EYストラテジー・アンド・コンサルティング(以下、EYSC)は、広島県が同社の技術的な支援を受け、公共土木施設などに関する情報を一元化・オープンデータ化し、外部システムとのデータ連携を可能とするインフラマネジメント基盤「DoboX(ドボックス)」の事例を公開した。
2022年6月28日に運用を開始したDoboXは、浸水想定区域や土砂災害警戒区域などの災害リスク情報や、公共土木施設などの情報を3Dマップや地図上で確認できるインフラマネジメント基盤。これまで行政内部で利用していた情報をオープンデータ化することで、県民や民間企業、研究機関など誰でも利用することが可能とのことだ。

Dobox導入経緯
2018年に起こった「平成30年7月豪雨(西日本豪雨災害)」では、広島県でも全域で土砂災害や河川の氾濫が多数発生した。これを受けて、ハードの整備にデジタル技術やデータを計画的に活用することや、維持管理をより効果的・効率的に推進すること、また災害リスク情報などの的確な発信や防災教育の高度化など、ソフト対策のさらなる充実・強化が急務になったという。
デジタル化やデータ利活用については、個々の業務ごとにシステム化や効率化を進めてきたが、書面や対面で行う業務が多くあるほか、道路や河川などの分野ごとにシステムが構築されていたため、分野間でのデータ連携はもとより、国や市町などの施設管理者間の連携ができず、オープンデータ化も進んでいない状況だったとのことだ。
こうした状況を改善し、県民の安全・安心、利便性の向上、新たなビジネスモデルの転換を目指すことに。そのために、インフラデータを官民で利活用できる仕組みがまず必要だと判断し、インフラ分野に特化したデータ連携基盤を構築するに至ったとしている。
EYSCの支援
DoboXは、構想から運用開始まで約2年で構築された。EYSCは、システム開発にあたる基本事項の確認業務、仕様などの詳細調整業務、また構築に伴う技術支援など一連のプロセスについて広島県を支援したという。
基本事項の確認業務では、DoboXに必要な機能を明確にするため、保有データの棚卸しや先行事例の調査を支援。具体的には、土木建築局内のすべての課と、インフラデータと親和性が高いデータを保有している企業局や農林水産局、危機管理監も含めて、全部で18の課が保有されている49のシステムとデータについてヒアリングを行い、システム構成や運用状況、データ形式などの現状と、連携にあたっての課題を取りまとめたという。また、国内外での先行事例を60件ほど調査して、データプラットフォームの活用事例や運営体制などを整理。その中から、広島県が目指している取り組み像に近い5つの事例を選び出し、システムの詳細やデータ連携の可能性などについて個別のヒアリングを実施したとのことだ。これらの調査結果を踏まえ、データカタログ機能やアプリケーション機能といった、基盤に必要となる機能を整理する作業を支援したとしている。
【関連記事】
・EY、広島県神石郡神石高原町にてドローン飛行の実証に成功 LTE不感エリアでの物流問題解決に期待
・IPO件数は前年比7%減少、AI関連スタートアップが成長か──EY調査
・EY、マルチモーダルAIを活用した新価値創出支援を開始へ シングルモーダルAI超える推論でイノベーションを起こす