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富士通、東証の株式売買システム「arrowhead」をリニューアル 利便性やレジリエンスを強化

 東京証券取引所(以下、東証)と富士通は、東証の株式売買システムをリニューアルし、「arrowhead4.0」として2024年11月5日から運用を開始した。なお、今回の更改により、2010年1月に稼働を開始した「arrowhead」は4世代目となった。

arrowheadリニューアルのポイント

 同リニューアルでは、市場の利便性向上のため、クロージング・オークションの導入、注文ごとに相場情報を配信する新サービスの提供、機関投資家などのユーザー単位での注文一括取り消し機能の導入といった施策を実施。また、投資家など利用者の取引機会最大化のために取引時間を延伸するとともに、レジリエンス(障害回復力)を強化したという。

①市場の利便性向上
  • クロージング・オークションの導入:大引け[1]の売買の重要性が高まる中、終値形成における透明性のさらなる向上を目的として、後場[2]の15時25分から5分間の注文受付時間を設けた後、15時30分に板寄せ[3]を行うクロージング・オークションを導入。クロージング・オークションによる板寄せでは、従来の板寄せの条件で約定しない場合でも、一定の条件を満たす場合に売買成立可能値幅の上下限で、時間優先により注文を約定させることで、終値成立機会を向上させる(特別約定)
  • Market by Order型の相場情報サービスの提供:相場情報を注文ごとに配信するMarket by Order型の相場情報サービスを提供。これにより、相場情報サービス利用者は、これまでの値段ごとに集約した相場情報に加え、注文ごとのより詳細な相場情報を取得することが可能になるという
  • マスキャンセルの導入:機関投資家などのユーザーの利便性向上のため、ユーザー単位で複数の注文を一括で取り消す機能を導入
②取引機会の最大化
  • 取引時間の延伸:投資家の取引機会を拡大し、市場としての利便性を向上させるため、東証の取引終了時刻を15時00分から15時30分に30分延伸
  • レジリエンスの強化:メモリ上に配置した取引情報を三重化して複数サーバーで並行動作させることにより、障害時における秒オーダーでのサーバー切り替えやデータの保全性を確保。万が一、システムに障害が発生した場合に備え、売買を継続するための改善を引き続き行う

arrowhead4.0を支える技術とサポート

  1. レジリエンス向上機能の導入:インメモリデータ管理ソフトウェア「Fujitsu Software Primesoft Server」により、メモリ上に取引情報を配置することでマイクロ秒(1秒の100万分の1)レベルの超高速データアクセスからレスポンス性能とスループット性能を実現した。さらにシステム再立ち上げをともなう障害回復時間を短縮するため、製品の改善を実施。また、arrowhead4.0が提供するサービスの正常性を可視化する監視画面を構築した
  2. システムの性能向上および耐性強化:富士通グループのx86サーバー「PRIMERGY RX2540 M6」462台への基盤更改により、キャパシティとスループットなどのシステム性能の向上および耐性強化を実現
  3. システムの疎結合化の推進:東証などを運営する日本取引所グループのクラウド基盤上にシステムログデータの蓄積・分析業務領域を、取引機能と分離して構築。蓄積分析と取引の一部機能をシステム上疎結合にすることで、市場運営の信頼性が向上したという
  4. 障害対応の高度化:東証および富士通が一体となって障害に対応するチームを構築。障害の影響範囲や原因特定に資する機能を開発し、システムと人の両面で障害対応の迅速化を目指すという

[1] 大引け:取引所の取引時間は午前と午後に分かれており、後場の最後の売買を指す。

[2] 後場:株式市場の午後の取引可能時間。2024年11月5日から、12時30分から15時30分。

[3] 板寄せ:取引時間の始めの約定値段(始値)や取引時間終了時における約定値段などを決定する場合に行われる売買契約締結の方法。この方式は、約定値段決定前の呼び値(注文)をすべて注文控え(板)に記載したうえで価格的に優先順位の高いものから対当させながら(価格優先原則)、数量的に合致する値段を求め、その値段を単一の約定値段として売買契約を締結させる。

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