顧客との対話は重要になる。これまではインタビューやアンケートフォームがあり、最近ではLINEなどSNSを通じた対話ができる。今コンビニや銀行のLINEにAIが用いられていることもあり、顧客との関係を深め、生の声を収集するのに役立てることができる。
井上氏はBoxのCOOを務めるDan Levin氏の言葉を引用した。「成功したければ、とにかく速く動け」と。速く動くとすぐに失敗に直面することになる。悪いことのようだが、実はこのほうが正しい。じっくり考えて事業を立ち上げるよりも素早く動き、誰よりも速く失敗を経験し、改善を重ねることでビジネスは成功するというのがLevin氏の考えだそうだ。井上氏は「AIでリーンに行きましょう」と締めくくった。
マイクロソフトのAI普及のための取り組み
デジタルトランスフォーメーションを加速させる技術要素としてIoT、AI、ロボティクスが注目されている。本稿では、マイクロソフトが提供しているAI関連技術やサービスを紹介する。
先に井上氏が述べたように、AIには2通りある。日本マイクロソフト エグゼクティブプロダクトマネージャー 大谷健氏も同様に「強いAI」と「弱いAI/ソフトなAI」と呼んでいる。言葉は違うが考えは同じ。なおマイクロソフトが提供している「りんな」などのチャットボットは「弱いAI」に該当する。
いまマイクロソフトは「AIの民主化」という表現でAI普及に努めている。大谷氏は「マイクロソフトやプラットフォームを提供する会社です。かつてプラットフォームはOSでしたが、今はAIやデータを活用する環境となります。だから(本質は)変わらないのです」と話す。
同社はAIの取り組みを強化するため、2016年9月に5,000人規模となるMicrosoft AI and research groupを設立。またAmazon、Facebook、Google、DeepMind、IBM、MicrosoftがAIの普及に向けて協議する場となる「Partnership on AI(https://www.partnershiponai.org/)」を立ち上げ、人工知能を研究する非営利団体「OpenAI」と提携するなど、外部との連携も力を入れている。
いまマイクロソフトが提供しているAIスタックは下図の通り。ユーザーが直接目にする製品やサービスとなると、「Cortana」、「Skype」、「りんな」、「HoloLens」がある。AI活用の入口と考えていいだろう。
「Cortana」というとWindows 10のパーソナルアシスタントがなじみ深いが、システムを開発するならデータをインテリジェントなアクションに変換するためのサービスをまとめて提供する「Cortana Intelligence Suite サービス」がある。データの管理から分析、機械学習、インテリジェンス(コグニティブサービスやCortana)などで構成されインテリジェンスなアプリケーションを開発できる。なかでも 認識(コグニティブサービス)は視覚認識、音声認識、言語理解、知識、検索など23種類のAIサービスAPIからなる。
例えば視覚認識のAPIなら、RESTなどで画像を送ると、画像内にあるものを認識して「女性」や「ケーキ」などタグを付け、JSONデータとして戻る。画像認識精度を競う大会でマイクロソフトは高い評価を得ており、質も性能も申し分ない。
フォレスター社によるAzure PaaSのユーザー調査レポート【要約版】
『Microsoft Azure PaaSはIT管理および開発コストの削減と、市場投入/収益実現までの時間短縮に有効』
米独立系調査・コンサルティング会社であるフォレスターコンサルティング社では、Microsoft Azure PaaSによる便益や費用、リスク等の企業の実態を把握するために、「Azure IaaS」から「Azure PaaS」に移行したユーザー企業へのインタビューを基に、Total Economic Impact(TEI:総合的経済効果) の調査を実施しました。本資料(全6頁、無料PDF)は、このTEI調査により明らかになった、ITコスト、人件費、サービスの市場投入までの時間、アプリ開発とテスト関連の節減、プロセス関連の節減、新たな利益と収益など、ビジネスへの影響について詳細に調査・分析した要約版レポートです。本資料をクラウド活用のビジネス効果やPaaS導入における参考資料としてお役立てください。
Uber、ソフトバンク、サマーランドなどAIの事例が次々と登場
最近の事例として大谷氏はUberを挙げた。Uberでは安全性を高めるためにスマートフォンを通じてドライバーの顔を確認している。ここにマイクロソフトの視覚APIを用いて顔認識している。企画から数ヶ月で実現した。
