ガートナージャパン(以下、Gartner)は、デジタルを前提としたワークプレースにおける人材投資を企業戦略上の重要項目と位置付け、これに不可欠な従業員のITリテラシーの向上に向けて、企業が取り組むべき4つのアクションを発表した。
同社ディレクターアナリストの針生恵理氏は、次のように述べている。
「従業員の働き方や働く環境を考え、人が集まる魅力的な企業となることは不可欠であり、企業におけるデジタルワークプレース変革への取り組みの重要性が増しています。企業は、デジタルワークプレースをオフィス中心ではなく人間中心に考えていくとともに、デジタル・デクステリティの向上を目指し、従業員のITリテラシー向上計画の策定に早期に取り組む必要があります」
企業が取り組むべき4つのアクションは以下のとおり。
1. 従業員のITリテラシーを向上させる機会を継続的に設ける
ITリテラシーの向上とは、ITスキルの習得だけでなく、それを使いこなす能力の向上も意味し、セキュリティやデータ活用など、より高いスキルも含まれるとのこと。企業は、研修などの集合型トレーニングの実施、各ビジネス部門にITスキルを浸透させるための実践コミュニティ(CoP)の設置と推進、ワークショップの実施、セルフトレーニングの機会を増やすなど、複数のアプローチを組み合わせて推進することが重要だという。
Gartnerは、2026年までに、企業の60%において、デジタルワークプレースを推進するCoPがビジネス部門に設置されるとみている。
2. ITスキルをビジネスと連動させ、目的に合わせて体系化する
どのスキルをどの従業員に身に付けさせるかが定まらず、漠然としたものになってしまっているケースが散見されるとのこと。身に付けるべきスキルを内容によって、1. コアスキル(全社員が身に付けておくべきスキル)、2. ロール別スキル(職務にひも付くもので、現在持つべき、および将来に向けて持つべきスキル)、3. 差別化スキル(将来の企業競争力につながるスキル)の3つに分類し体系化するという。
3. スキルロードマップを定期的に見直し、短期間で学べるアジャイルな方法を取り入れる
必要となるスキルは変化するため、定期的なスキルロードマップの見直しと、継続的にスキルをアップデートさせるアジャイルな仕組みが必要だとした。たとえば、ビジネスニーズの変化に応じて、必要なスキルを定義し、仕事のフローに学習を組み込む、各役職への昇進タイミングで身に付けるべきスキルを定義し、キャリアロードマップとITスキルを連動させるなど、ビジネスに寄り添った教育体系を作り上げることが求められるとのこと。特に差別化スキルは、企業のDX推進とひも付けることで目的に沿ったスキルを定義できるとしている。
4. スキル向上の意義を周知する
スキルの獲得は、会社や組織のためだけではなく、自身のキャリアを向上させ、自身の価値を高める意味も持つとのこと。スキルを身に付けた人材は、条件のより良いところへ転職する可能性もあることから、企業は従業員に対し、ラーニングの手段を提供するだけでなく、「この会社にいると自分が成長できる、元気になれる、新しいスキルを獲得してビジネスで活躍できる」といった意識付けを行うことが最も重要だという。
針生氏は次のように述べている。
「ビジネス部門を含むすべての従業員は、デジタル・デクステリティを高め、自分の仕事を時代変化に合わせて変えていく必要性が増しています。一方、これまでのIT教育は必ずしもこの変化にマッチしたものとは言えず、獲得すべきスキルの再定義や獲得のための新たなアプローチが求められています。企業は、人材投資を戦略上の最重要項目と位置付け、従業員のITリテラシー向上、ビジネス部門側のITリーダーの創出に取り組む必要があります」
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