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週刊DBオンライン 谷川耕一

あのソフトバンクのNo.1の裏にはビッグデータを分析したインテリジェンスがあった


ビッグデータの活用、もう聞き飽きるくらい耳にしている。とはいえ、本当に活用し成果を上げている話はまだまだ多くない。そんな中、うちはビッグデータを活用し「No.1になった」という話をしたのが、ご存じソフトバンク株式会社の代表取締役社長 孫 正義氏。そう、ここ最近、頻繁にTV CMで流れている「つながりやすさNo.1へ」というあれだ。

ソフトバンクは頭を使っているからNo.1

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「対策はピンポイントで」と語る孫さん

 このNo.1のためにソフトバンクは、まずはビッグデータの収集を行った。国内携帯キャリア3社、ドコモ、au、ソフトバンクのスマートフォンユーザーが、実際にネットにアクセスした通信ログを収集するアプリケーションを配布。これで、ユーザーが移動するたびに通信状況がどう変化したかのログを自動的にクラウドに収集。さらに、時間、地図情報、ビルなどの建物の位置情報、その場所の店舗情報、さらにはユーザーのクレーム情報などを合わせる。そのデータ量は、月間で1.9億件あまりに。

 そして、データすべてを分析し、つながりをよくするために次に電波を送信する「鉄塔をどこに作ればいいかの判断に使っています。より少ない設備投資で、より多くのことを実現する。そのためにデータを活用しています」と、先日のOracle CloudWorldの基調講演のステージで孫さんは明らかにした。これを着実に続けた結果、スマートフォンのパケット接続率の全国・週間平均で、ドコモが96.2%、auが95.5%、そしてソフトバンクが96.7%という結果になったわけだ。

 auがiPhoneを発売した際、つながりやすさではauが上だとさんざん宣伝された。2013年2月には、iPhoneのつながりやすさではauを抜いている。「去年、ものすごく悔しい思いをしました。それがいまでは、全国的に見てもKDDIに勝つことができました。都市部でも、住宅地でも勝っています。山間部は、いまはドコモと同じくらい。iPhoneは、山間部でもKDDIに勝っています」と孫さん。これらをさらに強化するためにも、どこに基地局を作ったらいいかを、しっかりと考えているのがソフトバンクだと説明する。

 LTEのつながりやすさにも、孫さんは自信を見せる。auと同じ機種であるiPhoneがつながりやすいのは、端末差がないので本当に電波の環境がよくなった証し。「これは、思い込みではなくビッグデータを解析してわかったことです」。ソフトバンクでは、場所だけでなく時間帯別の接続率も分析している。朝の通勤時間帯は、ドコモに接続率で負けている駅がある。それはどこかを解析している。ランドマーク、コンビニエンスストア、大学なども分析対象。このような場所、時間別の解析を行い、その結果を反映してつながりやすくなればユーザーのソフトバンクへの印象も大きく変わる。

 「ピンポイントで対策を打たないとダメです。ただ闇雲に設備投資するのではなく、よりインテリジェンスを使って行う必要があります。」(孫さん)

 さらにソフトバンクでは、Twitterのつぶやきを解析している。ソフトバンクに関連するポジティブ、ネガティブのつぶやきをすべて解析し、ポジティブなつぶやきの比率が5割超えるのはいつか、ネガティブはどうか。「これらを毎日見て、顧客の満足度を測っています。これは、いままで秘密にしていたことです。これらの分析は、Oracleのビッグデータシステムを使っています」とのこと。

 もう1つ行っているのが、Yahoo! Japanでの行動ターゲティング。Yahoo! Japanには、検索結果や購買記録、アクセスログなど極めて膨大なデータがある。そしていま、広告の表示、閲覧など月間500億件もの行動履歴を解析し始めているのだとのこと。

 実際に、行動ターゲティングでの広告のキャンペーンを、ソフトバンクでは既に行っている。

 「たとえば、ドコモのGalaxyを持っている10代の女性にピンポイントにソフトバンクへの乗り換えキャンペーン広告を出す。他は、こんなことはやっていません。携帯電話の純増数No.1を獲とっているのは、このように頭を使っているからです。宣伝を打ち面白おかしくやっているからだけではありません。既にソフトバンクのユーザーに広告を打ってもしょうがありません。少ない予算で最大の効果を出す。これをビッグデータの解析でやっているのです。実際、この方法で電子クーポンを提供し、目標の2.5倍もの集客をした例もあります。」(孫さん)

