デジタル・ビジネス・イニシアティブが進んでいない日本企業
世界の企業は、デジタル・ビジネスへの取り組みの「開始」段階から「拡大」段階へと移行しつつあるが、日本企業の4分の3以上は、デジタル化のプロセスに着手する「開始」段階を完了していないという。 また、31%は「デジタル・イニシアティブなし」および、デジタル・イニシアティブの「願望/目標」のみがあると回答している。日本企業は、世界の企業の動きに追随できておらず、デジタル・ビジネスへの取り組みにおいて、世界との差が拡大していくという。
ガートナーのアナリストでバイスプレジデントの藤原恒夫氏は、次のように述べている。
「サーベイの結果、日本企業のCIOが世界の企業に後れを取っている主な要因は、『変化に対するリーダーシップ/計画/実行力が弱い』こと、および『IT/ビジネス・リソースの人数が不十分』であることが判明しています。また、日本の回答者の30%は、レガシー・システムの保守で身動きが取れておらず、デジタル・ビジネスへの変化に着手することに注力していない、と回答しています」。
日本企業にとっての障壁は多岐にわたる
「CIOとして目標を達成する上で最大の障壁となるのは何ですか」という複数回答可の設問において、特に世界のCIOと比較して顕著な差が表れたのは、「レガシー・システムの保守」だった。
それ以外の回答でも、日本企業と世界の企業のCIOでは、明らかな違いが出ている。例えば、日本のCIOがリソースに関する障壁の項目の中で一番に挙げたのは「IT/ビジネス・リソースの人数が不十分」であり、67%に達しているが、これは世界の先進企業では38%であり、日本の数値がかなり高いことが分かる。
組織文化に関する障壁の項目の中では、日本のCIOは特に「チェンジ・リーダーシップ/計画/実行力が弱い」と回答する割合が32%と高く、世界のCIOと比べてデジタル・ビジネスへの移行を適切に進める上で求められるチェンジ・リーダーシップの欠如に直面していることが浮き彫りになった。
リーダーシップの欠如以外にも見られる特徴的な組織文化の障壁とは
デジタル・ビジネス・トランスフォーメーションを追求する日本企業にとって、リーダーシップの弱さ以外でも組織文化が大きな障壁となっており、そのように認識しているCIOの割合が海外の先進企業と比べて高いことが判明した。
「チェンジ・リーダーシップの弱さ」、そして「IT部門とビジネス部門間の関係が効果的でない」「組織全体でイノベーションが進んでいない」という3つの項目を障壁として回答した日本企業のCIOの割合は、先進企業のみならず世界の平均的企業と比較しても高くなっており、日本企業のCIOがこれらをデジタル・イニシアティブの前進を阻む最も一般的な文化的障壁であると捉えていることがうかがえる。
AIの次の「ゲーム・チェンジャー」テクノロジは、世界ではデータ分析、日本ではIoT
CIOとITリーダーに対して、「どのテクノロジが『ゲーム・チェンジャー(今までのやり方を根底から変えてしまうようなもの)』になると思いますか」と質問したところ、日本企業と世界の企業のどちらも、AIが他を大きく引き離してトップとなった。
一方、その次に挙げられたテクノロジは、世界では、データ/アナリティクス、そしてクラウドと続いたが、日本企業では、IoT、そしてブロックチェーンが続く結果となった。日本企業がデータ/アナリティクスを回答した割合は、世界の企業に比べて非常に低い割合となっている。
「ゲーム・チェンジャー」テクノロジとして日本企業ならびに世界の企業からトップに挙げられたAIだが、AIへの投資に関しては違いが見られた。日本でのAIは、人材不足を補う自動化の手段として捉えられることが多く、一方、海外の企業にとってのAI投資は、データ・ドリブンなビジネスへの布石となっている。
なお、ガートナーは、11月12~14日に「Gartner IT Symposium/Xpo」をグランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール(東京都港区)で開催する。CIOアジェンダ・サーベイに関連した内容は、最新の調査結果も踏まえて藤原氏による講演が予定されている。
日本では、上記以外にも東京で開催する以下のコンファレンスにおいて、CIOやITリーダー向けに最新のトレンドが解説されるという。
- 8月5日~7日:「セキュリティ&リスク・マネジメント サミット」
- 8月30日:「ITソーシング、プロキュアメント、ベンダー&アセット・マネジメント サミット」
【ガートナーCIOアジェンダ・サーベイ】
2019年のガートナーCIOアジェンダ・サーベイは、2018年4月17日~6月22日に実施された。回答者は、ガートナーエグゼクティブプログラムのメンバー、およびメンバー以外のITリーダーで、回答者の合計は3,102人、そのうち日本からの回答者数は134人だった。回答者の所属企業は、世界89か国の主要産業にわたる。