
前回はDX時代で求められるデータ保護の「あるべき姿」について、企業インフラに求められる具体的な要件を踏まえて紹介しました。今回はデータ保護とクラウドの関係性、クラウドの重要な利用形態の1つであるDR、マルチクラウド、ハイブリッド環境への対応について考察します。
クラウドネイティブ時代のデータ保護

今はどのベンダーも「簡単にクラウドと連携してデータ保護が可能です」と声高に訴えます。しかし、実態はそうではありません。
「複雑な設計を施せば」「構成変更のたびにサイジングがきちんとできれば」といった前提条件があるようでは、機動力があるデータ保護ソリューションとは言えません。なぜこうした問題が起こるのでしょうか。
それは、従来のデータ保護ソリューションが、旧来のアーキテクチャの延長にあるからです。純粋にクラウドネイティブ時代のデータ保護を前提としたアーキテクチャであれば、旧来型のシステムでもクラウド連携などの新しい手法を取り入れることはそれほど難しい要求ではありません。
ここでいう従来型のデータ保護ソリューションの課題とは、新しいアプリケーションやシステムへの俊敏な対応が難しく拡張性が乏しいこと、運用保守が難しくクラウド技術の進化の恩恵を受けにくいことなどが挙げられます。
いずれも、データ保護の仕組みそのものがクラウドやアジリティーを前提とした現代的なインフラ運用を想定しないアーキテクチャを継承することに起因すると言えます。
データ保護とクラウドの関係性
クラウドネイティブ時代のデータ保護のあるべき姿について考察する前に、データ保護とクラウドの関係性について改めて整理します。現在、多くの企業がパブリッククラウドやプライベートクラウドのシステムを導入していますが、データ保護の分野においてもクラウドとの連携は避けることができません。主な利用形態は以下の2つになります。
1.クラウドストレージの利用
従来、多くの企業ではバックアップデータをテープ媒体に取得して、外部倉庫に保管する運用が行われてきましたが、この方法ではデータを復元する必要がいざ発生した場合に多大な時間を要し、リストアを実施するためのテープライブラリも保持し続けなくてはなりませんでした。
そこで、テープ媒体に取得していた長期保持が必要なデータをギガバイト単価の低いクラウドストレージを利用することによって、コストを大幅に削減しデータ復元の迅速化を実現することが可能となります。また、データの使用頻度に応じ格納先を自動で制御することによって、より柔軟なサービスの提供が可能となります(図1)。

2.クラウドコンピューティングの利用
従来、テスト・開発環境の構築にあたり、最初にオンプレミスのサーバーやストレージ等のシステムリソースの確保から始まり、構築・運用に関わる人員を別途手配する等の必要がありました。このようなフローはアジリティーを前提としたインフラ運用からは程遠く、ビジネス価値の損失につながる要因となっていました。
そこで、テスト・開発環境のためにクラウド上のコンピュートを利用することによって、必要時に必要なリソースだけ割り当てることが可能となり、構築・運用に関わる負荷も従来のオンプレミスの環境を利用する仕組みと比較し大幅に軽減することができます。
データ保護分野におけるクラウドコンピューティングの利用は、テスト・開発環境の移行だけでなく次に紹介するDRも含め様々な形態があります。このようにデータ保護の分野においては、クラウドを単に活用するだけではなくクラウドとのシームレスな統合・連携は必須と言ってよいでしょう。
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藤田 達也(フジタタツヤ)
ルーブリック・ジャパン株式会社 セールスエンジニア金融業界でのアーキテクト業務を経て、直近は外資系ITベンダーのプリセールスエンジニアとしてセキュリティからクラウドまで幅広い領域を担当。2018年1月からルーブリック・ジャパン株式会社にてプリセールスを担当し、次世代のデータ管理の普及活動に従事。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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