法人向けタブレット市場は製造、金融、サービス産業が市場をけん引
法人向け市場のタブレット出荷台数の2015年~2020年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)はマイナス4.8%と予測している。これは、2015年まで市場をけん引していたB2B2C用途でタブレットを採用してきた企業の方針変更により、今後新たな大型案件が期待できないと予測されるためだ。
また、企業での業務端末としてのタブレットは、モバイル端末に合わせた見やすい画面設計のアプリケーションの追加などの再設計を行う必要があり、企業にとって新たな費用負担が必要となる。また、PCの社外持ち出し制限を行っている企業ではタブレットも同様の制限がかけられる可能性が高いと考えられる。このため企業では、業務端末としてのタブレット導入に消極的になっていると考えられる。
産業分野別に見た2020年までのタブレットの出荷台数は、製造、金融、サービスの産業分野の成長率が高いと予測している。製造では、次世代PLM(Product Lifecycle Management)システムにより、生産ラインにタブレットを設置し、設計のマイナーチェンジなどの情報を即時に生産に反映させるなどの市場機会があると考えられ、2015年~2020年のCAGRは9.0%と予測している。
金融では、既に生命保険会社を中心にタブレットが導入されているが、2018年以降この買い替え需要などが期待されると考えられ、2015年~2020年のCAGRは7.2%と予測している。また、サービスでは、日本郵便による高齢者向けタブレットや、インターネットプロバイダーなどによるモバイルコンテンツ課金などによるビジネスモデル構築のための端末としてタブレットの導入が進められることが期待され、2015年~2020年のCAGRは4.6%と予測している。
学校タブレットの仕様の統一に早急に取り組むことが必要
2013年に政府により閣議決定された「第2期教育振興基本計画」では、学校のICT化を進め授業の革新を推進する方針が出されており、今後学校(小学校~高校)で、タブレットの活用が進むと期待されている。この計画では、2018年3月までに3.6人の児童生徒数に対し、1台のPCまたはタブレットを設置することを目指している。
2016年3月時点の文部科学省が公開したデータによると、6.2人/台のPCまたはタブレットが設置されており、その中でタブレットは47.7人/台が設置されていることが分かった。2018年3月までに本計画を実現するためには、今後2年間で約140万台のPCまたはタブレットが新たに導入されることが必要となり、この中でタブレットの導入比率が高くなることが期待される。
今後、大量のタブレット導入を進めるためには、タブレット本体のコストを下げることが必要となり、また児童生徒が転校した場合でも、同じオペレーションが求められる。このためには、タブレットベンダーと国が協調し学校タブレットの仕様について、早急に取り組むことが必要であると、IDCでは考えている。
IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの浅野浩寿氏は「企業でのタブレット需要は一巡し、従来からのプレゼンテーション用途に加え、社外からの基幹システムとの連動やこれによる意思決定の速さによる効率的な業務を行う事が求められている。これを実現するためには各企業でのシステムの見直しと共に、ROIなどを使った投資対効果の明示が必要になる」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行した「国内法人向けタブレット市場 産業分野別予測アップデート、2016年~2020年」にその詳細が報告されている。