国内事例ではソフトバンク、リクルートキャリア、サマーランド、ローソンが紹介された。ソフトバンクでは「未来の商品棚」として、Pepperとサイネージを用いて商品やサービスを案内することで顧客の店頭体験を向上させている。店頭で在庫確認や商品注文をしたり、言語翻訳サービスを組み合わせて外国人対応をしたりするなどを、追加人員不要で実現している。
サマーランドでは監視カメラ画像を分析することで客層と入出場の時間帯を記録し、客層がより詳細に分析可能となった。プロモーションの効果測定にも有効となる。もともと導入していた監視カメラ画像をAPIで分析するため、システム開発の敷居や費用を下げているのも特徴だ。
ローソンではLINE公式アカウント「あきこちゃん」にAIを用いている。大ざっぱに言うと「りんな」をローソン向けにカスタマイズして提供している。対話履歴から学習し、会話だけではなくクーポンを提供することでリアル店舗への誘導にも効果を出している。
リクルートキャリアでは採用後の活躍をアシストするためにAIを用いている。採用前のマッチングであればBIで足りるが、採用後に職場でうまく行っているかどうかをAIで判断し、とるべき行動を具体的にレコメンドするなど職場適応を支援しているという。
各社でAI関連サービスが各種提供されているため、大谷氏は各社でどのようなサービス名になっているかを一覧で示した。学習済みモデルはどこも提供しているものの、独自のAIを開発するためのディープラーニング用のフレームワークやインフラとなると限られてくる。
大谷氏は「AI導入が多くの企業ですでに始まっています。マイクロソフトはクラウド型のAI技術と実績があります。お客様が持つ知識と経験をAI化して一緒にデジタル変革しましょう」と話した。
実際にAIサービスを用いて開発するときの環境やツールも示された。米Microsoft Cloud & Enterprise プリンシパル・プログラム・マネージャーのアパルバ・ジョシ氏が「Azure App Service」についてデモを交えながら説明した。
Azure App Service は Web App、Mobile App、Logic App、API App、Azure Functions から構成され、Azure App Service を使えば素早く Web やスマホを使ったサービスを構築し他システムと連携させることが可能だ。既に全世界で36万5千の顧客で利用され、3倍のペースで成長している。
海外ではスペインのレアル・マドリードが試合の動画やチームの情報をファンに提供するためや、イギリスのロンドン運輸局が地下鉄の保守を実施するためや、ニュージーランドの Plexure 社がマーケティング分析を進めるためにマイクロソフトの App Service を利用しているという。
APIを利用していく等、昨今のシステム インテグレーションの中では Azure Functions は非常に有効であり、Joshi氏は Azure Functions では「やることは1つ」、「素早く終わらせる」、「ステートレスとする」、「冪等性であること(何度実行しても同じ結果になること)」とすることを勧めた。
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サイトコアが実践するコンテクストマーケティング
ビジネスにおける顧客管理は日々進化している。顧客に購入済み商品を提案してしまうなど、気の利かない営業活動をすれば顧客は離れてしまう。顧客の好みや状況に応じて適切なアプローチが必要となる。「コンテクストマーケティング」とも言われている。
サイトコアはマイクロソフト技術を活用し「Sitecore Experience Platform」としてコンテクストマーケティングを実践している企業の1つ。サイトコア セールスグループ プリセールスマネージャーの原水真一氏はコンテクストマーケティングの鍵となる技術要素としてWebコンテンツ管理、顧客情報、クロスチャネル配信を挙げた。
事例として挙げたAuckland空港では、空港駐車場を予約した顧客に洗車サービスのクーポンを提供したり、ラウンジを予約しているかどうか確認した上でラウンジチケットをオファーするなど顧客に合わせた提案を実現している。これによりビジネス売上に貢献しているという。
原水氏はクラウドインフラを利用するメリットとして、基本的に使った分だけ課金されることと、セキュリティの高さを挙げた。「Microsoft AzureならSQL Databaseやアプリ開発ツールなどのPaaS、Microsoft Dynamics CRMをはじめとしてSaaSが充実していること、さらに機械学習やコグニティブサービスとの連携があり、クラウドのインフラを活用することで柔軟なインフラを獲得できます」と話した。
フォレスター社によるAzure PaaSのユーザー調査レポート(要約版)
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