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ブロックチェーンは独自通貨を持つ企業国家を生み出す? GLOCOMの専門家にインタビュー

2017/05/31 07:00

一国の中に独自通貨による複数の経済圏が生まれる?

――一般の生活者からすると、ブロックチェーンの利用や普及はどういう変化として感じられるようになるのでしょうか。

高木:生活者からすると技術そのものにはあまり関心がなく、どういうサービスを受けられるのか、生活がどう便利になるのかに関心があると思います。サービスに対してお金を払うのであって、ブロックチェーンやあるいはAIといった技術にお金を払いたいわけではないでしょう。

 サービスの裏側で動くものなので、直接意識する機会自体が少ないかもしれません。銀行間の決済にブロックチェーンが使われているとしても、生活者にはどうでもいい話です。手数料が下がって利子が上がることはあるかもしれませんが、それがブロックチェーンのおかげかどうかも、やはり関心は低いと思われます。

 現状ではビットコインでの決済をどれくらいの人が利用するのかわかりませんが、仮に普及していったとき、利用者がブロックチェーンであることをどの程度意識するのかはおもしろいテーマになりそうです。つまり、信頼の源泉が組織からアルゴリズムに移るということを、消費者は意識するのかどうか。

 おそらく「みんなが使っているから使おう」という感じになりそうですが、そこに至るにはアーリーアダプターがビットコインを信頼できるものか吟味する結果次第でしょう。これは今後研究したいテーマの一つですね。

 ただ、かなり直接的に関与してくる可能性もあります。通貨も含めて信頼できる情報を提供するために組織的な地盤が必要なくなることは、誰でもビットコインのようなものを発行できるようになるということです。自社の通貨、家庭の通貨を立ち上げることも不可能ではありません。

 もし円で統一されていた日本国内に、ある銀行の経済圏、ある会社の経済圏、もしくはある地域の経済圏といった独自通貨による経済圏がいくつも生まれることも考えられます。

 たとえば、自動車会社が自社の経済圏を独自通貨で作ることも可能です。世界中に工場、サプライチェーンがあったとして、ブロックチェーンを用いればすべての取引を独自通貨で行うようにすることができます。

――労働者も独自通貨で給料を受け取るということですね。

高木:その給料は同じ会社が提供している店でしか使えないわけです。他で使えるとしても、両替が必要で手数料を取られます。そうなると会社というより小さな国家のようになりますね。

――そこまで行くととてつもないことになりそうです。

高木:地域通貨に関しては会津若松で実証実験を行いました。会津若松で発行した通貨を会津若松で使ってもらう試みです。将来的に別の地域でも使うことができるようになれば、地理を超越して会津若松の経済圏ができ上がるわけです。当然、法律の制限はありますが、地域としては地元で経済を回したいと考えていますからね。

 もちろん、技術的に可能でもどう実装していくかはまだまだ課題だらけです。実現性が高そうな自律分散型の組織にしても、やはりリーダーは必要で、平等性に欠ける部分もあります。

 社会の仕組みや業務が自律分散的になっていくとしても、どこに落ち着いていくのかはまだわかりません。だからこそおもしろく、研究のしがいがあります。

ビットコインに見る自律分散型組織
ビットコインに見る自律分散型組織

ブロックチェーンがもたらす新しい世界観を提示する

――本書についてもうかがえればと思います。連載を始めたとき、目標とされていたことはありましたか?

高木:ブロックチェーンやビットコインの技術的な解説やトレンドを説明した本はけっこうあります。通貨がこれからどうなるかというマクロ経済学の視点で語っている方もいます。ですが、もう一歩進んで、このテクノロジーの革新性が今の社会や経済に与える影響については語れる人があまりいませんでした。ですから、そこに挑戦したかったんです。

 また、ビットコインへの注目は高くその可能性は広く語られています。しかし、ブロックチェーンの真価はそれだけでなく、様々な業務への応用が想像できます。本書、連載はブロックチェーンの影響を幅広く捉えて新しい世界観を提示できればと考えて書きました

――今回連載が1冊にまとまったことで、その目標は達成できたと感じられていますか?

高木:本書は2月くらいに原稿をまとめていたんですが、そのあとにどんどん新鮮な話題が出てきました。日々いろいろな実証実験が行われていて、新しい発見も多々あります。もちろん、ブロックチェーンでやる意味があるのかを考え直さないといけない事例もありますが、ネタには事欠かないというのが実情です。

 また、本書ではブロックチェーンの技術についても解説していますが、既存の書籍だとものすごく詳しい解説書と大雑把な解説書という両極端なものが多いんです。本書はその中間的なレベルで、エンジニアではないが関わる可能性があるという方に向けた内容になっています。ブロックチェーンはよくわからないけど、とりあえず仕組みを知っておきたいという方にもちょうどいいのではないでしょうか。

――本書で最も伝えたいことは何ですか?

高木:ブロックチェーンの応用可能性については議論が始まったばかりで、技術そのものも発展途上です。日本人はわりと答えを求めがちで、ブロックチェーンにしてもこれが役に立つのか、儲かるのかというところに意識が向いています。しかし、その答えはほぼ出ておらず、知恵を絞らなくてはいけない段階です。そこにおもしろさがあります。

 知恵の絞り方も、今までの枠組みに囚われていてはいけません。できるだけ幅広い視点を持ち、時に既存の仕組みを完全に壊す必要もあるでしょう。ですから、皆さんと一緒にブロックチェーンの可能性について考えていきたいですね。

ブロックチェーン・エコノミクス

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ブロックチェーン・エコノミクス
分散と自動化による新しい経済のかたち

著者:高木聡一郎
発売日:2017年4月15日(土)
価格(税込):1,728円(POD)/円(電書)

本書について

本書はBiz/Zineの連載「ブロックチェーンの可能性と課題」を加筆・修正のうえまとめたものです。

※プリントオンデマンド(POD)と電書で販売中。



著者プロフィール

  • 渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

     翔泳社マーケティング広報課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。 Twitter@tiktakbeam

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