2018年度はシステム開発、特に大企業を中心に新規開発へのIT支出が拡大
2018年度の国内企業のIT予算は全体的に増加傾向だった。特に従業員数1,000人以上の大企業では、前年度と比較してIT予算が「増加」したとの回答が合わせて39.5%となり、「減少」だけでなく「変わらない」よりも高い回答率を示した。
さらに、2019年度のIT予算計画ではその傾向がますます強まり、大企業では「増加」の回答は合わせて46.5%に達しった。大企業を中心に、IT投資の拡大傾向が続いていることが分かる。
2018年度のIT支出の内訳を詳しく分析したところ、従業員規模が大きくなるほどシステムの開発に関わる支出が多くなる傾向が見られた。
その中でも、「既存システムの改修/改善」に対する支出の割合は、従業員規模に関わらずほぼ同じであるのに対し、「新規開発」に対する支出の割合は従業員規模に比例して上昇し、大企業においては29.5%を示して、全支出項目の中で最大の比率を占めている。大企業を中心に、既存システムの改修/改善だけでなく、新しいシステムの開発に積極的な投資が行われていたことを示している。
IT部門の課題として、セキュリティに次いでIT要員不足を挙げる回答が多い
その一方、IT部門の課題として全体の回答率トップになったのは「セキュリティ/リスク管理の強化」だったが、それに次いで「IT要員不足の解消」を挙げる回答も多く、従業員数100人未満の中小企業の中では1位、全体でも2位の回答率を示している。
新規開発への取り組みが活発化し、セキュリティなどの領域で高度な専門家の需要も高まっているのに加えて、システム開発やITインフラ構築の内製化を強化する傾向も見られることから、慢性化している人材不足傾向がさらに深刻化していることが窺える。
拡大するIT投資意欲に反して、深刻化が進むIT人材不足はIT部門の人員の負担を増大すると共に、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に対する大きな阻害要因ともなり得る。
そして、業務部門による独自のIT投資も拡大していることを背景に、同様の課題が業務部門でも発生している可能性があると考えられる。
IDC Japan ITサービスのシニアマーケットアナリストである吉井誠一郎氏は、「国内サービスベンダーには、企業のIT部門と業務部門の双方をテクノロジーによってサポートし、その負担を軽減させつつ、企業のDXジャーニーを包括的に支援する役割が求められる」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行した「2019年 国内CIO調査:ITサービス/アウトソーシング利用実態」にその詳細が報告されている。レポートでは、国内企業のIT部門の課題、IT予算増減状況、業務部門独自IT支出の現状などについての調査結果をもとに、企業のIT投資動向、ITサービスベンダー選択基準などを明らかにし、今後求められるITサービスベンダーの対応について分析している。