2024年7月24日、プライバシーテック協会は記者説明会を開催。今後の方針について説明を行った。
同協会は設立から約2年が経過する中、プライバシーテック(PETs:Privacy-enhancing technologies)の社会実装に向けて啓発活動、実証実験や事業化推進のための環境構築、現行法の関係整理などを行ってきたという。
新しく特別会員として加盟し、アドバイザリーに就任した日本情報経済社会推進協会(JIPDEC) 常務理事 坂下哲也氏は「なぜ今プライバシーテックなのか。日本における人口が減少し、縮退している中ではビジネスは個人に向けたものに変わっていく。そのときパーソルデータが扱われるためプライバシーテックとガバナンスに関して業界横断で議論しなければならない。その場をプライバシーテック協会が作っている」と提言。日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト/データ社会推進協議会(DSA)理事 若目田光生氏は、「わが国におけるデータ活用が推進されて時間はたつが、進んでいるという理解ではない。プライバシーや個人情報保護法が複雑な状況に置かれているため実務者が避けて通ってしまったり、収集データを自社だけのために使おうとしてしまったりという課題も見受けられる」と述べる。
日本における事業者間連携が求められる中、プライバシーテックの需要も高まっているとして「(自民党 デジタル社会推進本部が提言する)『デジタル・ニッポン 2024』でもPETsに言及されており、2年間の協会活動が一定の認知拡大につながっている」とAcompany 代表取締役CEO 高橋亮祐氏。同協会として、まずは秘密計算の領域に注力していくという。また、個人情報保護法を鑑みたときに現状の法制度ではプライバシーテック導入が進みにくく、インセンティブも限定的だと指摘。たとえば、医療領域において秘密計算を適用することで、元データを保有する病院以外は生データを把握することができず、最終結果を統計情報にするためのプライバシーを担保できるとする。
今後プライバシーテック協会は、秘密計算を活用するための基準整備としてガイドラインを策定し、個人情報保護法の「3年ごと見直し」における改正議論での規制の在り方を模索。社会実装実現に向けて企業・団体との連携強化を推し進めていくとのことだ。なお、第1期賛助会員として7社が今回加わることとなった。社名とコメントは以下の通り(加盟承諾順)。
JMDC(コメント:執行役員 兼 CDPO 足立昌聰氏)
弊社では医療データを取り扱っており、匿名加工などを経て分析業務を行っている。センシティブなパーソナルデータであるため、法制度の遵守だけでなく、プライバシーテックでどのような課題を解決できるのか探っていきたい。
博報堂DYホールディングス(コメント:マーケティング・テクノロジー・センター 室長補佐 西村啓太氏)
広告業界においては生活者データが根幹にあり、テクノロジーを活用してプライバシーを担保することが大前提だ。(プライバシーテックの)社会実装を進めていくことで、安心・安全なビジネスの発展を目指したい。
KDDI(コメント:Data&AI センター長 木村塁氏)
小売りや金融事業にも拡大している中、データ連携を行っている上で従来のやり方だけでなく、データクリーンルームなどの活用も始めた。その中、新たなテクノロジーを利用する上で法制度としてハッキリしていない部分もあるため、協会での活動を通じて(プライバシーテックを)推進していきたい。
TOPPANエッジ(コメント:事業推進統括本部 DXビジネス本部 RCS開発部 部長 後藤聡氏)
紙という媒体を通じてコミュニケーションを促進してきたが、その場がデジタル空間に移行してきている。データ漏洩やプライバシー侵害の被害範囲も拡大しており、健全なデジタル空間を作っていくためにもプライバシーテックが重要な要素になると考えている。その形成に貢献していきたい。
電通(コメント:データ・テクノロジーセンター 次世代テクノロジー開発部長 丸山裕史氏)
業界の垣根を越えてデータを安全に利活用していくことを進めており、地道な活動ではあるが皆さまと協力して推進していきたい。
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー(コメント:パートナー 早竹裕士氏)
世界経済フォーラムの事務局を担当してきた中、ここ5年ほどプライバシーテックの普及に力をいれてきた。協会の活動にも協力することで日本に技術を普及させていきたい。
日本電気(コメント:シニアプロフェッショナル 横田治樹氏)
NECとしては秘密計算や連合学習の研究を進めており、ここまで来たことに感慨深いものがある。技術が成熟に向かっている一方、社会実装における課題解決を図り、組織を越えた活用に貢献していきたい。