クラウドネイティブなアプリケーションスタックの複雑性を解消
DXで企業が成功するには、たとえばマルチクラウド環境で、データを活用した魅力的なデジタルサービス、顧客体験を提供する。この場合、アプリケーションのモダナイズは極めて重要だ。従来のウォーターフォール型のアプリケーション開発では、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)に則った運用が行われ、開発して運用に渡すまでにかなり長い時間がかかっていた。これではビジネス変化への迅速で柔軟な対応は難しい。
DX時代の今は、アジャイル開発、DevOpsによる運用が適当だとされている。そしてアプリケーションのライフサイクル全体に運用チームを巻き込み、短いサイクルで継続的にアプリケーションを改善する。
別の側面として、従来のモノリシックなアーキテクチャのアプリケーションは、仮想基盤などを活用することで高い処理性能などは確保しやすいが、改変などには手間がかかってしまう。そのためDXに対応するモダンアプリケーションでは、クラウドネイティブな技術でマイクロサービスをコンテナでまとめて展開すべきだ。
それぞれのマイクロサービスは独立して動くため、更新や改変の際にも他に影響を与えずシンプルに実現できる。「2025年までに5億個のクラウドアプリケーションが展開されるとの予測もあり、アプリケーションのモダナイゼーションの重要性はかなり高いでしょう」と酒谷氏は言う。
デル・テクノロジーズでは、アプリケーションのモダナイゼーションに、「クラウドネイティブの複雑さの解消」「自動化を活用したイノベーションの迅速化」「仮想化インフラ基盤など既存の設備投資の有効活用」「マルチクラウド環境での一貫した設計/運用の確保」という4つの要素で取り組んでいる。
DXのためのクラウドネイティブなアプリケーション運用のスタックは、かなり複雑だ。手組みでこれを構成しようとすれば、ハードウェアインフラの上に様々なオープンソースソフトウェアなどを組み合わせなければならない。PoCなど実験的に利用するなら良いが、「本番用のシンプルさはありません」と酒谷氏。
そこで複雑さを解消するため、デル・テクノロジーズでは「VMware Tanzu on Dell EMC VxRail」(以下、Tanzu on VxRail)を提供している。VMware Cloud FoundationやVMware Tanzu Kubernetes Gridと、それらを動かすインフラとして「Dell EMC VxRail」をあらかじめ組み合わせたもので、それをアプライアンス型としてクラウドネイティブの複雑さを解消し短期間で導入できるようにしている。
また、DX推進課題でもあるセキュリティ対策のためにも、モダナイズしたアプリケーションを展開し運用するインフラは最新状態にしておく必要がある。とはいえ、オープンソースソフトウェアなどを組み合わせて手組みでインフラを構築している場合は、すべての環境の整合性を取りながら最新の状態を維持するためにかなりのノウハウと手間が必要だ。
これに対しTanzu Kubernetes Gridを使えば、従来VMwareの管理者が利用していたVMware vCenterやVMware Cloud Foundationなどのツールセットで、KubernetesやVxRailの領域をシンプルに更新できる。これにより運用が自動化され、運用チームのパッチ適用などの運用に関わる時間を92%も削減できるとの指標も出ていると酒谷氏は言う。
また従来のITシステムでは、新しいものが出てくると、新たなプラットフォームを用意しその環境に移行し、その上で新たに運用手法も確立する必要があった。一方、Tanzu on VxRailでは、これまで利用してきたVMware vSphereの環境をそのまま稼働できるだけでなく、その上にKubernetesなどの新しいコンテナプラットフォームを動かすことも可能だ。
「vSphere環境にKubernetesをAdd-onして利用することも可能なため、既存の設備投資を有効活用でき、ソフトウェアの本番稼働時間が82%増えるとの期待値結果もあります」と酒谷氏。既存の技術的なスキルを有効活用できる点は、大きなメリットだとも言う。
このTanzu on VxRailは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、エッジクラウドなどで併用して利用でき、運用も環境に縛られることなく自由度は高い。結果的に、仮想化したワークロード、コンテナ化したアプリケーションも一貫した管理が実現できるのだ。