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JDMCがデータマネジメント賞2025 を発表、関西電力が大賞、アダストリア、アフラック、APRグループ、古野電気、星野リゾートが各賞

 一般社団法人 日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)が、データマネジメントにおいて他の模範となる活動を実践している企業・機関を表彰、今年で12回目の受賞企業を発表。2025年3月7日に開催された「データマネジメント2025」で表彰式が行われた。

表彰式
3月7日開催「データマネジメント2025」でのデータマネジメント賞2025(会場:ホテル雅叙園東京)の表彰式
賞名 受賞企業名
大賞 関西電力株式会社
データ統合賞 株式会社アダストリア
データ活用賞 アフラック生命保険株式会社
データドリブン経営賞 株式会社APRグループ
先端技術活用賞 古野電気株式会社
モデリング賞 星野リゾート

データマネジメント大賞/関西電力株式会社

■AI産業革命を見据えたデータマネジメントにより約300億円の効果創出

 関西地域を中心に電力供給を担う日本を代表するエネルギー企業である関西電力。長らく安定していた電力業界だが、脱炭素化・分散化・自由化・人口減少・デジタル化の波により大きな変革期を迎えている。そこで同社は、2030年までに「AI産業革命」が到来するという想定で、2023年度にDXビジョン・ロードマップ・戦略を再構築した。

 2018年にDX専門企業「K4 Digital株式会社」を設立。2023年度にはミッション・バリュー・事業戦略との一貫性や組織・人事制度との整合性を踏まえたDX人財戦略を整えた。特に注力したのは、AIの基盤となる「データマネジメント」への徹底したアプローチだった。DMBOKに基づくデータマネジメント通達を制定し、CDO(最高データ責任者)を筆頭に全社および各事業部門にデータスチュワードを配置。データのニーズ管理から収集、加工、蓄積、利活用、廃棄までを一元管理する体制を構築した。

 さらに、ガバナンス体制、役割定義、リスク管理までを包括的に実施することで、データの質と一貫性を担保。その結果、AI等を活用したDX実用化案件は累計478件となり、2024年度の効果額は約300億円に上る見込みである。

 多くの企業がDXに取り組む中、AI産業革命を見据えたデータマネジメントにいち早く着手し成果を上げている点は高く評価できる。同社の先進的取り組みは他企業の模範となることから、データマネジメント大賞を授与する。

データ統合賞/株式会社アダストリア

■複数事業統合によるMDM基盤導入、ノーコード・ローコード化によって運用コストを年間4,000万円削減

 アダストリアは3社の統合・合併により誕生し、アパレルを中核に飲食、住環境、アウトドア、スポーツ、BtoBビジネスなど多様な事業を展開している。しかし、各事業でデータの考え方や構造が異なり、従来のアパレルシステム体系では新業態や新戦略視点での集計・分析が困難だった。さらに、マスターデータが複数システムに分散し、開発・運用の非効率化やシステム連携の複雑化といった課題を抱えていた。

 これらを解決するため、同社はマスターデータ管理システム「J-MDM」を導入。早期導入、日本の商習慣に適したワークフロー対応を条件に選定し、内部統制対応やintra-mart基盤によるローコード開発の拡張性を重視した。

 導入は段階的に進められ、まず商品系から着手し、上位階層の統一・整理や管理コアDB構築を実施。AWS機能を活用したデータ連携基盤も整備した。次に取引先系マスターを集約し連携ルートを変更。現在はStep3として店舗・人事系への展開を進めており、売上・予算管理、新プロジェクトや新規事業での施策立案への活用を目指している。

 この取り組みにより、上位マスタの一元化で組織/商品階層ごとの分析が可能になり、社内マスタの整合性が向上。ワークフロー導入によるガバナンス強化に加え、ノーコード・ローコード化によって運用コストを年間4,000万円削減した。さらに、運用担当だった社員リソースを本来業務へ移行させることにも成功した。こうした成果を高く評価し、「データ統合賞」を授与する。

データ活用賞/アフラック生命保険株式会社

■保険契約管理業務の抜本的変革へ─アフラックのプロセスマイニング活用

 アフラック生命保険は、将来を見据えた保険契約管理業務の抜本的な再構築プロジェクトにおいて、データドリブンな業務可視化の仕組みを構築。IT部門トップの提案により、プロセスマイニングツール「セロニス」を導入し、業務の可視化を通じて問題点や処理状況、人員配置の適正さを把握することで、業務継続性と安定性の確保、効率化、そして働き方改革を目指した。

 施策として、過去データを活用し、変更保全、保険金支払い、新契約などの業務領域を可視化。保険金業務プロセスからスモールスタートし、他業務プロセスに順次展開した。特に保険金支払い業務では、複雑化していたプロセスの可視化に成功し、重複していたチェック作業などの非効率な業務を発見。これにより業務プロセスの見直し・改善が実現した。

 とりわけ、IT部門と事務部門が共同で分析に参画したことが成果につながった。現場の抵抗感なく課題発見が進められ、事務部門メンバーには日常的な活用を促すためのトレーニングも実施された。その結果、業務委託量の削減による外注費節減や適正な人員配置によるシフトの柔軟な見直しも可能となった。こうした取り組みにより1.2億円の価値創出に成功している。

