
前回紹介したように、オープンハウスでは事業に関するデータは全てクラウド上にアップロードし、そのデータを分析して事業改善に活かしています。今回は、どのように事業に関わるデータを蓄積し、分析、活用しているのか、システム構築と運用体制の両面から紹介します。
蓄積したデータを事業部門間、横串で分析する
目指したのは、事業部門間横断でデータを分析できるようなプラットフォームの構築です。事業部門間横断を目指した目的は、当社グループの事業の強みである製販一体型のビジネスモデルをより強くするためです。
居住用住宅販売事業を例にとれば、入り口(土地の仕入れ)から出口(お客さまへの引き渡し)までの流れをデータで一貫して追えることで、事業の実態をタイムリーに的確に把握できるようになります。事業部門間でデータを共有できることで早期の課題の発見、全体最適化に向けた事業改善が可能になると考えました。

一般的にインターネットで集客を行う企業のマーケティング部門の多くは、コンバージョンといえば問い合わせであったり資料請求であることがほとんどです。
最終的に財務諸表まで直結するコンバージョン(販売時期、決済時期など)まで導線として追跡できるシステムが構築されていないため、中間時点で把握可能な入力フォームへの登録や資料請求までのコンバージョンとせざるを得ないのです。
これの問題は、途中までの集客最大化を目標に広告出稿や企業のホームページの最適化がなされてしまっていることが多いため、最終的に成約へ繋がるリードを分析できず、インターネットへの広告宣伝費の効果分析に無駄が生じたコストを明らかにできない可能性が高くなることです。
最近は、マーケティングオートメーション(MA)ツールやCRM、SFAの活用で、営業以降のデータを追跡しやすくはなりましたが、まだまだ流入から成約フェーズまでO2O(Online To Offline)やCXを踏まえ、トータルで管理できている例は少ないようです。
オープンハウスの場合は、これまで紹介した通り、戸建住宅をお客さまへお引き渡しするまでに土地の仕入れ、建築、販売と大きく3つの塊に分かれ、それぞれ取り扱うデータの種類も内容も異なっています。
この一連のデータの流れを上流から下流まで一貫して横串で分析することで、成約につながるゴールデンルートを見つけられ、かつ非効率な業務連携によるボトルネックも可視化できると考えました。
その結果、現在ではサプライチェーンとデマンドチェーンのデータを両睨みで分析をすることが可能になりました。戸建住宅販売以外の事業においても同様に、上流から下流まで事業に関与する全ての流れをデータで収集できるように意識して、システム構築やアプリケーション開発をしています。実際にどのようなシステムを構築しているのかをご紹介します。
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田口 慶二(タグチ ケイジ)
株式会社オープンハウス 執行役員 最高情報責任者(CIO)大手通信会社や外資系情報セキュリティ会社にて、インターネット黎明期より国際標準化仕様策定、EC基盤開発、多業種IT戦略コンサルティングに従事。インターネット技術を活用した戦略マーケティング、新規事業開発を加速。2014年 株式会社オープンハウ...
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