プリンター、プロジェクター、液晶デバイス、半導体……。様々な事業部門の情報システムを一手に引き受ける情報化推進部は、かつてユーザーの個別的なリクエストに応えることで、システムを場当たり的に変更することを余儀なくされていた。これを解決すべく今、新しい枠組みで全テーマの精査が行われるようになった。
登場人物紹介(敬称略)
語り手:佐藤 彰
|
セイコーエプソン株式会社 生産力強化戦略本部 情報化推進部 部長。1983年セイコーエプソン(当時は諏訪精工舎)に入社。生産技術開発部門に所属し、社内向け生産設備開発に従事。1998年に情報システム部門へ異動。全社統一のシステム連携基盤を構築。現在は、全社向けアプリ開発、アプリ構築基盤/データ活用基盤の標準化・統合化を担当。2008年8月より現職。 |
聞き手:山本 啓二
|
ウルシステムズ株式会社 コンサルティング第2事業部 副事業部長。独立系ソフトベンダーを経て、2001年入社、2009年より現職。アーキテクチャおよび開発プロセスにまつわるコンサルティングに多く携わる。著書に、『そこが知りたい 最新Webアプリ開発のお作法』(共著・翔泳社)、『プログラマの本懐』(日経BP社)。 |
事業部のサポートから積極的な組織への転換
山本
情報化推進部の現在の課題とはどのようなものですか?
佐藤
セイコーエプソンはプリンターやプロジェクター、あるいは半導体関連事業と、様々な事業領域から成り立っている企業です。情報化推進部もそれぞれの事業に沿った形で情報システムの開発から運用までを行っています。このような状況では、ともすれば各事業に閉じた形で各々独自のオペレーションが行われやすいという問題があります。そのため、事業部ごとではなく、機能別に横串を刺す組織横断的な活動をしていこうとしています。
山本
以前、組織の名称が情報化推進サポート部から情報化推進部に変更されているようですが、「サポート」をはずしたことにどんな理由があるのでしょうか?
佐藤
「情報化推進サポート部」という組織の名称は2003年につけられたものです。当時の情報化担当役員が、情報化は目的ではなくあくまでも事業を支える手段であるという思いを明確化し組織員への意識付けをきちんと行いたいという思いから組織の名称にサポートという言葉を加えました。以降、私どもはその名前通りに、情報化を道具として業務改革を実施することを念頭に活動を実施してきました。一方サポートという言葉は支援という意味合いから主体性に欠ける一面もあります。そこで、次のステップとして我々自身や、我々が開発したシステムをもっと前面に出し、情報化を手段としてビジネスをリードする、より主体的な活動が行える組織への転換が必要だと考えました。それが今回の名称変更の意図です。
セイコーエプソン株式会社 生産力強化戦略本部 情報化推進部 部長 佐藤彰氏
よりビジネスに近いところで真価を発揮
佐藤
もちろん、我々情報化推進部が取り組むべきはあくまで社内向けのシステム構築であり、外販としてシステムを開発・販売するということはありません。しかし、たとえばエプソン本体や子会社のエプソン販売でもつ外部向けWebサイトなどでも、私たちの技術を役立て、よりビジネスに近いところで真価を発揮していこうと考えています。
山本
なるほど。となると、一般的に言われているような、保守費用の増大が新規投資を妨げるという問題は御社には無縁ということでしょうか?
佐藤
かつてはそのような問題もありました。8:2くらいの割合になるほど保守費用が増大し新規投資が圧迫されていることがありましたが、今日では5:5までになってきています。
ウルシステムズ株式会社 シニアマネジャー 山本啓二氏