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経験経済の時代のAIテクノロジー Vol.2 「幻滅期」を越えた人工知能(AI)の今後の可能性とは

edited by Operation Online   2020/11/17 08:00

 本連載では、Appier社のチーフAIサイエンティストであるミン・スン氏が「経験経済」という視点でテクノロジーとビジネスを解説する。第二回は「幻滅期を超えたAI」が今後どのように進展するのか。コロナ後の経済をどう変えていくのかについて語る。

「“過度な期待“のピーク期」を越えたAI

 市場リサーチ企業ガートナー社が定期的に発表しているテクノロジーハイプサイクルにおいてAIは、「過度な期待のピーク期」を経たと定義されました。人工知能(AI)技術の理解と進歩は、他の革新的技術と同様、過去半世紀の間にいくつかのフェーズを経てきました。まず、AI開発の変遷と、AIがどのようなフェーズにあるのかを考えてみます。

 2012年は、様々な分野でAIのブレークスルーが相次ぎ、第3次AIブームと呼ばれるような、AI開発にとって画期的な年でした。現在は研究領域においていくつもの小さな発見があり、既存の技術をさらに拡張するようなアップデートが続いています。

 AIは、コンピュータビジョン、自動運転、自然言語処理、深層学習など、多くの専門技術の広義の用語です。これらはいずれも様々な段階で進歩しており、ガートナー社が定義する「ハイプサイクル」(テクノロジーの成熟度と採用状況、およびテクノロジーが実際のビジネス課題の解決や新たな機会の開拓にどの程度関連する可能性があるかを図示したもの)では、「過度な期待のピーク期」を経ています。

 人々は当初、新しい技術が生み出されるとその可能性に過度に期待しますが、技術の具体的な応用が見られないと興味を失い、ガートナーではそれを「幻滅期」と読んでいます。

 AIの研究開発の観点から考えると、オープンソースのAIや機械学習ツールはたくさんあり、研究や実験を始めようと思えば、誰でも簡単にプログラムへアクセスできます。また、AIフレームワークに関しても、作業や構築に利用できるものが豊富にあります。

 しかし、AIの最先端のアプリケーションを開発し、本番環境に押し出して大規模に導入し、継続的なサービスを保証するという点では、特定の専門知識と経験が必要になります。多くの組織では、AIシステムの開発、実装、保守を自分たちで行うことはできません。これは大変な作業であり、各企業のニーズは個別なものであるため、技術と人材の両方を揃える必要があります。今のところ、AIはサービスであり、その性能を一貫して向上させるためには、継続的に世話をし、訓練する必要があります。私たちがAIシステムを「出荷して忘れてしまう」のはもう少し先の話です。

 つまり、ビジネスなどのAIの実装では、いくつか成功事例が出ていますが、現実世界でのAIの普及には企業や研究機関、政府、市民が試行錯誤しながら技術を採用していくため、当初の想定よりも時間がかかるでしょう。

ビジネスリーダーはAIの導入を積極的に検討すべき

 一方、ビジネスリーダーの皆様は、AI技術が組織の将来性を保証し、競争力を維持するための方法であると楽観的に考え、導入を積極的に検討すべきです。

 AI技術に対する幻滅や失望は、ビジネスリーダーが、AIを効果的に導入するために必要な時間とリソースを過小評価した場合に起こります。ビジネスリーダーがAIをスムーズに導入するためには、AIができることとできないことについて最新情報をもとに評価することが重要です。

 多くの企業では、自社でAIシステムを構築して所有するには多額のリソースが必要となるため、組織に変わってこのような複雑な問題を処理できる高品質のAIパートナーと連携することがAI導入の近道です。マーケティング、財務、物流など、ビジネスの1つの機能から初めて、導入と結果をテストするのも良い方法です。ビジネスリーダーは、同様のアプリケーションの経験があり、解決すべき問題を理解し、成功のビジョンを所有しているソリューション・プロバイダーを活用し、いち早く自社のビジネス目標を実現することが重要となります。また、AIソリューションを実際のシナリオに適応することに成功した経験を持つプロバイダーを探しながら、同時に、適切な経験を持つ社内人材も見つける必要があります。

 最近の新型コロナウイルスによる世界的な状況は、AIをどのように役立てるのかを考えることを促しています。私は、企業がより効果的にデジタルに移行し、より効果的にデータを収集するための革新的なソリューションを発見することによって、AIがあらゆる業種、規模のビジネスを変革することは間違いなく、AIの必要性は今後も高まっていくと楽観的に考えています。

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著者プロフィール

  • ミン・スン(ミン・スン)

    Appier Japan株式会社 チーフAIサイエンティスト 2005年からGoogle Brainの共同設立者の一人であるAndrew Ng(アンドリュー・エン)氏、元Google CloudのチーフサイエンティストであるFei-fei Li(フェイフェイ・リー)氏などのプロジェクトに携わり、AAAI(アメリカ人工知能学会)をはじめ世界トップの人工知能学会で研究論文を発表。 2014年に国立清華大学の准教授に就任。2015年から2017年には、CVGIP(Computer Vision Graphics and Image Processing)Best Paper Awardsを3年連続で受賞。 専門分野は、コンピュータビジョン、自然言語処理、深層学習、強化学習。 2018年には「研究者には肩書きよりもデータが必要」と感じ、AIテクノロジー企業AppierにチーフAIサイエンティストとして参画。新製品の開発、既存製品の機能改善のほか、記述的な課題解決を行う。

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連載:経験経済時代のAIテクノロジー ミン・スン
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