出遅れた日本企業が意識すべきセキュリティ対策
デル・テクノロジーズでは、グローバル4,000社を対象に「Digital transformation Index 2020」という調査を実施、企業がどのようにDXに取り組んでいるかを調べている。2016年の調査では、米国においてもデジタルリーダーのような企業は少なく、デジタル化を推進していると回答した企業も13%しかなかった。それが2018年、2020年と進むにつれて、デジタルでビジネスを強化している企業がかなり増えている。
中国も状況は同じで、2020年にはデジタル化を進める企業がどんどん増えている。一方日本は、2016年に少ない状況は同様だが、その後は米国や中国のようには増えていない。そして「2020年になり、遅ればせながらエンジンがかかった状況です。日本企業の慎重な姿勢が現れています」と言うのは、デル・テクノロジーズの酒谷英希氏だ。
とはいえ先行した米国、中国企業の多くが、必ずしもデジタル化で成功しているわけではない。DXを進める企業は新たな課題を抱えており、特にサイバーセキュリティへの対応がDXの阻害要因になっている。
現状、日本企業はDXの阻害要因としてリソース不足やスキル、ノウハウ不足を挙げており、サイバーセキュリティ対策は二の次だ。今後は日本でもサイバーセキュリティへの対応がDXを進める上で大きな課題となるだろう。出遅れた日本企業は、あらかじめサイバーセキュリティ対策を意識してDXに取り組むべきだと酒谷氏は指摘する。
クラウドネイティブなアプリケーションスタックの複雑性を解消
DXで企業が成功するには、たとえばマルチクラウド環境で、データを活用した魅力的なデジタルサービス、顧客体験を提供する。この場合、アプリケーションのモダナイズは極めて重要だ。従来のウォーターフォール型のアプリケーション開発では、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)に則った運用が行われ、開発して運用に渡すまでにかなり長い時間がかかっていた。これではビジネス変化への迅速で柔軟な対応は難しい。
DX時代の今は、アジャイル開発、DevOpsによる運用が適当だとされている。そしてアプリケーションのライフサイクル全体に運用チームを巻き込み、短いサイクルで継続的にアプリケーションを改善する。
別の側面として、従来のモノリシックなアーキテクチャのアプリケーションは、仮想基盤などを活用することで高い処理性能などは確保しやすいが、改変などには手間がかかってしまう。そのためDXに対応するモダンアプリケーションでは、クラウドネイティブな技術でマイクロサービスをコンテナでまとめて展開すべきだ。
それぞれのマイクロサービスは独立して動くため、更新や改変の際にも他に影響を与えずシンプルに実現できる。「2025年までに5億個のクラウドアプリケーションが展開されるとの予測もあり、アプリケーションのモダナイゼーションの重要性はかなり高いでしょう」と酒谷氏は言う。
デル・テクノロジーズでは、アプリケーションのモダナイゼーションに、「クラウドネイティブの複雑さの解消」「自動化を活用したイノベーションの迅速化」「仮想化インフラ基盤など既存の設備投資の有効活用」「マルチクラウド環境での一貫した設計/運用の確保」という4つの要素で取り組んでいる。
DXのためのクラウドネイティブなアプリケーション運用のスタックは、かなり複雑だ。手組みでこれを構成しようとすれば、ハードウェアインフラの上に様々なオープンソースソフトウェアなどを組み合わせなければならない。PoCなど実験的に利用するなら良いが、「本番用のシンプルさはありません」と酒谷氏。
そこで複雑さを解消するため、デル・テクノロジーズでは「VMware Tanzu on Dell EMC VxRail」(以下、Tanzu on VxRail)を提供している。VMware Cloud FoundationやVMware Tanzu Kubernetes Gridと、それらを動かすインフラとして「Dell EMC VxRail」をあらかじめ組み合わせたもので、それをアプライアンス型としてクラウドネイティブの複雑さを解消し短期間で導入できるようにしている。
また、DX推進課題でもあるセキュリティ対策のためにも、モダナイズしたアプリケーションを展開し運用するインフラは最新状態にしておく必要がある。とはいえ、オープンソースソフトウェアなどを組み合わせて手組みでインフラを構築している場合は、すべての環境の整合性を取りながら最新の状態を維持するためにかなりのノウハウと手間が必要だ。
