ID管理、データ連携とアプリケーション連携で深刻度が高い課題
発表によると、エンタープライズITインフラストラクチャにおけるパブリッククラウドサービスの利用に当たり、新たな課題が顕在化していることが分かった。顕在化した課題は、パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャの連携利用を妨げ、両者を組み合わせた最適なエンタープライズITインフラストラクチャの実現を遅らせている。
パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャの連携利用に際して顕在化した課題は、ID管理、データ連携、アプリケーション連携、運用/管理、費用配賦(各部門への費用の割り振り)の5つの領域で発生していることが分かった(参考資料)。
これらの中で、特に深刻度が高いのは、ID管理、データ連携とアプリケーション連携であるとIDCではみている。パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャの連携利用する上で、阻害要因となるからだという。
パブリッククラウドサービスは、サービス提供者が個々に独自のID管理機能を有しており、個別に運用することを基本としている。つまり、ITバイヤーがオンプレミスITインフラストラクチャで利用しているシングルサインオン機能では、即座にIDを統合管理することができない。
その結果、ITバイヤーは、パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャでIDの二重管理を行うか、シングルサインオン実現のためにあらたにID連携機能を追加導入することを強いられる。
ハードウェアベンダーはエンタープライズITインフラの最適化実現へ注力を
パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャとの間におけるデータ転送の遅延によって、アプリケーション側の処理とデータベースアクセスのタイミングに差が生じ、アプリケーションの異常終了や従来実現していた処理性能を発揮できない場合がある。
また、パブリッククラウドサービスは、サービス提供者が個々に独自の操作画面を提供しており、オンプレミスITインフラストラクチャのアプリケーションの操作画面とユーザーインターフェースを共通化する際には課題が顕在化する場合もある。
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ リサーチマネージャーの下河邊雅行氏は、次のように分析している。
「企業のパブリッククラウドサービス利用は拡大している。しかし、同サービスの利用に当たって新たな課題が顕在化している。ハードウェアベンダーは、ITバイヤーが抱える課題の解決策を早急に提供すべきである。ハードウェアベンダーが、ITバイヤーの課題に対処するということは、パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャの連携処理に関する各種APIや、自動構成機能を自社ソリューションに備えることを意味する。つまり、ハードウェアベンダー製品において、Software-Defined Infrastructure(SDI)への対応を強化し、ITバイヤーのエンタープライズITインフラストラクチャの最適化実現に寄与することが、ハードウェアベンダーにおける注力ポイントになる」
今回の発表は、IDCが発行したレポート「2016年 パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラの連携利用:IT部門トップが抱える課題」にその詳細が報告されている