アイ・ティ・アール(以下、ITR)は、国内のERPの提供形態別とパッケージ製品の運用形態別での市場規模推移および予測を発表した。
ERP市場の2020年度の売上金額は1229億円、前年度比6.9%増と近年ではやや低い伸びとなった。新型コロナウイルス感染拡大による営業活動の低下や案件の先延ばしなどが背景にあるとしている。2021年度は、ベンダー全般的に復調傾向にあり、同14.6%増の予想に。老朽化したERPシステムのリニューアル案件に加え、2022年4月施行の電子帳簿保存法改正への対応や昨今のDXブームから新規案件も拡大傾向にあることから、同市場のCAGR(2020~2025年度)は11.6%を予測しているという。
また、同市場をパッケージとSaaSの提供形態別で比較すると、2020年度のパッケージ市場は前年度比2.4%減のマイナス成長になったのに対し、SaaS市場は同27.2%増と高い伸びを示している。主要ベンダーが新規案件ではSaaSの販売を推進し、既存のパッケージ導入ユーザーに対してもSaaSへの移行を徐々に進めていることから、パッケージ市場のCAGR(2020~2025年度)が0.2%と低調であるのに対して、SaaS市場は同24.1%の高い成長率を予測しているという。
さらに、パッケージ市場をユーザー企業の運用形態別に見ると、2019年度から2021年度にかけてオンプレミスは市場規模が縮小。IaaSは20%前後の高い伸びを維持しており、2022年度以降もこの傾向が続くと予想されるとしている。近年は基幹システムにIaaSを選択する企業が増加傾向にあり、ERPパッケージの稼働環境としてもIaaSを選択する企業が増加しているという。
同プリンシパル・アナリストである浅利浩一氏は、「コロナ禍により、働く環境が多様化したことや、紙を主体とした旧来のビジネスを変革する必要性に迫られた企業が依然として多いことから、企業は基幹システムの刷新においてクラウドERPの優先度を高めています。また、財務情報だけでなく、非財務情報やSDGsなどの指標が重視されるようになり、データドリブンの企業価値経営を強化する傾向が高まってきていることも、クラウドERPの市場拡大の追い風となっています。ビジネスオペレーションの明細データや、連結および事業セグメントベース、さらにはプロジェクトベースなどで、戦略や施策の過程をデータドリブンで管理できるシステム、およびプロセスの強化に取り組む企業が今後さらに増えていくでしょう」とコメントしている。
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