ストレージとデータ管理基盤を手がけるEverpure(旧社名Pure Storage)の日本法人、ピュア・ストレージ・ジャパンは2026年10月6日、東京で開いた「Pure Accelerate 2026 Tokyo」での記者説明会で、業績、データ主権に関するグローバル調査、AI活用に向けたデータ管理の新機能を発表した。調査では、日本の経営幹部の88%が「データ主権の欠如は経営幹部の進退問題につながりうる」と懸念していた。
冒頭で業績を報告した代表執行役員社長 五十嵐光喜氏は、「端的に言うと、ビジネスは好調だ」と切り出した。売上高は前年比31%増、利益は77%増となり、「非常に健全な状態」だという。株価にも表れているのではないかと述べた。
消費型インフラの分野では、ストレージをサービスとして使える同社の「Evergreen//One」の売上が年間で10億ドルを超えた。大型案件も増えており、ハイパースケーラーでの採用も昨年に続いて多いという。五十嵐氏は「テクノロジーの有用性をお客さまにプロフェッショナルに理解いただいた結果ではないか」と話す。
第三者の評価も紹介した。ガートナーの「エンタープライズ・ストレージ・プラットフォーム」のマジック・クアドラントでは、リーダーの位置にあり、その中でも業界をリードするポジションだと評価されているという。消費型インフラのマジック・クアドラントでも同様にリーダーに位置付けられた。
日本市場では、IDCの直近四半期の調査で、オールフラッシュ・アレイ市場のシェアが2位になった。「当社の製品はフラッシュ・アレイしかないので、その中での比較で日本でも非常に好調だ」と五十嵐氏。大容量案件や、さまざまな業界・ワークロードでの採用が増えているという。
続いて登壇したマシュー・ウーストヴィーン氏(アジア太平洋・日本地域担当VP兼CTO)は、ここ数年注視してきたテーマとしてデータ主権を挙げた。数年前、西欧のアナリストに顧客からの問い合わせの1位を尋ねたところ、「市場によっては、データ主権がAIより重要だ」と返ってきたという。
同社は2025年にも調査を実施している。国際市場でのサービス中断、外国の影響と地政学の問題、規制の台頭が見えてきた。規制は日本、インド、オーストラリア、韓国などで進むが、同氏は「規制は静的ではない。いま日本にある規制は、12ヵ月後には同じ場所にない」と指摘する。今回はその第2弾となる。
2026年の調査は、西欧とアジア太平洋の8ヵ国が対象で、北米は意図的に除いた。「北米は私たちと同じ意味で主権を理解していないので、純粋な見方を得たかった」と同氏は説明する。回答は全体で2,100人、日本は300人だった。
調査では、90%が「データ主権は自社のIT戦略の中核だ」と答えた。一方で、64%は正式な主権戦略を組み込んでいない。ウーストヴィーン氏は「問題は分かっているのに、まだ手を打っていない。その間に溝がある」と語る。日本の未策定は53%で、同氏は「認識と実行のギャップを埋めるうえで、日本企業は調査した国の中で先行している」とした。
47%はサイバーセキュリティを、主権対策の動機に挙げた。ただし同氏によると、「AES-256のような暗号化で主権の問題を回避できる」と考える層がいる。「暗号化しても、サービスを止められる可能性は残る。コンプライアンスのチェック欄を埋めても、解決する問題ではない」と同氏は話す。
地政学的な不確実性によるサービス中断を動機に挙げたのは26%で、「実際に起こりうると認識しているのは、おおよそ4人に1人」だという。外国からのデータアクセスからの保護を最優先とする回答は9%だった。同氏は、データが日本のデータセンターにあっても、サービス提供の主権構造が外国の法域に上書きされれば、外国の組織がデータを複製・変更・削除できると説明する。裁判所命令が非公開になりうるため、「いま起きていても、データの所有者が気づいていない可能性がある」。AIからの圧力で動いたとする回答は34%だった。
役員の88%は、自分の職が危うくなると懸念している。一方、62%は、誰がデータにアクセスできるかを完全には把握していない。85%は、主権による管理のためなら高度な機能の一部をあきらめてもよいと答えた。同氏は、これを「ミニマム・バイアブル・カンパニー」の考え方だと話す。外部サービスが止まっても事業を続けるため、中核に絞るという発想だ。ベンダー選定やRFPで主権を考慮する層は80%にのぼった。