 現在はリアルタイムデータ分析に取り組んでおり、今後は紙作業のデジタル化や生成AI・AIエージェントの活用も視野に入れている。アフラック生命保険の取り組みは、データ活用による具体的な効果創出の模範例として高く評価される。その功績を称え、「データ活用賞」を授与する。

データドリブン経営賞/株式会社APRグループ

■飲食業の経営データ一元管理によるサービスと社員モチベーション向上

 北海道すすきのを中心とした飲食店を運営している APR グループ。焼き鳥居酒屋から創業し、多様な飲食店を運営するとともに、不動産事業や人材派遣事業まで幅広く展開して いる。従来は Excel による店舗の売上・利益管理を行っていたが、情報確認の遅延、ヒューマンエラー、詳細管理の困難さに加え、多業態を展開するグループ全体を一元的にデー タ管理できる仕組みが不在だった。

 そこで、経営データ管理システム「FLARO」を導入。選定のポイントは、コスト効率の良さ、本部と店舗の工数削減、必要な経営データを即座に確認できる利便性、そして導入ベンダーの充実した運用サポート体制だった。 このシステムにより、飲食店経営の 5 大コスト(食材費、人件費、広告費、家賃、その他経費)を日次で可視化・管理。結果として、店舗の締め作業、日報管理の効率も向上した。また、本部では情報を一元管理できるようになり、最新の経営データをリアルタイム で取得可能に。さらに、スマホ一つで経営陣と現場が数字を共有できるようになったことで、従業員も伸ばすべき指標が明確になり、表彰制度の導入やモチベーション向上につな がっている。 APR グループの取り組みは、経営層だけでなく従業員、さらにはお客様へのサービス向上も含めたデータドリブン経営の模範として高く評価できることから、データドリブン経営賞を授与する。

先端技術活用賞/古野電気株式会社

■RAG を活用したサポート体制強化、世代間の技術継承問題を解消

 船舶向け電子機器メーカーの古野電気は、迅速な対応が求められる船舶の緊急修理現場 において、中間層の社員が不足するという課題に直面していた。社内にはベテランと 20 代の若手のみが在籍し、「気軽に相談できる先輩がいない」状況が続いた結果、テクニカルセンターへの問い合わせが増加し、対応が逼迫していた。 この問題を解決するため、RAG を導入し、社内の技術文書やサービス履歴、FAQ などを 一元管理し、若手エンジニアが自ら情報を検索・判断できる環境を整備した。その結果、 テクニカルセンターの負担が軽減され、「問い合わせ対応の負担が減った」「業務への不安が和らいだ」といった声が現場から上がるなど状況が改善している。

 導入にあたっては、推進担当者が現場を訪れながら草の根的に展開。トップダウンでは なく、現場の課題に即した形で技術を適用し、着実な浸透を図っている。特徴は「暗黙知 の形式知化」という野中郁次郎氏の提唱する理論に基づき、RAG を単なる業務効率化ツールではなく、組織全体で知識を共有する手段として位置づけていること。現場では生成 AI について「ぶっきらぼうだが何でも教えてくれる先輩」とみなされており、技術と人間の 協業による効果的な知識継承が実現している。 この取り組みは、中間層不足という多業界共通の課題に対する実践的なソリューション として高く評価できる。同様の人材構成の問題を抱える企業にとって有意義なモデルケースとなるだろう。その功績を称え、「先端技術活用賞」を授与する。

モデリング賞/星野リゾート

■現場主導のIT内製化とデータモデリングで業務改革、変化に強いシステムを構築

 星野リゾートは全国80ヶ所のホテルを展開し、IT環境管理と基幹システムの内製化を推進している。特に、予約システムと滞在管理システムの分断という課題に対し、顧客体験を軸にデータモデルを再設計している点が注目される。 特徴的なのは、ホテル現場のスタッフにUMLを教育し、内部人材を育成することでデータモデリングを内製化している点である。現場スタッフの業務知識や課題意識を活かしながら業務構造を解明し、理想的な業務システムのモデルを構築。さらに、ノーコードツールや生成AIを活用し、システム全体の抜本的な見直しを進めている。

 組織体制は約60名の社員と35〜36名の外部パートナーで構成され、開発から運用まで一貫して担当。経営陣も既存システムの制約にとらわれない新たな取り組みを支援し、全社的な推進を後押ししている。また、データセキュリティ面では顧客情報保護のためインフラレベルから完全分離することでリスク最小化を実現した。 2024年12月には最初の施設への導入が完了し、現在はフィードバックを基にさらなるリモデリングが進められている。この取り組みにより、変化に強いIT基盤が確立され、新たなビジネスチャンスにも迅速に対応できる体制が整いつつある。 業務知識を持つ現場スタッフをIT部門へ再配置し、人材育成とともに理想的な業務システム構築を追求する星野リゾートの取り組みは、他企業の模範となる先進的な事例である。その功績を称え、「モデリング賞」を授与する。

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