企業の農業市場への参入が増加し、「農業ビジネス」の展開が進むなかで、センシング技術や通信技術、バイオテクノロジーなどのハイテクを取り入れた農業のIT化が注目されているという。
農業のIT化とは、IT技術を駆使して農産物の生産・販売に必要な情報を収集し、効率的に農産物を生産し、販売・流通させる技術を指すという。
調査のまとめによると、農業IT化の市場規模は、2020年に580~600億円と予測し、2013年の推定市場規模66億円に比して、約9倍の成長が見込まれるとしている。なかでも、農業クラウドサービスが大きく進展し、2013年比約28倍の伸びとなり、農業IT化市場の75%を占めると予測している。
調査は5つのカテゴリに分けて行われ、カテゴリごとのまとめは次のとおり。
GPSガイダンス
GPSを用いた農業機械の自動操舵で、農業用GPSガイダンスシステム等と自動操舵システムが出荷されており、国内出荷9割が北海道向けに出荷されている。
農耕地の大規模集約化が進展(農地集積基盤整備事業)するとともに、準天頂衛星などインフラの整備で実証試験段階から実需に進む。GPSガイダンス市場は、2020年で15億円前後と予測。
センサ・ネットワーク/環境制御装置
センサ技術を用いて圃場・栽培施設の温度や湿度、養分、土壌などの情報を取得し、生育に最適な環境を自動制御し、栽培の自動化を図るもの。
現在、環境制御向けセンサ・ネットワークの導入可能な国内の施設数(潜在ニーズ)は、およそ7000~8000施設とし、ようやく市場で認知され活用されている。
市場規模は、単年では3億~3.5億円規模にとどまっているが、2015年には4~5倍の成長が見込め、10億~12億円規模、2020年には現在比10倍の35億円前後に拡大すると予測。
農作業ロボット
自動選別装置などに代表される農作業自動化装置やパワーアシストスーツなど。農作業ロボットは、10年以内の実用化を想定して予測。農機具の1割が農業ロボットに置き換わると想定して、2020年の市場規模は50億円前後と予測。
直売所POSシステム
直売システムにおける効率的な集出荷の管理、販売手数料などの精算管理を行い農産物流通の効率化を図るシステム。
2015年以降は飽和状態になり、産直POSシステムの新規導入は鈍化するが、新たなシステムにより付加価値サービスなどの機能を付けた更新需要がメインになると予想。
市場のピークは今後2~3年、2017年以降はリニューアル更新需要となり、2020年の市場規模は55億円前後と予測。
農業クラウドサービス
農産物生産者へ、経営分析、生産技術、販売、物流、融資等の情報を提供し、地域振興を図るために、自治体などが主体となって構築する農業クラウドサービス。基盤構築や各サービス提供を行うのは、ICTベンダで、富士通、日本電気、日立ソリューションズ、アグリコンパスの主要4社。
主要ベンダ4社の現況と今後の事業計画から推定すると、2015年時には200億~250億円の市場規模が形成されると予測。栽培技術・栽培管理・経営管理関連で210億円前後、トレーサビリティ関連で200億円前後、産直販売関連で30億円前後、計440億円前後の需要が見込めると予測。