SAS Institute(以下、SAS)は、最新の不正行為に関する消費者調査を発表した。同調査によると、コロナ禍において頻発した詐欺行為は今もなお増加の一途をたどっており、不正行為に対する人々の不安はますます高まっていることが判明したとのこと。不正行為の蔓延によって消費者保護に関する企業の義務に対する期待値も変わり、セキュリティ強化のためには何らかの代償を払うことをいとわないことも明らかになっているという。
16ヵ国13,500人の消費者を対象に行った同調査「Faces of Fraud:Consumer Experiences With Fraud and What It Means for Businesses(不正行為の様相:消費者の被害状況と企業への影響)」は、世界的な不正行為の問題の深刻さを明らかにしている。
- 70%の消費者がこれまで少なくとも1度は何らかの不正による被害を経験したことがあると回答しており、10人中4人は、不正による被害に2回以上あったことがあると回答
- ほぼ半数(47%)は、2022年中にそれまでより多くの不正を経験したと回答
- 10人中9人近く(86%)が、以前よりも不正行為を警戒するようになったと回答
今回の調査で不正の手口として最も多く報告されたのが、銀行口座情報や個人データを入手しようとするもの。不正行為者が最初の接触に用いるコミュニケーションチャネルとして、携帯電話と電子メールの頻度が高くなっているという。
SASのリスク・不正対策およびコンプライアンス担当シニアバイスプレジデントであるスチュ・ブラッドリー(Stu Bradley)氏は、次のように述べている。
「不正行為者は巧みな手口で犯罪を成功させており、金融機関や保険会社、行政機関、小売、テレコミュニケーションなど、ターゲットを絞り込んだ特定の業界が、気が付かれないうちに犯罪行為のパイプ役にされています。今回の調査で、消費者の3分の2は不正行為があった場合、あるいはより優れた不正対策を提供するプロバイダーがあった場合、サービスプロバイダーを変更すると回答していることを考えると、何の対策も取らずにいることは非常に重大な結果につながる可能性があり、この点を見過ごすべきではありません」
進化する顧客の期待値へのギブ&テイク
消費者の意識の変化を見ると、強固な不正対策の重要性が改めて浮き彫りになっている。同調査では回答者の89%が、企業が不正対策にもっと力を入れるべきだと考えていることが明らかになったとのこと。ほとんどの顧客は、より強固な安全対策のためなら、多少の不便はいとわないと考えているとしている。
- 回答者の4分の3が、不正対策が強化できるのなら、トランザクションにおける遅延やチェックが増えても良いと回答
- 10人中8人が、決済や取引に顔認証や手のひら認証、網膜認証、音声認証などの生体認証をしたいと回答。半数以上(57%)は取引の際には決まったパスワードを記憶しておくよりも、生体認証のような固有の識別子を使用して認証を行うほうが良いと回答
- 10人中7人が、不正防止策強化を前提に、より多くの個人情報(ロケーション、行動など)をサービスプロバイダーと共有する意思があると回答
AIの持つ可能性:摩擦を最小限に抑えてセキュリティやカスタマーエクスペリエンス(顧客経験)を最大化
デジタルサービスの広がりを考えると、組織としては、迅速で低摩擦なカスタマーエクスペリエンスと、適切な規模の不正対策防御とのバランスを取らなければならないとのこと。デジタル取引にともなう不正リスクが高まっているにもかかわらず、消費者がこうしたデジタルサービスを好む傾向は拡大する一方だとしている。同調査でも回答者の86%が今後も引き続きデジタルサービスを利用すると予想しており、これまで同様のレベルで利用する(65%)、あるいはこれまで以上に利用する(21%)と回答している。
AIを活用した不正検知は、いずれにとってもベストな形を実現することができ、企業がより多くの不正行為を早い段階で発見できるようにし、リアルタイム不正検知と事前の防御戦略の両方について、効率と精度を高めることが可能。不正行為者が簡単にテストしてすり抜けることのできるルールとは違い、機械学習のアプリケーションは組織がリアルタイムで異常を判別し、急速に進化する脅威に対して常に先手を打つことができるという。
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