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「普通の会社になりたい」NTTのあくなき挑戦──IOWNは世界を席巻する起爆剤になりうるか?

米巨大テック企業の襲来で失墜したNTTは、どのように再起を図るのか

 現在、“普通の会社”になるべく数々の挑戦を進めているという日本電信電話(以下、NTT)。同社は民間企業でありながら、公共性を保たなければいけないという特殊な立場に位置している。『NTTの叛乱 「宿命を背負う巨人」は生まれ変わるか』(堀越功 著/日経BP)では、同社が直面した過去と、そこからの脱却に向け奮闘する現在の姿が述べられている。日本企業がデジタル産業で勝ち筋を見出すために必要なマインドや組織体制などを考えるうえで、多くのヒントを提示してくれる一冊だ。

「普通の会社になりたい」NTTの“攻め”の意思

 「普通の会社になりたい。普通の会社になるべきです」。2023年12月、NTTの社長である島田明氏は、本書の著者である堀越氏に対してこう述べたという。同社が置かれていた当時の状況と、島田氏が目指す“普通の会社”とはどのようなものなのか。

 NTTは、独占的に国内通信サービスを提供していた日本電信電話公社をルーツに持ち、1985年に民営化された。そんな同社の独自性を際立たせる要素の1つが、民営化にともない制定された「NTT法」(日本電信電話株式会社等に関する法律)である。

 NTT法は、電話サービスの全国への提供や、様々な研究の推進および成果の普及といった責務を同社に課すものだ。そのほか、同社の株式の3分の1以上を政府が保有するといった規定もあり、堀越氏はNTT法を「公社時代に担っていた通信サービスの公共的な役割を、民営化後も担わせるための法律」と捉えている。

 このような「民間企業でありながら公共性を保たなければいけない」という特殊な立場にいる同社にとっては、多くの企業が当たり前のように行える「経営陣の意思決定に基づき取締役を選任・解任し、企業として成長する」ことが困難だった。

 この状況を打破すべく、島田氏はNTTを“普通の会社”にしたいという、いわば「攻め」の意思表示をしたのだ。

米巨大テック企業の襲来に“内向き志向”は太刀打ちできず

 同社が攻めの姿勢に転じたきっかけの1つに、「米巨大テック企業の襲来」がある。1989年までは情報通信産業のトップとして世界首位に君臨していた同社だが、2000年代半ば以降、GAFAをはじめとした米国のテック企業がITサービスの領域で日本を席巻していったことで、市場の多くを奪われてしまった。

 同社が市場競争を勝ち抜けなかった原因として、堀越氏は「NTTの内向き志向」を挙げる。同氏が2004年に記者として取材を行って以来、NTTは約20年間、現状維持に力を注ぎ、政府による規制強化を免れるためにわざと不振を装う不思議な会社だったという。

 同社は、多額の利益を上げれば「儲けすぎ」と批判され、シェアが拡大すれば総務省から規制がかかるといった状況に立たされていた。それゆえに、どんなに高い営業利益を上げていてもそれ以上の成長を求めない「守り」の経営を選択せざるを得なかったのだ。

 この問題を打開すべく、新規事業拡大やグローバル化、人事制度の改革といった経営改革を矢継ぎ早に進めているのが、今のNTTである。そして、経営改革における攻めの最たるものが、「NTT法の見直し」だ。

 2023年6月、自民党の特命委員会は同法のあり方について速やかに検討すべきという提言をまとめた。これにより、政府が保有するNTT株をすべて売却する「完全民営化」の選択肢を含め、今後についての議論が始まった。

 その際、同社は「NTT法は結果的にいらなくなる」という論陣を張ったという。同法の役割はおおむね完遂したと指摘し、時代遅れな項目の撤廃や他の法律への統合を求めたのだ。この、自らの存在意義そのものに関わる同法について見直し求めるという行動を、堀越氏は「NTTの叛乱」と表現している。

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世界に立ち向かう「IOWN構想」の裏側

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奥谷 笑子(編集部)(オクヤ エコ)

株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部

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