経営課題上位3項目は「営業力の強化」「ビジネスモデルの変革」「新規ビジネスの創出」
経営課題の優先順位上位3項目は、昨年の調査(2017年3月実施)と同じ「営業力の強化」「ビジネスモデルの変革」「新規ビジネスの創出」だった。成熟した国内市場においてデジタルトランスフォーメーション(DX)による変革を目指す必要があるとの認識が経営層、業務部門、情報システム部門(IT部門)において共有されている。
昨年の調査結果との比較では、上位3項目のうち「新規ビジネスの創出」の比率が低下する一方で、「営業力の強化」「ビジネスモデルの変革」が上昇した(参考資料1)。まず、既存事業を強化した上で新規事業の創出に注力したいとする意向が調査結果に表れたと考えられる。
上位3項目の経営課題の解決手段として活用している、あるいは活用したいITテクノロジーとして、「IoT(Internet of Things)」「機械学習/認知システム/AI」がそれぞれ1割前後を占めた。その一方で、DXへの取り組みに新たなテクノロジーを活用する上での阻害要因として「デジタルビジネスのアイデアを持つ人材が不足している」を挙げる回答者が突出して多い結果となった。
この阻害要因が新規ビジネスの創出への取り組みに対する意欲を低下させた可能性がある。IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ グループマネージャーの福冨里志氏は、「ユーザー企業が新たなITテクノロジーをまずは既存事業の強化に生かし、成功体験を通してノウハウを蓄積した上で、新規ビジネスの創出に取り組むといった道筋を描けるように、ITサプライヤーは顧客とのエンゲージメントを深めていく必要があろう」と述べている。
次期更新ではオンプレミスが55.0%、クラウドサービスが43.8%で更新
また、ミッションクリティカルな基幹業務システムへの投資意向について、「オンプレミスか、クラウドサービスか」 「オープンシステムか、プロプライエタリーシステムか」といった視点から次期更新時の対応について質問した。前者では、最もミッションクリティカル度が高い基幹業務システムを回答者の83.5%が現在オンプレミスで運用しており、クラウドサービスは15.6%に留まった(参考資料2)。
しかし、次期更新ではオンプレミスが55.0%、クラウドサービスが43.8%で更新という結果だった。さらに、現在オンプレミスで採用しているサーバーは、オープンシステムが回答者の44.2%、プロプライエタリーシステムが39.3%だった。
次期更新では、共に低下してオープンシステムが回答者の30.4%、プロプライエタリーシステムが24.6%だった。つまり、ITサプライヤーにとっては、オープンシステムであれプロプライエタリーシステムであれ、基幹業務システムのオンプレミスの顧客ベースが3~4割程度減少することを示唆している。
ミッションクリティカルな基幹業務システムにおいても、クラウド化が進行するとの調査結果だったが、「次期更新でクラウドサービスを採用する」とした43.8%のうち、3割強の回答者(14.4%)は「メインフレーム/オフコンに対応したクラウドサービス」や「サーバー/ストレージベンダーのクラウドサービス」を採用するとしている。
つまり、ITサプライヤー、特にサーバーベンダーやストレージベンダーは、オンプレミスでの需要減退を自社が提供するクラウドサービスで補えるかが、インフラストラクチャビジネスの維持に極めて重要になると考えられる。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「2018年 国内企業のエンタープライズインフラのシステムタイプ別支出トレンド分析:SoR、SoE、SoIの支出パターンの変化を探る」にその詳細が報告されている。レポートでは、DXに取り組むに当たり、ITバイヤーが抱えている阻害要因について、経営課題の共有およびテクノロジーの活用に関する認識、そしてDX関連テクノロジーの活用実態の分析を通して考察している。
また、インフラストラクチャのシステムタイプといった視点から支出パターンの変化について議論している。具体的には、SoR(Systems of Record)としての基幹業務システムと、SoE(Systems of Engagement)やSoI(Systems of Insight)で重要度が高いと考えられるAI(Artificial Intelligence)やビッグデータの活用に着目した上で、インフラストラクチャへの投資意向などについて分析している。