
ビジネスユーザー向け機能の強化を図る米Dropbox。「パーソナル・オンラインストレージを提供する企業」とのイメージが強い同社だが、利用者の80%はビジネスでの利用だ。月額制サブスクリプション ビジネスモデルで成功のカギを握るのは、「顧客を逃がさない」こと。同様のサービスがひしめき合う中、Dropboxはいかにしてリテンション(既存顧客維持)率を維持しているのか。9月25日、カリフォルニア州サンフランシスコで開催した同社のユーザーカンファレンス「Work in Progress」で、同社CCO(最高顧客責任者)のヤミニ・ランガン氏に話を聞いた。
サブスクの要、顧客満足度の測定を徹底
米DropboxでCCO(最高顧客責任者)を努めるヤミニ・ランガン氏
――Dropboxでは顧客満足度をどのように測定していますか。
ランガン氏:まず、Dropboxにとって「顧客満足度」は重要な業績指標です。サブスクリプションモデルビジネスには、常に顧客満足度を確認し、製品に対して顧客ニーズを迅速に反映することが求められます。我々が顧客満足度を測定するために利用しているスコアは2つ、「CES(Customer Effort Score)」と「NPS(Net Promoter Score)」です。
CESとは「製品・サービスの利用に当たり、顧客がどれだけ自分自身で課題解決に労力を費やしたか」を図る指数です。つまり、CESが高ければ、顧客は自力で(製品/サービスを利用するための)課題を解決したことになります。
顧客は利便性を求めてDropboxを利用しています。しかし、もしも操作が複雑で頻繁にサポートセンターに電話をする必要があったとしたらどうでしょうか。Dropboxを使用したくなくなりますよね。ですから、CESスコアを継続的に測定、顧客が何に不便を感じているのかを徹底的に調査し、改善を重ねています。その結果、直近の2年間でCESは大幅に改善できました。
一方で、NPSとは「顧客が製品・サービスを友人や知人に薦めたいか」という観点から顧客ロイヤルティを数値化した指標です。NPSが有用な点は、「製品に対する批判者の視点も測定できる」こと。もちろん、アンケートを伴う調査をするので時間はかかりますが、製品のファン(熱心なプロモーター)と批判者の違いを分析し、品質向上に活かせるのです。
Dropboxでは、週間・月間・四半期ごとにNPSを測定しています。新機能に対する偽りのない評価を知るためには、継続的な測定が不可欠です。NPSも直近の2年間でスコアが大幅に向上しています。

「Work in Progress」の貴重講演に登壇する
米Dropboxの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)ドリュー W. ハウストン氏。
「さまざまなツールが登場したことで労働作業の複雑性は増加した」と力説した
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鈴木恭子(スズキキョウコ)
ITジャーナリスト。
週刊誌記者などを経て、2001年IDGジャパンに入社しWindows Server World、Computerworldを担当。2013年6月にITジャーナリストとして独立した。主な専門分野はIoTとセキュリティ。当面の目標はOWSイベントで泳ぐこと。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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