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コロナ禍でも精度の高い需要予測を実現したカルフール SASが描くサプライチェーン全体の最適化

edited by DB Online   2021/01/13 10:00

 独立系のアナリティクスソリューションベンダーとして、長く市場をリードするSAS Institute Japan。同社は統計解析やAIなどの高度なアナリティクス技術を提供するのはもちろん、様々な顧客のデータ活用の課題を長年にわたり解決してきた経験とノウハウを用い、業界特有の課題を解決できるソリューションとして提供できるのが強みとなっている。

SAS Platformでサプライチェーン全体を最適化する

 様々な業界の中、商品を消費者に届ける際の要となる物流業界に対しSASはどのように取り組んでいるのか。「物流の中核となる運ぶ領域はもちろん、製品の計画から販売に至るサプライチェーン全体の最適化を支援しています」と言うのは、SAS Institute Japanの井上 義成氏だ。

ソリューション統括本部 コンシューマーインダストリーソリューショングループ シニアビジネスソリューションマネージャー 井上義成氏
SAS Institute Japan ソリューション統括本部
コンシューマーインダストリーソリューショングループ
シニアビジネスソリューションマネージャー 井上義成氏

 一般にデータを活用し業務を変革するには、まずは「記述的アナリティクス(Descriptive Analytics)」で過去に何が起きたかを見て、現状を明らかにする。次のステップは、「診断的アナリティクス(Diagnostic Analytics)」でなぜ起きたかを診断し、要因を明らかにする。3つ目のステップでは、「予測的アナリティクス(Predictive Analytics)」で次に今後何が起きるかを明らかにする。そして4つ目のステップ「最適化・指示的アナリティクス(Optimization / Prescriptive Analytics)」で、 これから起こることをどう最適化するか、そして最適化の行動を促すことにつなげる。

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 SASでは4つのステップに対応する高度な分析技術を提供するだけでなく、アナリティクスによる発見とモデル開発からデプロイと実行に至るアナリティクスのライフサイクル、さらアナリティクスの知見をビジネスに適用しビジネス価値を発揮し、結果のフィードバックを取り込んで再びアナリティクスを行う部分までサポートする。これら全体のサイクルが回ることで初めて、ビジネス価値を継続的に得られる。この一連のサイクルを、高速に回すための機能をSAS Platformでは網羅している。

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 「アナリティクスライフサイクル全体を実現する各種製品、機能をSASでは提供しています。それに加え業界の現場業務に応じた分析のテンプレートや分析モデルも提供しています。それらには長年のコンサルティングのノウハウも入っています」(井上氏)

 このアナリティクスライフサイクルの最適化を物流に適用したいと考えた場合に、物流部分を最適化するだけではビジネス価値を得られない。物流を最適化するには、生産計画も重要となる。生産計画の精度を上げるには、商品の最適化のためのパッケージングやラインナップ、プライシングの最適化も必要だ。さらにこれにはマーケティング施策も影響する。

 また直接的な物流の最適化でも、ものを運ぶルートの最適化もあれば、トラックの積載方法、倉庫配置や運用の最適化も必要になる。商品が店頭に並べば、店舗運用を最適化する必要が出てくる。「どこか1つにフォーカスするものではなく、データを用いてサプライチェーン全体の連動による最適化が必要です。それを、SASではトータルでサポートしています」と井上氏は言う。

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精度の高い需要予測とアナリティクス人材育成支援も実施

 サプライチェーン全体の最適化で重要なのが、需要予測の精度を上げることだ。そのために米国の流通業大手などでは自社にデータサイエンティストを抱え、予測分析モデルを構築し活用する例が増えている。

 とはいえ、ある領域で精度の高いモデルができても、それをなかなか横展開できず、全社規模で活用するに至らないケースも多い。そこで「全社的に予測モデルを活用できるようにするため、ガバナンスを効かせアナリティクスのライフサイクルを回すプラットフォームとしてSASを選んでいます」と井上氏。

 一方欧州などでは、データサイエンティストを自社でなかなか確保できないため、データサイエンティストが行う分析業務の部分を、サービスの形でSASがサポートする例もあるとのことだ。

 日本の大手飲料メーカーでは、商品のライフサイクルが短くなる中、新商品の需要予測でSASを活用している。新商品は過去の販売実績データがないため、それを使い今後の売れ行きを予測できない。

 SASならば、商品の特徴や販促の情報から類似性の高い商品を見つけ、その商品の販売実績などを用い、新商品の需要予測が可能となる。「SASを利用し新商品の需要予測精度が10%以上向上しています」と井上氏は言う。

 コンビニエンスストアでは、おにぎりやお弁当などのデイリーメーカーが、発注に対しすべてを納期中に完全納品する契約を結んでいることが多い。注文に応えられないことを避けるため、予測よりも多めに製造し備えることになる。

 これがフードロスにつながり、さらに多めに作っていたつもりでも足りない際には夜間もフル稼働で注文対応し現場が疲弊することにもなる。予測の難しい新製品の商品をどれくらい作れば良いのかを、価格やキャンペーンの状況、過去の商品販売のデータなどを用いSASを使って高い精度で予測しているのだ。

