Deep Learningも活用、コロナ禍でも精度の高い需要予測を実現
フランスに本社を置く世界的なスーパーマーケットチェーンのカルフールでは、SASを用いサプライチェーン全体の最適化に取り組んでいる。
カルフールではEC対応などオムニチャネル化を強化しており、Googleなどとも連携しスマートスピーカーを使った音声での注文なども取り入れている。物流面でも30分で商品を届けるサービスも展開しており、実店舗以外のチャネルのビジネスがコロナ禍で加速している。カルフールでは、これまでも店舗単体での需要予測や在庫の最適化に取り組んできたが、さらにこれにECも加えたオムニチャネル全体での最適化に取り組んでいる。
「カルフールではマルチチャネルのどこから購入するかを、顧客ごとに最適化し予測することにチャレンジしています。そのためにマルチチャネルの需要予測に取り組んでおり、それをもとに販売計画を立てて店舗発注、在庫計画を最適化しています。店舗だけ、ECだけではなくチャネル全体の予測を実施しています」と井上氏。
そのためにDeep Learningの技術を用い、マルチチャネルの予測精度を上げようとしている。とはいえDeep Learningを使うと、精度は高くてもなぜそうなったかがブラックボックス化されるため「従来からの予測手法も併せ適宜使い分けています」とのことだ。
今回のコロナ禍において予測精度が悪化し、そのままではビジネスに適用できなくなっていたが、外部データの活用と、SASの技術を使い試行錯誤をしたことで「現状では予測がビジネスに適用できるレベルまで、精度改善ができています」と井上氏は言う。
世界最大の食品・飲料会社であるネスレでも、需要予測精度の向上のためにSASを活用している。同社ではこれまで、商品単位で需要予測を行ってきた。ネスレでは商品が増えており、自社製品の中でカニバリゼーションが発生していた。そのため商品単体の需要予測だけでは予測が難しくなり、新たにブランドやカテゴリー単位での予測に取り組んでいる。「これによりカニバリゼーションの影響を反映することで、需要予測の精度を上げています」と井上氏。
そしてネスレでの工夫の1つが、得られるデータだけで予測するのではなく、現場の人の「意思」を入れて予測していることだ。現場担当者は得られた傾向値などを見て、経験をもとに試行錯誤し予測を修正してきた。その現場担当者の予測のデータも学習データとして取り込み、予測精度を上げているのだ。
これにより「意思」を含んだ結果を計画に自動で反映できるようになり、現場担当者が頭を悩ませていた意思を反映する作業から解放された。現場業務負荷は大きく削減されており、これは働き方改革にもつながっている。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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