マイクロソフト ソリューション プロバイダーのアバナードは、2024年5月16日虎ノ門ヒルズフォーラムにて「アバナードBeyond AI フォーラム 2024」を開催した。最高AI責任者(CAIO)であるフローリン・ローター氏による基調講演では、企業におけるAI活用の現状と課題、そして今後の展望についての知見が披露された。
ローター氏は、世界中の顧客の状況を説明した上で、生成AIの取り組みにおける組織の現状を分析した。現在、クライアントの10%がまだ生成AIをテスト段階にあるのに対し、大半はアーリーアダプターやアーリーマジョリティに位置しているという。前者は何十ものユースケースを本番環境に投入しており、生成AIが生活の一部になっている。一方、後者は1〜3つのユースケースを本番環境で運用している段階だ。最も一般的なユースケースは、ナレッジマイニング、ソフトウェア開発ライフサイクル、チャットボット、顧客サービス、文書処理などである。また、多くの顧客がMicrosoft Copilotの使用を開始しているが、そうした先進企業は全体の10%ほどで、「これらの企業は、ビジネス、そして業界全体を変革しようとしています」とローター氏は述べ、ドイツの自動車メーカーや金属会社、医療分野での生成AI活用事例を紹介した。
AIファーストは人ファースト
ローター氏は、AIを成功させる鍵は人を第一に考えることだと強調した。「AIは生産性とコスト削減と自動化を推進する方法としてだけでなく、一人一人がより良いバージョンの自分自身になれるようにすること、キャリアをより速く進めること、繁栄することを考えるのです」と述べ、AIは従業員にとって有益であると信じてもらうことが重要だと説明した。
そのために、アバナードでは全従業員65,000人を対象に「AIスクール」を設立し、AIについての理解を深めるため、限界、倫理的問題、効率的なプロンプティングの方法を教えている。「プロンプティングは、インターネットの使い方やメールの書き方と同じくらい不可欠なコンピュータリテラシースキルだと私は信じています」とローター氏は述べた。
データプラットフォームの重要性
次に、ローター氏はデータ、データプラットフォーム、エンタープライズアーキテクチャの重要性について言及した。「優れたデータがなければ、コスト効率の良いAIを大規模に持つことはできません。AIの燃料はデータだと私は信じています」と述べ、データへの投資の重要性を訴えた。また、生成AIの設計パターンとして、RAG(検索連動生成)、プロンプトエンジニアリング、ファインチューニングの3つを紹介し、それぞれのコストと利益について説明した。そして、直前に公開されたChatGPT-4oなどに見られるマルチモーダリティやプラグインなど、生成AIの最新トレンドにも触れた。
責任あるAIの重要性
最後に、同氏は責任あるAIの重要性を訴えた。アバナードの責任あるAIフレームワークでは、情報セキュリティとプライバシー、コンテンツの品質と望ましさ、知的財産の尊重、透明性などが重視されている。同社自身の活用の経験から、生成AIによるジャンクなコンテンツの増大や誤情報による問題の事例を紹介した。そして、責任あるAIフレームワークには、環境への影響、社会への影響、人間への影響なども組み込むべきだと述べ、これを管理するためのプロセス、ツール、トレーニングが必要不可欠だと強調した。
「私の希望とアドバイスは、責任あるAIを検討することです。そして、責任あるAIの次元を理解していないのであれば、生成AIを使わないでくださいとまで言うつもりです」とローター氏は強調した。幸いなことに、Microsoftは責任ある使用法をCopilotに組み込んでおり、ゼロからスタートする必要はない。企業は自社の法的枠組み、コンプライアンス枠組み、価値観を考慮して、責任あるAIを実践していくべきだとローター氏は訴えた。