 ソフトバンクのビッグデータ活用では、Oracleの製品を使っている。Oracleは最大のパートナーであり、同士でもあると孫さんは言う。「クラウドを人類最大の資産にしたい、そしてそれによる情報革命で人々を幸せにする」こういう強い思い、目的があるからこそ、ビッグデータ活用が効果を発揮するのだろう。ビッグデータでとにかく何かをしてみたい、そういうあいまいな考えではビッグデータ活用で効果を発揮するのは難しそうだ。

選挙に勝つのもビッグデータを活用できる候補者だ

 ビッグデータを活用すべき話題をもう1つ。インターネットを使った選挙運動を可能にする、公職選挙法改正案が4月12日に衆議院で可決。月内にも法案は成立する見込みであり、この夏の参院選ではfacebookやTwitter利用した選挙運動が行われることとなりそうだ。もともとインターネットでの選挙運動は、「文書図画を無制限に配ること」を禁止していることに該当するので、公職選挙法に違反するとされてきた。そのため、選挙期間中は一切候補者などがTwitterやブログで発言することができなかったわけだ。今回の改正案では、これを一部解禁することになる。

 利用できるようになるのはWebサイトと電子メールで、それぞれにルールが多少違うことになるようだ。このネットの利用で気にかけているのは、どうやらなりすましの防止。そのため、常にネット上の発言者が誰なのかが、明らかになるようにすることが求められる。

 まだ明確なガイドラインが出ているわけではないのでなんとも言えないところもあるが、ちょっと気になる点も報道されている。それがメール利用の部分。一般有権者はメールを使った選挙運動ができないので、ガイドライン案にはメールを受け取った有権者は「メールを転送することはできない」と明記されているらしい。この場合の転送というのは、メーラーの転送機能を使ったらダメなのか。引用してコメントを付加した場合はどうなのか、などなど実際の運用となると、成否の判断が難しい混乱した状況もたくさん出てきそうだ。とはいえ、ルールに則れば選挙運動ができるようになるのは、日本も一歩前進となりそうだ。

 しかしながら、ネットを使って選挙運動ができるだけでは、情報発信媒体が紙から替わっただけに過ぎない。ネットを活用した選挙の本質はそんなところにはないはずだ。ネット上での選挙に関するやりとりから生まれるビッグデータを分析し、いかにして選挙に勝つかがなければ意味はない。何らか発言なり政策なりをfacebookやTwitterで発信する。その結果、誰が、いつ、どこで、そのメッセージにどう反応したのか。その反応は、期待した結果となっているのか。

 もし期待した結果になっていなければ、いったいどうすればいいのか。もう一度、ターゲティング広告で同じメッセージを発信するのか。いや、むしろ、メッセージの届いていない地域に赴き、直接有権者に演説を行ったほうがいいのか。先の孫さんの発言ではないけれど、無闇に次の行動をしても無駄となる。効果のあるところにピンポイントで施策を打たなければならない。そのためには当然ながらビッグデータを細かく分析することが不可欠に。

 実際、米国の大統領選挙ではビッグデータを分析して、たとえば40代、50代の白人男性で車はSUVを所有し、さらに家に持っているものが何かによって民主党支持か共和党支持かを判断、またウオーキング・デッドというゾンビが出てくるTV番組にCMを打つのが効果的だという分析結果を導き出し、実際に広告を打って効果を上げたという例もあるそうだ。つまり、これくらいピンポイントでの施策を行えるかが、今後の選挙戦の鍵になるはずだ。

 ネット選挙が解禁される、さてfacebookやTwitterをどう使おうか。そう考えているだけでは、選挙に勝つことは難しい。その先の、ネットから収集できるビッグデータを分析し、ピンポイントの選挙運動をどう展開して行けばいいのか。それを考え、実際の行動にどれだけ移せるのかが重要に。そのための先進的なブレイン・メンバーを揃えられる候補者が、これからは選挙戦を有利に戦うようになるのでは。というか、そうなって欲しいなとちょっと思うところだ。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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