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ARは人間の洞察を強化する――経営戦略の大家、ポーター教授が語った「ARのビジネスポテンシャル」


IoT(Internet of Thing)の普及やあらゆるモノどうしが相互接続する「つながる世界」の到来で、デジタルとフィジカル(物理)の融合が進んでいる。特にAR(Augmented Reality:拡張現実)技術は、これまで2次元だったデジタルの世界を、3次元の物理世界で活用できる手段として注目されている。では、ARによって産業界はどのように進化するのか。米国の経営学者でハーバードビジネススクール教授のマイケル・ポーター氏は、「ARは人間の洞察を強化する技術だ」と力説する。

機械は人間の仕事を奪わない

IoTやSCP製品の可能性について言及するハーバードビジネススクール教授のマイケル・ポーター氏(右)と米PTCの社長兼CEジェームズ・ヘプルマン氏(左)
IoTやSCP製品の可能性について言及するハーバードビジネススクール教授のマイケル・ポーター氏(右)と
米PTCの社長兼CEジェームズ・ヘプルマン氏(左)

 競争戦略論の大家として知られているマイケル・ポーター氏。同氏が1980年代に発表した経営戦略に関する論文「競争の戦略」や「競争優位の戦略」は、経営戦略の基礎と位置づけられており、30年以上経った今でも多くの経営者に影響を与えている。また、近年では「IoT時代の競争戦略」といった論文も数多く発表している。

 2018年4月5日に開催された「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー・フォーラム」(主催:ダイヤモンド社)の基調講演に登壇した同氏は、「フィジカルとデジタルの融合」をテーマに講演。米PTCの社長兼CEOであるジェームズ・ヘプルマン氏とともに、ARがビジネスや社会に与えるインパクトとその将来像を語った。

 冒頭、ポーター氏はデジタル変革の波を、3段階に分けて説明した。

 第1の波は、1960年代後半の「バリューチェーンオートメーション」だ。それまで手作業で処理していた業務のプロセスや情報収集の手段を、ITで自動化することで、人的リソースの最適化を図った。続く第2の波は、1980年後半から90年代のインターネット普及期である。さまざまな情報やデータをインターネットで共有することで、業務の効率化を実現。利益の最大化を目指した時代だ。

 そして第3の波が、IoTやスマートコネクテッドプロダクト(以下、SCP)に代表される、相互接続の世界である。ポーター氏は「IoTやSCPは、製品自体がデータを生成する。これにより、使えるデジタルデータ量は急増した。IoTやSCPは、企業組織やバリューチェーン、さらにすべての領域でビジネスの境界を変化させ、新たな事業創造の可能性を生み出した」と指摘する。

 異分野連携による相互接続が社会全体で普及すれば、例えば、ビル全体のスマート化による新たなサービスや価値の提供が可能になる。では、その時に人間はどのような利便性を享受し、新たな課題を抱えるのか――。ポーター氏は、「(IoTやSCPの普及で)自動化の時代が到来すれば、人間は仕事が奪われるとの懸念があるが、それは杞憂だ。人間は複数のタスクを同時にこなす能力がある。これは、プログラムされた作業しかできない機械が持たない能力だ」と指摘した。

デジタル変革の波とその内容。IoTやSCPは社会に大きなインパクトをもたらすとポーター氏は力説する
デジタル変革の波とその内容。
IoTやSCPは社会に大きなインパクトをもたらすとポーター氏は力説する

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ARは「認知的距離」を最小限にする

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この記事の著者

鈴木恭子(スズキキョウコ)

ITジャーナリスト。
週刊誌記者などを経て、2001年IDGジャパンに入社しWindows Server World、Computerworldを担当。2013年6月にITジャーナリストとして独立した。主な専門分野はIoTとセキュリティ。当面の目標はOWSイベントで泳ぐこと。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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