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「2025年問題」と「2025年の崖」、巷の狂騒から少し離れて

 第6回の今回は巷で噂の2025年問題について考えてみようと思います。私自身、このキーワードは耳にするものの、ほとんど気にしていなかったので、まずはそもそも2025年問題とは何なのか。ちょっと調べてみました。

 そもそも2025年というのは厚生労働省が発表している「2025年の超高齢社会像」が事の発端のような気がしましたので、調べてみました。内容を抜粋すると2015年にベビーブーム世代が前期高齢者に到達し、10年後の2025年には高齢者人口が約3,500万人に達する。これまでの高齢化の問題は高齢化の速さの問題であったが、2015年以降は高齢化率の高さが問題となる。

 ということでした。うーん、イマイチこの問題とITの2025年問題が結びつかないです。というわけで、事の発端でもある経済産業省の「2025年の崖」を改めて見てみました。経産省の文書は「崖」なんですね。一部、IT人材不足について触れていますが、それ以外は全くもって厚労省の2025年問題とは別物であることがわかりました。そもそも経産省が公表している「2025年の崖」ですが、タイトルとしては、DXレポートでして、副題として「2025年の崖の克服」が付いています。

 我々一般人はこれを2025年に何か大それた事件が起きるのではないかと感じ、メディアもこぞって取り上げ、Googleで「IT 2025年」と検索すると、14,400,000件もヒットするような大イベントなってきた。というのが実態なのではないかと思います。

 実際、私もこの記事で「2025年問題」について書いているので、この大イベントの立役者の一員になるのですが、少しでも本質に迫れるように解説していきたいと思います。

経産省のレポートを紐解く

 経産省のDXレポートは本文57ページにも及ぶ大作で、読むのも一苦労です。そんな人のために、サマリレポートというのがありまして短時間で理解しやすい内容になっています。

経済産業省 DXレポート
経済産業省 DXレポート

 このサマリレポートでは、大きくは経営面、人材面、技術面から様々な課題と解決策をまとめていて、何もしないと大変なことが起こりますよ。というアラートが書かれています。

 経営面ではデータが活用できないことによりデジタル競争の敗者に、そしてシステム維持コストの高騰、サイバーリスクの増加が挙げられています。

 人材面では想像の通り、IT人材の不足(不足人材が拡大する)、古いプログラミング言語を知る人がいなくなる…ということが挙げられています。

 技術面では色々なイベントが書かれていてWindows7の終了や5G実用化、AI、自動運転といったイベントがプロットされておりSAPのサポート終了も登場しています。

 まず、経営面ですが、なぜ、データ活用だけが大きく取り上げられているのかに違和感を覚えます。確かにデータを活用してデータドリブンで物事を判断し、経営から現場までかじ取りを行うことに対しては重要ですし、当然かと思います。

 実際、データの持ち方や参照のしかた、DBのメンテナンス、速度改善といったデータ(DB)関連だけで相当な課題とソリューションがあるのも事実で、活用となると、統計学や業務に精通したエンジニアが必要で人材不足に直結します。確かに課題感としては共感できますが、データ活用だけで経営面が安定、成長をしていくイメージがまったく湧きません。経営トップが考える経営課題や経営戦略と、このデータ活用の関連性や優先順位はとても違和感があります。

 この手の違和感の先にはいつもプロダクトアウト型の問題提起を目にします。言葉は悪いですが、仕組みを提供してあとはユーザさん、よろしく!保守は我々でやりますので。のパターンで、新たな分析や活用シーン(活用パターン)を増やしたい場合は、別途発注(当然費用が発生)。このサイクルが始まる気がしてなりません。2025年はクリアできても2050年くらいにまた同じ「崖」が来るのが想像できます。ITベンダが自身の商売のために現場での課題をあたかも経営課題のように仕立て上げ、理解していない経営者や意思決定者に完璧なプレゼンテーションをもって仕事を獲得する事例を過去たくさん見てきました。確かにデータ活用はコストダウンや効率化といったROIを期待できるわけですが、本当に期待通り(計画通り)のROIを出せた企業はどれだけあるのか疑問です。コストダウンや効率化とは別に、マーケティングの現場ではデータの活用は当然となっているでしょう。仮説を立てる際や施策による効果を検証し、次のプランを考える。顧客のインサイトをデータから読み解き、あらたな顧客接点シーンを作り出す。こういった活動にデータ活用は必須のアイテムですし既にクラウド上(本人たちはクラウドが普通なので気にしてもいない)に構築されています。今どきのマーケターでこのくらいのデータ活用ができていない人は居ないでしょう。

 繰り返しますが、データを集積したり活用すること自体は今のビジネスにおいては当然のプロセスであり企業経営やマーケティングの基盤だとは思いますが、DXレポートにはこう書かれています。

 「データを活用しきれずDXを実現できないため、市場の変化に対応してビジネスモデルを柔軟・迅速に変更することができず→デジタル競争の敗者に」

 データを活用できないとDXが実現しない?本当でしょうか。DXを実現してデータ活用できるようにする。が正しいのではないでしょうか。

 市場の変化に対応してビジネスモデルを変更できない?データ活用ができると柔軟にビジネスモデルって変更できるんですか?と思ってしまいますし、2025年に突然、崖から落ちるようなこともないでしょう。

次のページ
経産省「2025年の崖」への見解

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この記事の著者

渡邉 信之(ワタナベ ノブユキ)

ITベンダにて主に金融系システムの開発に従事、その後プロジェクトマネージャーとして大規模開発プロジェクトに参画。2006年ゴルフダイジェスト・オンライン入社、現在はタイ事業推進室室長として活動中

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/12313 2019/08/01 06:00

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