ラックは千葉銀行に対し、高齢者からキャッシュカードを騙し取る手口などの特殊詐欺における不正出金や、犯罪者が詐取した資金の受け皿として使用する不正口座への対策として、人工知能(AI)による不正取引検知ソリューション「AIゼロフラウド」を提供することで合意したと発表した。2023年11月からシステム開発・導入を進め、2024年に運用を開始する予定だという。
近年、特殊詐欺の手口は日々巧妙化しており、2022年の特殊詐欺による被害額は約370億円に達し、依然として高い水準であるとともに再び増加に転じている。また、インターネットバンキングの不正送金被害も2023年上半期時点で約30億円と過去最悪のペースで発生。これら特殊詐欺やインターネットバンキング不正送金の受け皿として犯罪者が使用する不正口座もここ数年で急激に増加しており、国内における金融犯罪は大きな脅威となっている。
千葉銀行では現在、特殊詐欺や不正口座への対策として、犯罪の疑いが強い取引を検知する不正取引検知の高度化に取り組んでいる。そこで犯罪者が行う取引の特徴などをもとに取引の不正リスクを分析・判定する仕組みにAIを活用するべく、ラックの金融犯罪対策センター(FC3:Financial Crime Control Center)が提供する不正取引検知ソリューション「AIゼロフラウド」において概念実証実験(PoC)を実施。その結果、特殊詐欺における不正取引、および不正口座の検知精度の高さを評価し、今回のシステム導入に至ったとしている。
従来の不正検知の一般的な仕組みでは、利用者の特定の動作を検知するルールが用いられている。具体的には、利用者の銀行口座へのアクセス情報や取引情報などのデータに対し、犯罪者の不正取引時における特定の条件に合致した場合に、犯罪の疑いがある取引として検知する。これに対してAIによる検知の仕組みは、銀行取引の特徴をAIに学習させ、取引行動をAIが分析して不正である疑いを検知するというもの。
ルールを用いる仕組みでは、人間が設定した特定の条件であるために検知した理由がわかりやすい一方、複雑な条件を設定することが難しいという特徴があるという。これに対してAIを用いる仕組みの場合、取引の特徴を学習したAIがよりきめ細かい観点で分析するため、近年巧妙化を続けている金融犯罪の手口に対して、高い精度での検知が可能とのことだ。
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