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コクヨ、ジンズなどがAIエージェント自社開発 「Snowflake Intelligence」日本提供

 Snowflakeは2025年12月9日、日本企業に向けた「Snowflake Intelligence」の本格展開開始にともなう記者会見を開催。ゲストとしてコクヨ、富士フイルム、ジンズが登壇し、各社のデータ活用事例もあわせて紹介された。

 Snowflake Intelligenceは、企業内のデータに対してAIチャットボット形式で質問できるAIエージェント機能。6月にパブリックプレビューを開始し、GA版が11月に提供された。既に全世界で1,200社以上の顧客が導入しているという。

Snowflake合同会社 社長執行役員 浮田竜路氏

 Snowflake 社長執行役員の浮田竜路氏は、「従来のAI活用は単一のデータセットに閉じてしまい、『今期の売上はどうだったか』といった問いに対する結果は得られても、『なぜ7月に売上が落ちたのか』といった深掘り分析に対応できていなかった」と説明する。Snowflake Intelligenceは、プラットフォーム層(アナリティクス、AI、データエンジニアリング、アプリ&コラボレーション)とコンテンツ層(データ)の両輪で企業内のデータを統合し、セキュリティとガバナンスを確保したうえで、データ駆動型の意思決定を加速させるとのことだ。これにより、ビジネスユーザーはSQLなどの専門知識なしに、自然言語でデータに問いかけ、多角的な回答を得ることが可能となる。

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 また、会見ではSnowflake Intelligenceを先行導入したユーザー企業の具体的な取り組みが紹介された。

コクヨの事例

 コクヨは、「全員参加型」のデータ活用を進めるべくSnowflake Intelligenceを活用しているという。会見では、通販サイト「カウネット」をはじめとした事業を担うビジネスサプライ事業領域における事例が説明された。同事業を支えるデータ分析基盤は、Snowflakeをコアに構築されている。その基盤を用いてデータ活用を推進するうえで、下図の「データユーザー」にあたるメンバーが、データ活用にハードルを感じていたという。

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 従来のBIツールやPython、SQLといった技術は、データユーザーにとってスキル習得のハードルが高く、またBIツールの開発ライセンスを全社員に付与することはコスト面から非現実的であった。ビジネスサプライ事業本部 ビジネスサプライ事業戦略室 データドリブン推進ユニット 夛名賀寛氏は、この「データ活用の壁」を乗り越えるための架け橋としてSnowflake Intelligenceに着目したと述べる。

コクヨ株式会社 ビジネスサプライ事業本部 ビジネスサプライ事業戦略室 データドリブン推進ユニット 夛名賀寛氏

 同社は、Snowflake Intelligenceを用いて「カウネットデータ分析エージェント」を開発。このエージェントは、非エンジニアである担当者が約2ヵ月で開発したものであり、カウネットの売上情報を商品軸や顧客軸でアドホックに分析できる。開発にあたっては、以前よりディメンショナルモデルに基づいたデータ整備を進めていたことが、迅速なエージェント開発を可能にしたと語った。

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 夛名賀氏はSnowflake Intelligence導入の成果として、「データユーザーにとってデータ活用の入口が生まれたこと」「非エンジニアでもAIエージェントを開発できるようになったこと」を挙げた。現在、経営層やマネージャー層からの評判も高く、「データを活用するという体験そのものが変わる」といった声が届いているという。

富士フイルムの事例

 続いて、富士フイルムホールディングス ICT戦略部の三ツ井哲也氏が登壇した。同社は、DXビジョン実現に向けてSnowflake Intelligenceを導入。検証目的を「AI活用の価値実証(PoV)の早期実現」「自然言語の活用によるAIの民主化」「セキュリティレベル維持の効率化」の3点に設定した。

富士フイルム株式会社 ICT戦略部 三ツ井哲也氏

 三ツ井氏は実際の検証事例として、生産領域でのエージェント開発の様子を紹介。具体的には、生産工程の複雑化やモニタリング項目の増加にともなう「品質異常における原因特定の難しさ」という課題を解決すべく、Snowflake Intelligenceで「品質管理AIエージェント」を試作した。これによりUI層の開発が省力化された結果、AIエージェントのPoC(概念実証)が高速化したという。最終的には、業務ユーザーと開発者が一体となって品質異常を分析し、根本原因の可能性を特定する一連のプロセスをAIエージェントが支援する構図が実現した。

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 また、事業運営領域や営業支援領域での検証事例についても触れ、特に「UI層開発の省力化によるコンテキストエンジニアリングへの注力化」が進んだと強調した。これは、AIエージェントが正確な回答を導き出すために必要なデータモデリングやセマンティックレイヤーの設計といったコンテキストエンジニアリングに、より多くのリソースを割けるようになったことを意味する。さらに、「Snowflake Documentation」を参照するAIエージェントを導入することで、社内でのSnowflakeの仕様調査にかかる工数も削減されたとのことだ。

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 三ツ井氏は、Snowflake Intelligenceの導入によってPoCからPoV、そしてMVP(Minimum Viable Product)という各開発段階において、一貫したシステムアーキテクチャの適用による効率化が見込めると締めくくった。

ジンズの事例

 最後は、ジンズ AI&データサイエンス部 部長の川嶋三香子氏が登壇した。同社は日本国内に約550店舗、海外に8地域で事業を展開しており、多店舗・多品種を扱うなかで、売上データを複数のスプレッドシートで管理し、分析に時間を要していることが大きな課題だったという。

株式会社ジンズ アイウエア事業開発本部 AI&データサイエンス部 部長 川嶋三香子氏

 「Snowflake Intelligenceの導入以前から、『なぜ売上が下がったのか』 『年代別の変化は』といった問いに、誰もがすぐに対話形式で答えられるようなAI分析システムを構想していた」と川嶋氏。当初は定型レポートを開発するステップから入ったものの、Snowflake Intelligenceの登場により、チャットボット形式での最終形を目指す構想を前倒しで実現できる可能性を見出したとのことだ。

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 現時点で、既に店舗運営を統括する営業部で実データを用いたPoCが実施されており、管理職層や担当役員が活用している。評価は概ねポジティブで、「分析・示唆出しは人と同様」「チャット形式なのでビジネスユーザーでも操作が容易」といった点が評価されている。

 開発面での工夫として、同氏は「詳細なInstruction(指示)」「分析のための近道」「思考回路の短縮」の3点を挙げた。具体的な分析ルールや評価基準といった同社のいわば“秘伝のタレ”を細かく教え込むことで、有益な回答に誘導すること、想定質問に基づく仮想テーブルを準備することで回答への近道を提示すること、そして事前にSQLを定義しておくことでAIが思考する時間を短縮する取り組みを進めているという。

 川嶋氏は今後の展望として、「国内営業部内での本格展開に加え、海外事業やマーチャンダイジング、マーケティングといった他部門への横展開を目指す」と語った。

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奥谷 笑子(編集部)(オクヤ エコ)

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