「主権は後から付け足せない」と同氏は強調する。セキュリティ・バイ・デザインと同じ水準で、あらゆる判断を主権の観点から行う「ソブリン・バイ・デザイン」が必要だという。予算はIT部門にとどまらず、法務やコンプライアンスにも広がる。スキルや人員の不足を挙げた回答も56%あった。
同氏が示した提言は5つある。データの所在を監査して可視性と管理を確保すること。すべてのアプリを同じ水準で主権化するのではなく、リスクに応じて線引きすること。医療・金融・市民のデータが国外で処理されないよう、主権を意識してAIを構築すること。IT部門だけで抱えず、経営陣を巻き込むこと。地政学の現実に投資を合わせ、出口戦略まで含めて方針を持つことだ。
後半は、AI向けデータ管理の技術アップデートだった。同社は売上の19%を研究開発に投じているという。
従来はERPやCRMなどのアプリケーションが中心で、部門ごとにデータのコピーや版違いが生まれた。AIの学習に使うと、一貫性の問題が出てハルシネーションや出力への不信につながる。同氏は、データを中心に据え、アプリやAIパイプラインが必要に応じて使う構造への転換を訴える。データ量は18ヵ月で倍増するというIDCの調査にも触れ、「いかに少ない資源で多くをなすかではなく、格段に少ない資源で格段に多くをなす課題だ」と述べた。
可視化を担う「Everpure Data Intelligence」は、日本企業のデータの30〜40%を占めるとされるダークデータを見つける。年に1〜2回コンサルティング会社に頼んでいた監査を、日次で回せるソフトウェアに置き換えるという。データの分類に加え、業務プロセスと、それが呼び出すデータを結ぶセマンティック・ナレッジグラフも作る。可視化から入る企業が多いが、ソブリンAIの構築から始める企業もある。
統合データプレーンでは、すでに圧縮済みのファイルでも、グローバルの中央値で2対1のデータ削減を実現する「DeepReduce」を紹介した。Evergreen//Oneは、SLAの改善で、容量に加えて性能の2軸でサービスとして買えるようになる。
LLM(大規模言語モデル)推論は、KVAの機能強化により最大20倍高速になり、GPUあたりの推論量が増える。NVIDIAのDynamoとの連携で実現した。トークン費用の課題には、リファレンス・アーキテクチャ「Intelligent Token Optimization」を用意した。同氏は「トークノミクスのイージーボタンだ」と呼ぶ。コンテナ基盤のPortworxではオブザーバビリティ(可観測性)を強化し、管理ソフト「Fusion」ではSLAなどに応じてワークロードを再配置する機能を加える。
創業者のジョン・“コズ”・コルグローブ氏は、五十嵐氏との対談で、AIの基盤選びについて語った。日本では約98%のAIがパブリッククラウドで動くという五十嵐氏の指摘に、同氏は「それほど多くをパブリッククラウドで行うのは間違いだ」と答えた。変化が速く、1つの方式に縛られるのが最大の失敗になるという。
同社は数ヵ月前にGPUを購入し、投資回収を2〜2.5年と見込んでいたが、導入後は約3ヵ月と見積もった。自社のKVキャッシュで想定以上の性能が出たためだ。ただしフロンティアモデル各社が旧モデルを値下げしたため、15〜20ヵ月に延びうるともいう。「PowerPointに高価なAIは使わない。出来が悪い」と同氏は笑った。
この日の発表資料として、同社は調査レポート『データ主権に関するグローバル調査レポート(2026年)』の結果も公表した。
日本の回答者の86%が、データ主権の欠如は経営幹部の進退問題につながりうると答え(全体は88%)、89%が財務面やレピュテーション面の重大なリスクになると懸念した(全体は91%)。日本の53%(全体は64%)は明確な戦略を持たず、60%は自社データの保存場所と権限の所在を可視化できていない。地政学要因への備えがない組織は49%だった。
日本の82%は、国内またはデータ主権を重視する事業者と組むためなら、一部の機能を犠牲にしてもよいとした。37%は、国外にインフラを置くSaaSの利用を制限している。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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