インサイトテクノロジーは2026年11月5日〜6日、カンファレンス「db tech showcase 2026 Tokyo」を開催。初日の基調講演には、同社 代表取締役社長兼CEOの森田俊哉氏と、ゲストとして日本マイクロソフト 業務執行役員 エバンジェリストの西脇資哲氏が登壇した。「DB First, AI Next」をテーマに掲げ、近年の生成AIブームの中であらためて問われるデータ基盤の重要性と、日本の強みを活かしたエンジニアの進むべき道について語った。
(左から)株式会社インサイトテクノロジー 代表取締役社長 CEO 森田俊哉氏
日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 エバンジェリスト 西脇資哲氏
西脇氏は、日本企業のAI活用におけるデータの重要性を、デモンストレーションも交えながら熱弁した
講演冒頭、森田氏は同カンファレンスで10年近く継続して実施している参加者アンケートの結果を紹介。過去5年間の「利用しているデータベース」の推移では、長年トップを占めてきたOracle、PostgreSQL、SQL Server、MySQLといった定番RDBMSに加え、AWSをはじめとする各社クラウド提供DBの利用が着実に定着してきている。
さらに「今後使ってみたい・聞いてみたいデータベース」の設問では、直近4年間トップを維持していたTiDBに代わり、今年はSnowflakeが1位を獲得。追随してClickHouseやDatabricksなど、近年のデータ分析トレンドを牽引するプロダクトへの関心の高さが浮き彫りとなった。
一方で森田氏は「オンプレミスやOracle Cloud、Exadataを含め、Oracle Databaseのニーズが根強く復活傾向にあるのも今年の特徴的な動きだ」と指摘。技術の多様化が進む中でも、基幹を支える信頼性の高い基盤への再評価が進んでいる傾向に触れた。
ところで、世の中のITトレンドは生成AI一色となり、関連イベントも急増している。同カンファレンスでも過去数年はAI関連のテーマを取り入れてきたが、今回はあえて「DB First, AI Next」というスローガンを掲げ、テーマを“データとデータベース”に強く絞り込んだ。
「最近はAIの勢いに押され、肩身の狭い思いをしているデータ関連のエンジニアもいるかもしれません。しかし、AIが機能するための大前提は“データ”および“データ基盤”にあります。そこに誇りを持っていただきたいです」(森田氏)
データベースの進化の歴史を振り返ると、かつてはRDBMSおよびDWHが中心の時代が長く続いた。その後、非構造化データを含む多様なデータを蓄積するデータレイクが登場したが、生成AIが普及するまではその価値を十分に活かしきれていなかったと森田氏は振り返る。
現在求められているのは、蓄積された非構造化データを真に活用できる「AI-ready」なデータ基盤だ。同氏は、AIが真価を発揮するためのデータ基盤に求められる要件として、セキュリティや信頼性を大前提とした上で以下の3つを挙げた。
- 多様性:テキストや音声、画像などの非構造化データに柔軟に対応できること
- オープン性:特定のベンダーやフォーマットに縛られず、多様なツールやモデルを受け入れられること
- 鮮度:最新の情報をもとに判断・実行するAIエージェント時代において、リアルタイムに近いデータを迅速に供給できること
そのほか、森田氏は「日本は元気になったのか?」というテーマを立て、各種マクロデータを提示。名目GDPの推移を見ると、2010年から2025年にかけて米国が2.1倍、中国が3.2倍に伸長した一方、日本は約23%減少し、相対的な経済規模で後塵を拝している。また、IMDの世界デジタル競争力ランキングでも、日本は30位前後に留まっている。
しかし、生活・社会基盤の指標に目を向けると様相は一変する。失業率の低さ、数学リテラシー、健康寿命、治安、医療環境(病床数)などにおいて、日本は世界トップクラスの安心・安全な社会基盤を維持している。
オランダの社会心理学者 ヘールト・ホフステード(Geert Hofstede)氏による国民性分析「6次元モデル」を引用した森田氏は、日本人の顕著な特徴として「集団主義」や「長期志向」、そして「不確実性の回避」の高さを挙げた。
「米国が不確実性を恐れずベータ版を市場に投じてアジャイルに改善していくのに対し、日本は確実性を重視し、慎重に高品質なものを作り込んできました。この慎重さは安心・安全な社会の土台となった反面、IT業界におけるスピード感や成長性の面では足枷になってきた側面があるといえます」(森田氏)
昨今、情報漏洩やサイバー攻撃の脅威が急激に高まっており、海外からターゲットにされるケースも目立っている。ルール設計や安全性の徹底、初期設計から信頼性を組み込むアプローチは、本来日本人が最も強みを発揮できる領域だ。
森田氏は、これからのAI時代に日本のデータ技術者が飛躍するためのメッセージとして、「守る」「活かす」「試す」という3つの提言を掲げた。
- 守る:設計段階から信頼性とセキュリティを組み込み、安心・安全なデータ基盤を構築する
- 活かす:多様性・オープン性・鮮度を備えた、AIの価値を最大限に引き出す「AIレディ」な基盤を設計する
- 試す:不確実性を過度に恐れず、新たなアーキテクチャや技術に積極的に挑戦し、実践していく
「AIに正しいデータを渡して初めて、AIは社会に真の価値をもたらします。信頼できるデータ基盤を築く力は、日本が世界に対して大きな強みを発揮できる領域です。だからこそ、データベース技術者が先にあり、AIがその上に成り立つ──『DB First, AI Next』の精神で、本イベントを次の挑戦へつなげてください」(森田氏)
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