自治体の首長という立場から―横尾氏
横尾:はい、多久市長の横尾です。今日は会員市も今日は何人か市長さん来ていただいております。冒頭の緊急決議の解説でも若干述べましたので、重複部分は避けまして、意見を述べたいと思います。先程来の話にもありますし、鈴木先生からも詳しいご説明があった通りでございます。
例えば、お手元の資料で冒頭引用した例でいいますと、前年に提言したペーパーの6頁です。先の3.11東日本大震災の折に、個人情報を支援団体に提供して、要援護者の方へ支援協力が実現した例は、わずか二つの自治体のみです。緊急的に行政は対応してもよいとのことだったと思いますが、色々な法的な解釈とか現場の対応とか繁忙もあったと思いますけれども、そういった問題があります。一方で、我々も市長会、役員会の席等で総務省の説明を聞きましたが、これからはマイナンバーができましたのでいよいよ動き出します。そしてそれぞれに必要な扱いについては、今後、個別の条例でどうぞと。分権も尊重されるという言い方もあったのですけれども、もちろん、地方分権の尊重は大事なことです。
でも、例えば災害、救急救命等に関していいますと、都道府県別に、1700を超える自治体別に価値が変わるか、予後が変わるかというと変わることは全くないと思います。そもそも政治行政の使命の第一義の一つは、国民の生命と財産を守ることです。人権も当然守らなければなりませんが、緊急な対応が必要なときに、いちいち条例の有無ではなく、全国統一の基準で迅速、的確な対応を行うことがいかに重要なことかと、首長として感じます。今年は、九州地方は想定外が多かったです。1月24日、25日は冷蔵庫並みの大雪が降って、2日間冷たく零度が続きました。春になると熊本の地震、しかも余震の後に本震という、余震の回数は前例がないくらいに多くて数千回に及んでいます。
今では報道になかなか出ていませんけれども、昨日もFacebookで確認すると、現地では倒壊した家屋等まだまだ残ったままです。避難者の方も当然おられます。そういった方のデータをリンクして、協力してサポートを早くするという時に、解釈が違うのではないかといっている場合ではないのですね。いかに迅速か、これはぜひ、国として国民の窮地を救う国民の必要とするニーズを、平時の時も提供できるようにしていくことがとても大切だと思います。
平時の際には、先ほどの先生方のお話にもあったのですが、医療とか健康情報について、実は、多くの国民の皆さんが自分の長寿、暮らし、家族との関わり等で非常に大事にされます。そういった健康に関することをチェックすることは大切ですけれども、家族として共有するとか、医療機関ごとに転送してよりよい活用をしていくとか、こういったことに関しても全て個人情報保護条例がかかってくる。A病院はいいけれどB病院は無理ですとか、C病院にいくと更に複雑ですということもありうる、本当にこれは患者にとって、患者に関わる人にとって、大変な面倒なことになります。早くシンプルにして欲しいなと思います。
また、次に感じることは、先ほど鈴木先生もおっしゃったのですけれども、EUの方から厳しいスタンダードになっていくという動きもあります。きちんとしていかないとビジネスが進まないという条件が高まろうとしています。EU側から見れば、一つのイメージですけれども、2000の国があるような日本という国だなという感じに見えると思うのですね。それぞれ法律が違うよと、扱いも変わるよと、そんな煩雑なところはいいよという話になってしまえば、様々な面で支障も出てくると思います。例えば、社員の個人の社員情報に関するデータの越境移転ができないとなれば、会社としての業務管理にも支障をきたしますし、ビジネスとしても日本経済の進展にもかかわってきます。自治体の現場のみならず、国際社会を見ても非常に重要なことです。この2000個問題ということを改めて取り上げさせていただいて、鈴木先生をはじめ法律に詳しい方や、改革のことを思っている方ともディスカッションして、まとめたところでございました。
公的部門におきましては、実は、県庁の経験をした首長さん、市議会や地方の経営をしたことを経て出てきた首長さん、こういった方々も今回、マイナンバーや官民データ連携、今後の行政の刷新やイノベーションに大きく期待をされています。今日もそういった首長がお見えで、そういったことを加速するためにも、この問題をぜひ解決をしていただきたいなと願うところです。
そのためにも今日お見えの国会の先生方が、先ほど平井先生のお話もありましたとおり、デジタルファースト、あるいはデジタル社会になっていくのを、前例がないけれどもそれを目指していこう、そのためにも新たな法規制や法改正や施策を考案していこうということで、大変心強く拝聴しました。自治体としてもそういったものに連動しながら、よりよい、インターネットやデジタルを当然とする社会に対応ができることを願うところです。そのことが大きくは日本の行政を変えて、エストニアのようなデジタル社会にふさわしい行政サービスを提供で、行政コストを落とし、そして、経済的な方々も助かるのではないかと思います。
次にたとえば電力会社の例ですけれども、電力会社はブロック単位で経営されています。そのために、4月、3月の異動期は大変らしいです。書式の異なる住民票のデータを全部手入力して、キーパンチャーも臨時に雇って、何百万というお金を使ってされているそうです。もちろん行政側の我々も総務省と連携して変える必要がありますが、住民届けとか異動届とかに関する書類を統一できれば、ファイルデータで会社に送り、それを行政区別に転送するということにもなります。もっと便利で利便性の高い社会が来ようとしており、それをスムーズにするために、2000個問題をきちっと解決して、よりよい行政ができる日本国になることを願っているところです。以上です。
森田:梶浦さんお願いいたします。