 国内の大手アパレル企業でも、サプライチェーン全体の最適化に取り組んでいる。季節の影響を大きく受けるアパレル商品では、商品ライフサイクルが極めて短い。そのため限られた期間で販売ロスを最小化し、その上で商品を売り切る必要がある。これには価格の最適化が重要であり、それをSASで実現している。

 「SASのアナリティクスの特長は、個別業務に対応するだけでなく、サプライチェーン全体の最適化を可能にする分析プラットフォームになっていることです。そして高度な需要予測のモデルとともに、ノウハウが豊富なコンサルティングのサービスも併せて提供できます。また、アナリティクスを企業の中でリードしていくための人材育成もサポートしています。これらを柔軟に組み合わせて提供できるのが、SASの強みです」(井上氏)。実際、ブリジストンでは100名体制のデータサイエンス組織の構築を目指しており、そのチーム立ち上げをSASがサポートしている。

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Deep Learningも活用、コロナ禍でも精度の高い需要予測を実現

 フランスに本社を置く世界的なスーパーマーケットチェーンのカルフールでは、SASを用いサプライチェーン全体の最適化に取り組んでいる。

 カルフールではEC対応などオムニチャネル化を強化しており、Googleなどとも連携しスマートスピーカーを使った音声での注文なども取り入れている。物流面でも30分で商品を届けるサービスも展開しており、実店舗以外のチャネルのビジネスがコロナ禍で加速している。カルフールでは、これまでも店舗単体での需要予測や在庫の最適化に取り組んできたが、さらにこれにECも加えたオムニチャネル全体での最適化に取り組んでいる。

 「カルフールではマルチチャネルのどこから購入するかを、顧客ごとに最適化し予測することにチャレンジしています。そのためにマルチチャネルの需要予測に取り組んでおり、それをもとに販売計画を立てて店舗発注、在庫計画を最適化しています。店舗だけ、ECだけではなくチャネル全体の予測を実施しています」と井上氏。

 そのためにDeep Learningの技術を用い、マルチチャネルの予測精度を上げようとしている。とはいえDeep Learningを使うと、精度は高くてもなぜそうなったかがブラックボックス化されるため「従来からの予測手法も併せ適宜使い分けています」とのことだ。

 今回のコロナ禍において予測精度が悪化し、そのままではビジネスに適用できなくなっていたが、外部データの活用と、SASの技術を使い試行錯誤をしたことで「現状では予測がビジネスに適用できるレベルまで、精度改善ができています」と井上氏は言う。

 世界最大の食品・飲料会社であるネスレでも、需要予測精度の向上のためにSASを活用している。同社ではこれまで、商品単位で需要予測を行ってきた。ネスレでは商品が増えており、自社製品の中でカニバリゼーションが発生していた。そのため商品単体の需要予測だけでは予測が難しくなり、新たにブランドやカテゴリー単位での予測に取り組んでいる。「これによりカニバリゼーションの影響を反映することで、需要予測の精度を上げています」と井上氏。

 そしてネスレでの工夫の1つが、得られるデータだけで予測するのではなく、現場の人の「意思」を入れて予測していることだ。現場担当者は得られた傾向値などを見て、経験をもとに試行錯誤し予測を修正してきた。その現場担当者の予測のデータも学習データとして取り込み、予測精度を上げているのだ。

 これにより「意思」を含んだ結果を計画に自動で反映できるようになり、現場担当者が頭を悩ませていた意思を反映する作業から解放された。現場業務負荷は大きく削減されており、これは働き方改革にもつながっている。

需要予測の精度を高め人材育成も併せてサポート

 SASではサプライチェーンの最適化を実現する際に「需要予測が改めて重要な要素だと考えています」と井上氏は言う。需要予測の精度を向上するためには、新商品への対応、売価/値引きの影響、カニバリの影響、季節/天候の影響、周辺イベントの影響、欠品の影響という6つの要素すべてを考える必要がある。

 これらすべてを取り込んで予測するノウハウが、SASにはあると井上氏は自信を見せる。これらの要素を取り込めないと、今回の新型コロナウイルスのような経験のない環境変化を踏まえ、需要予測することは難しい。「裏を返せばこれら6つの影響をしっかりと捉えて分析できれば、コロナ禍においても精度の高い需要予測につながります」と言う。

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 高い精度で需要予測を行うには、1つのモデルを作って終わりではない。複数のモデルを作り、モデルを試しながら精度を上げていく。これはまさにAnalyticsOpsを実践することであり、アナリティクスのライフサイクルをスムースかつ素早く回せなければならない。

 そのために必要な機能をSASはすべて揃えており、その上でデータサイエンティストなどが使い慣れたツールや技術があれば、それらをAPIで連携してライフサイクルに取り込めるのがSASのプラットフォームの特長でもある。

 需要予測の精度を高め、予測を企業内で活用してDXにつなげる人材育成まで含めてサポートできる。これら両軸のアプローチで、サプライチェーン全体の最適化をSASではサポートしているのだ。

著者プロフィール

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター かつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリストとして、クラウド、データベース、ビッグデータ活用などをキーワードに、エンタープライズIT関連の取材、執筆を行っている。

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