IaaS/PaaS市場の2017年度の売上金額は3,575億5,000万円、前年度比34.1%増の高成長となった。市場を構成するほとんどのベンダーが売上金額を前年度から2桁増を示し、なかでも市場への影響力が大きい上位ベンダーが順調に売上げを伸ばしたことが要因となっている。
昨今、ハイブリッドクラウド環境を志向する企業や、マルチクラウド環境を導入する企業が増加している。各ベンダーはクラウドサービスを重点商材として販売に注力しており、ユーザー企業のリソース増強による売上げ増を下支えに、IaaS市場は今後も拡大すると見ている。
また、クラウドを活用し、新規ビジネスを創出して新たな市場を開拓しようとする企業が増加している。デジタルイノベーションを推進するシステムを迅速かつ低リスクで構築することを目的として、PaaSに対する期待が高まっている。
提供サービスの種類や数、品質などで差別化が図りやすいPaaSの販売を強化するベンダーが多く、それに伴ってPaaSを導入する企業も増加傾向にあり、今後こうした流れが拡大していくと見ている。
これらのことから、IaaSとPaaSを合算した市場のCAGR(2017~2022年度)は23.0%、なかでもPaaSは2022年度には2017年度の市場規模の4倍に拡大すると予測している。
ITRのプリンシパル・アナリストである甲元宏明氏は、次のようにコメントしている。
――「クラウドファースト」を宣言する国内企業は珍しくなく、デジタルトランスフォーメーションやSoEの必要性が高まり、保守的と言われた業種においてもクラウドを積極的に活用する企業が増えています。オンプレミス・システムを全てパブリッククラウドに移行する「クラウドオンリー」を目指す企業も登場しています。
――「クラウドをどのシステムに適用するのか」といった時代は終わり、「クラウドをどのようにして活用しビジネス成果を獲得するか」という時代になったといえます。国内パブリッククラウド市場が今後も成長を続けることは間違いありません。国内クラウドベンダーは、さらなる売上拡大に向けてグローバルで大きなシェアを持つAWSとMicrosoft Azureとの差別化が急務となるでしょう。
今回の発表は、ITRが発行する市場調査レポート「ITR Market View:クラウド・コンピューティング市場2019」に詳細が掲載されている。レポートには、IaaS/PaaS市場およびDaaS市場の国内全32ベンダーへの調査に基づいた2016~2017年度売上げ実績および2022年度までの売上げ予測が掲載されている。