これに対しTanzu Kubernetes Gridを使えば、従来VMwareの管理者が利用していたVMware vCenterやVMware Cloud Foundationなどのツールセットで、KubernetesやVxRailの領域をシンプルに更新できる。これにより運用が自動化され、運用チームのパッチ適用などの運用に関わる時間を92%も削減できるとの指標も出ていると酒谷氏は言う。
また従来のITシステムでは、新しいものが出てくると、新たなプラットフォームを用意しその環境に移行し、その上で新たに運用手法も確立する必要があった。一方、Tanzu on VxRailでは、これまで利用してきたVMware vSphereの環境をそのまま稼働できるだけでなく、その上にKubernetesなどの新しいコンテナプラットフォームを動かすことも可能だ。
「vSphere環境にKubernetesをAdd-onして利用することも可能なため、既存の設備投資を有効活用でき、ソフトウェアの本番稼働時間が82%増えるとの期待値結果もあります」と酒谷氏。既存の技術的なスキルを有効活用できる点は、大きなメリットだとも言う。
このTanzu on VxRailは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、エッジクラウドなどで併用して利用でき、運用も環境に縛られることなく自由度は高い。結果的に、仮想化したワークロード、コンテナ化したアプリケーションも一貫した管理が実現できるのだ。
手組みにはない“セキュア”で安定したDXプラットフォーム
Tanzu on VxRailでは、VMware TanzuやVMware Cloud Foundationが持っている本質的なセキュリティ、クラウド管理、ライフサイクル自動化などを活用できる。これは従来のサーバー、ストレージの組み合わせ、VMware Cloud on AWSなど各パブリッククラウド上のVMware Cloudの環境、VMware Cloudパートナーが提供するインフラなどとも連携して、マルチクラウドで利用可能だ。
また、デル・テクノロジーズはコンサルティングサービスも提供しており、従来のIT最適化はもちろん、DXに有効となるデータマネジメントサービスに加えて、運用に関わるバックアップによるデータ保護、アプリケーションのコンテナ化を支援するソリューションも用意。
顧客のアプリケーションの状態を把握、分析して、基幹システムや周辺システムのコンテナ化の判断、具体的なコンテナへの移行のためのコンサルティングサービスも提供する。これらコンサルティングサービスの中で、顧客に最適なインフラの提案をする際に、適宜Tanzu on VxRailを活用することになる。
たとえば、アジャイル型の開発支援、開発基盤構築を中心に顧客のDX戦略を支援している株式会社デジタルフォルンでは、クラウド受託開発やサービス開発で利用するプラットフォームに、Tanzu on VxRailを採用した事例がある。
DXのプラットフォームとしてパブリッククラウドを利用するケースもあるが、様々な理由でオンプレミスにコンテナプラットフォームなどを導入するケースも多い。それに対応するのがTanzu on VxRailであり、デジタルフォルンではオンプレミスでクラウドのような環境を実現。24時間動き続ける可用性と本番環境として利用できるセキュリティ性能を持つ環境を活用している。
これによりハイブリッドクラウド、マルチクラウドでDXに取り組むためのノウハウを顧客に提供でき、本番環境を安心して運用できるセキュリティも担保できるようになった。さらに、手組みで構築したものと比べても、アプリケーションリリースサイクルの短縮化などのメリットもあり、それらが同社のエンドユーザーから評価され同社のビジネス拡大につながっている。
「DXを進めていく中で、どのように進めれば良いのか。特にアプリケーションのモダナイズやデータの活用をどのように進めれば良いかに悩んでいる場合は、是非デル・テクノロジーズに相談して欲しい」と酒谷氏。そういった企業が既存でvSphereを利用している場合には、特に有効なソリューションを提供できると自信を見せる。
さらに手組みの仕組みでなんとかDXに取り組もうとして、本番にどう展開するかと課題を抱えているケースにも応えることができる。「手組みだとセキュリティ面などで限界を迎える場合がありますが、Tanzu on VxRailなら、セキュアかつ安定したDXプラットフォームを提供できます」と酒谷氏は言うのだった。