野村総合研究所(以下、NRI)は、9月に実施した、国内企業におけるIT活用の実態を把握するためのアンケート調査の結果を公開した。同調査は大手企業のCIO(最高情報責任者)またはそれに準じる役職者を対象に実施し、466社から回答を得たという。NRIは2003年から毎年調査を行っており、今回で20回目。
調査概要
- 調査名:ユーザ企業のIT活用実態調査 2022年
- 調査目的:日本企業のIT活用状況に関する定点観測
- 実施時期:2022年9月
- 調査方法:郵送で調査協力依頼を送付、Webで回答を回収
- 調査対象:日本国内に本社を持つ、売上高上位企業約3,000社。CIOまたはIT担当役員、経営企画担当役員、IT部門長、経営企画部門長またはそれに準じる役職者
- 回答企業数:466(回収率約15.5%)
調査では、これまでも行ってきたIT投資などの定点観測項目のほかに、企業のデジタル化への取り組み年数や、成果の獲得状況についての項目を新たに追加した。調査結果からは、デジタル化への取り組みを3年以上進めている国内企業において、定量的な成果が得られた企業が半数を超えることが明らかになったとしている。デジタル化への投資を意味のある成果につなげるためには、中長期の視点を持って腰を据えて取り組む必要があるという。
主な調査結果は次のとおり。
2023年度は49%の企業がIT投資の増加を予測
2022年度の自社のIT投資が前年度に比べて増加したと回答した企業は52.9%で、2021年度の調査よりも7.7ポイント増加。一方、減少したと回答した企業は6.1%で、IT投資の増加傾向が顕著となった(図1)。
2023年度のIT投資については、2022年度よりも増加すると予測した企業が49.0%とほぼ半数に上り、2021年度の調査(50.5%が増加を予測)に近い結果だったとしている。
デジタル化推進で得られている効果は業務の改善や効率化
デジタル化の推進による効果がどのような側面で得られているかを複数選択方式でたずねたところ、「業務プロセスの改善、生産性向上」と「業務に関わる人数や労働時間の削減」 をあげた企業がそれぞれ81.5%、77.4%だったという(図2)。
一方で、「顧客数や顧客単価、顧客満足度などの向上」や「既存事業における商品・サービスの高度化」をあげた企業はそれぞれ35.0%、34.4%。「新規事業や新サービスの創出」 や「SDGs、地域活性化などの社会課題解決への貢献」をあげた企業は、それぞれ28.8%、17.1%にとどまり、事業や社会を変革していく観点での価値創出は、各企業の今後の取り組みに委ねられているとした。
最大の課題はデジタル化を担う人材の不足
デジタル化の推進から効果を得る上で各社が直面している課題をたずねたところ、「デジタル化を担う人材の不足」をあげた企業が最も多く、80.5%に達した(図3、複数回答)。これに対して、課題を解消するために行っている取り組みとして、「人材のスキル向上や専門人材の採用」をあげた企業は48.2%にとどまっている(同じく図3、複数回答)。人材の不足は課題として大きく認識されているものの、解消のための具体的な取り組みはまだ途上にあるという。
また、「旧来の企業文化や風土」や「デジタル戦略の欠如」も、多くの企業が、課題であると認識(それぞれ44.2%、39.6%)。ただし、デジタル戦略については、その立案と実行に取り組んでいる企業の割合(43.9%)が、課題であると回答した企業の割合を上回っており、取り組みの進展によって課題の解消が進んでいることがうかがえるとした。
デジタル化への取り組み年数が長い企業ほど成果を獲得
調査ではデジタル化の取り組みを、「顧客に対する活動のデジタル化」、「業務プロセスのデジタル化」、「デジタル化による事業やビジネスモデルの変革」の3つの領域に分け、取り組みの年数をたずねた。その結果、「業務プロセスのデジタル化」では5年以上の取り組みを行っている企業の割合が39.3%であるのに対し、「顧客に対する活動のデジタル化」と「デジタル化による事業やビジネスモデルの変革」ではそれぞれ16.3%、10.7%にとどまった(図4)。また、「顧客に対する活動のデジタル化」と「デジタル化による事業やビジネスモデルの変革」では、「取り組んでいない」と回答した企業の割合もそれぞれ31.3%、36.2%にのぼったとしている。
さらに本調査では、3つの領域のそれぞれについて「取り組んでいない」と回答した企業以外を対象として、投資から財務上の成果や、他の定量的な成果を得ているかをたずねた。
「財務上の成果(コストの削減、収益の増加など)が得られている」もしくは「他の定量的な成果(顧客獲得数、顧客満足度など)は得られている」と回答した企業の割合(いずれかの選択肢を選んだ割合の合計)は、「顧客に対する活動のデジタル化」の領域では、取り組み期間が3年以上5年未満の回答企業で56.7%、5年以上の回答企業で69.2%(図5)。
同様に、財務上の成果、もしくは他の定量的な成果が得られていると回答した企業の割合は、「業務プロセスのデジタル化」の領域では、取り組み期間が3年以上5年未満の回答企業で63.0%、5年以上の回答企業で82.7%だった。
「デジタル化による事業やビジネスモデルの変革」の領域では、取り組み期間が3年以上5年未満の回答企業で40.0%、取り組み期間が5年以上の企業で65.7%。どの領域においても、取り組みの期間が長いほど 「財務上の成果(コストの削減、収益の増加など)が得られている」 と回答した企業の割合が高いという傾向が見られるという。
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