広島大学、Meiji Seika ファルマ、マクニカが、広島大学が展開するうつ病の客観的診断・治療法や感性の脳科学研究成果を活用した「うつ病予防のデジタルトランスフォーメーション(DX)と社会実装」を目指し、産学連携での共同研究契約を締結したことを発表した。
長引くコロナ禍に伴う外出自粛などの行動制限や経済不安による、うつ病や自殺者の再急増への対策が喫緊の課題となる状況のなか、広島大学脳・こころ・感性科学研究センター(以下BMKセンター)の山脇成人特任教授らの研究グループでは、これまでうつ病患者を対象とした研究をおこなってきた。
これまで発表された感性脳科学研究成果としては、(1)機能的MRI(fMRI)を用いた脳機能画像、血液バイオマーカー、臨床情報などの多次元データのAI解析による、うつ病の客観的診断法や抗うつ薬の効果予測法の開発、(2)患者が自身の脳活動を制御してうつ症状を改善するニューロフィードバック治療法の開発、健常者を対象とした(3)脳波を用いた感性の可視化技術に基づくワクワク感メーター法による、ネガティブ(憂うつ)からポジティブ(ワクワク)の解明など。
感染症領域の製品を提供するMeiji Seika ファルマは、中枢神経系領域においても、1989年の抗不安薬発売以降、現在治療の主流となっている新規抗うつ薬(SSRI)を本邦で初めて発売し、さらに新薬メーカーとして質の高いジェネリック医薬品の供給を通じて、不安・うつ領域において30年以上の経験を積み上げてきた。こうして培ったノウハウを活用し、次世代の精神科医療に貢献したいと考え、本共同研究に参画するに至ったという。
また、半導体、電子デバイス、ネットワーク、サイバーセキュリティを提供するマクニカも、医療IoT機器の取り扱い及びデジタルプラットフォームを活用した医療業界のDX化を推進することにより、健康・医療・介護にまつわる社会課題を解決を目指している。
今回の研究責任者であるBMKセンターの山脇成人特任教授らの研究成果を基に、Meiji Seika ファルマが基礎・臨床研究支援と市場調査を、マクニカが医療IoT機器の探索・調達とクラウド・AI・ソフトウェア開発支援を担うことにより、両社で事業化を目指すとともに、三者にてこれからの時代に求められる新たなうつ病予防法の開発とその社会実装を目的として共同研究を行う。
【共同研究概要】
(1)脳波およびスマートウオッチ、スマートフォンなどのウエアラブル計測デバイスにより取得する生体情報を用いた、脳科学に基づくストレス可視化技術の開発
(2)IoTやクラウド情報通信技術を用いた脳・生体情報データのプラットフォーム構築と、AIを用いた個人の特性に応じたストレス状況のリアルタイム可視化技術の開発
(3)ストレス可視化技術を用いた、自分のストレス状況を自らコントロールする新たなうつ病予防法の開発