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第4回 ERPシステム導入でベンダー選定を失敗する理由

  2008/05/20 12:00

ベンダー提案、見た目で選んで大失敗

 あるユーザー企業のケースを紹介したいと思います。

 このユーザー企業は老朽化した基幹システムのリプレースを目的として、ERP導入を決定しました。ERP導入のやり方として、まず対象とするERPパッケージを選んで、その後にERP導入ベンダーを選定するということにしました。ERPパッケージ選定後、そのERPパッケージベンダーが推奨する複数社を紹介してもらい、ひとつの導入ベンダーを選定しました。

 この導入ベンダーを選定した理由は、提案活動において営業担当者の対応が良く欲しい情報を迅速に入手したり、機能面での疑問に対してもERPパッケージベンダーに掛け合ってデモを手配したり、価格面の調整にもきめ細かく対応してくれたのが最大の要因でした。提案書の内容も良くできていてわかりやすく、社内調整もこの提案書を少し手直しするだけで十分でした。デモやプレゼンも営業担当者が司会進行役となって、エンドユーザーや部門責任者の疑問に的確な回答を提供してくれました。難しい要件に対しても「このような対処で実現出来る」「システムなので追加開発すればまず対応できる」という前向きな姿勢で好感が持てました。価格条件も良くパッケージベンダーからの紹介ということも考慮して、この導入ベンダーに決めました。

 雲行きが怪しくなってきたのはプロジェクトも半ばを過ぎ、システム開発が佳境に入った頃です。当初予定していた期日に追加開発していた機能が完成せず、納品されたプログラムをテストすると品質が悪く改修が必要なものが頻発しました。営業担当者も可能な限りプロジェクト現場に立ち会ってくれましたが、システム開発の問題が中心であるため営業サイドでは具体的な解決策を提示できませんでした。見抜けなかったのは、営業力と技術力が実際には釣り合っていなかったことです。

 このケースでは、状況の改善が見られなかったため一旦プロジェクトを凍結。そして、方針を大きく変更してERP導入は必要最低限に絞り込み、その作業も原則情報システム部門を中心に行うことにしました。導入作業も自社要員で行うためにメンバーを専任化して全員にERPパッケージベンダーの研修を受講させ、製品の基本知識を習得しました。再度ERP導入計画を作成しましたが、その内容は当初の計画からすると最低限の機能に絞り込んだものでした。それだけにERP本来の標準機能で十分に実現可能とERPパッケージベンダー側からも太鼓判を押されました。

 このユーザー企業が得た教訓は

 「パッケージを利用したシステム構築のポイントは腕の良い導入ベンダーを選ぶためには自社でERPパッケージを十分理解する必要がある」

 というあたりまえのことでした。こうした紆余曲折があったこともありERPシステムの稼動は大幅に遅れましたが、無事稼動に成功しました。


著者プロフィール

  • 鍋野 敬一郎(ナベノ ケイイチロウ)

    米国の大手総合化学会社デュポンの日本法人に約10年勤務した後、ERP最大手のSAPジャパンへ転職。マーケティング、広報、コンサルタントを経て中堅市場の立ち上げを行う。2005年に独立し、現在はERP研究推進フォーラムで研修講師を務めるなど、おもに業務アプリケーションに関わるビジネスに従事している。

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